久しぶりに行動の自由が戻ってきた2023年。プロ写真家の皆さんに「2023年、買ってよかったモノ」を一斉調査しました。2024年の明るく楽しい写真ライフの参考になれば幸いです。さあ、どんなアイテムが出てくるかな?
菅原貴徳さんの2023ベストバイ「M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO」
超望遠で野鳥を追いかけることが多いので、肉眼よりも広く世界が写る感覚は新鮮
今年はあまり買い物をしていなかったのだが、ほぼ唯一の買い足した撮影機材がOM SYSTEMの「M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO」。主な被写体が野鳥なので、超望遠以外はあまり熱心に追えていなかったのだが、このレンズは2021年の発売当初から気になっていて、過去の取材でも何度か借りて使っていた。
その度に、画質の良さやズームレンジの使いやすさを実感していたものの、「M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6」(コレもよく写る) や旧型の「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」を持っていたこともあって、毎度決め手を欠いていた。ただ、やはり9-18mmにはない防塵防滴性や、最新のコーティングによる逆光性能の良さは頭に残っていて、キャッシュバックキャンペーンが実施されていた夏に思い切って買ってしまった、というわけ。
野鳥以外の被写体も安定の画質で捉える優等生レンズ
さて、35mm判換算で16〜50mm相当になる本レンズだが、広角からのズームであるほかには際立った特徴がない。しかし、それは悪い意味ではなく、どのズーム域でもクセがなく、非常によい解像度で写してくれるレンズということで、信頼感は厚い。M.ZUIKOレンズの広角には「M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO」という選択肢もあったが、筆者の用途だと、広角域での歪みが少ない8-25mmの方が使いやすい。沈胴方式には賛否両論あるようだが、コンパクトさが売りのシステムだけに、可能ならどんどんやってほしいと思う。
導入当初は風景の中にいる鳥を一緒に写すことを想定していたが、いざ持ち出してみると、フィールドを歩く中で目に入る植物や昆虫、鳥の痕跡などを撮影することが多かった。「OM-1」との組み合わせも軽量なので、バリアングル液晶を活用して葉っぱの裏側に機材を突っ込んでみたり、最短撮影距離の短さを生かしてカエルににじり寄ってみたり、と撮影そのものを楽しんでいる。また、年を追うごとに鳥だけでなくその周辺の環境にもしっかりと目を向けたい気持ちが強くなっているのもあって、風景の撮影にも活躍している。
普段、望遠レンズを使って視界の一部を切り出す、ということが多いだけに、肉眼よりも広く世界が写る感覚は新鮮で、レンズワークの大切さや、写真を撮ることの面白さを改めて実感するきっかけになった。地上近くの葉っぱの裏側など、普通では覗き込めない視点から世界を見るのも面白い。常に使うわけではないけれども、いつもカバンに入っていて、いざ取り出せば安定の画質で写し撮ってくれる、優等生といった感じの1本。当初の目論見とは違った方向での活躍だけれども、文字通り「視野が広がった」という意味でも、「買ってよかった!」と思える。2024年はその視点を、本業の野鳥写真にも還元していきたい。
作例
森を散策中、地上近くの葉に目が止まり、カメラを下から突っ込んで、真上に向かって撮影してみた。葉っぱは歪みなく写っていながらも、背景はしっかりと広角特有の遠近感が表現されている点に面白さを感じる。視点を変えてくれるレンズだ。