ソニーは、2023年11月8日と9日の2日間、発表されたばかりのフルサイズミラーレスカメラ「α9 III」や望遠単焦点レンズ「FE 300mm F2.8 GM OSS」などの体験イベント「α SPECIAL EVENT 2023」を横浜のぴあアリーナMMで開催した。
会場には、「α9 III」に搭載されたグローバルシャッターの実力を体験できる3つの撮影スポットが用意されていた。さらに、ソニーのスペシャルサイトで作例が紹介されている3人のセミナー講師にもインタビューした。
世界初・グローバルシャッター方式のフルサイズミラーレス「α9 III」
グローバルシャッターを採用し、歪みのないブラックアウトフリー撮影や、最高1/80000秒の高速シャッター、約120コマ/秒のAF・AE追従連写が可能になった「α9 III」。まずは外観から見てみよう。
「α9 III」に搭載された新開発の有効約2460万画素メモリー内蔵フルサイズ積層型CMOSイメージセンサー「Exmor RS」と、AIプロセッシングユニットを備えた画像処理エンジン「BIONZ XR」が展示されていた。全画素を同時に露光、読み出しを行うことで画像の歪みが発生しない。肉眼で見た形状のままの撮影が可能となっている。
レンズ交換時にイメージセンサーが剥き出しになるのを防ぐために、遮光幕が装備されている。遮光幕のON/OFFはメニュー画面から設定できる。
カードスロットは SDカード (UHS-I/II対応) とCFexpress Type Aカードのマルチスロットが2基搭載されている。
基本的な操作系は「α9 II」を踏襲しているが、モードダイヤルの下部に[静止画 / 動画 / S&Q切り換えダイヤル]が設けられており、背面液晶モニターは4軸マルチアングル液晶モニターになっている。
グリップは、握りやすさを向上させるために形状が変更されている。それに合わせてシャッターボタンの角度にも変更が加えられた。角度がついたことで、グリップを握った状態で自然に押し下げられるようになっている。また、ボディ正面にカスタムボタン (C5) が追加された。
インターフェイスはボディ左側面に集約。1000BASE-Tの LAN端子が装備されている。
「α9 III」の高性能を撮影で体感!
会場には3つの撮影スポットが設けられていた。野球のバッティングシーンを撮影できる体験スペースでは、「α9 III」のグローバルシャッターによる歪みのない画像と、シャッターを切る直前から撮影できるプリ撮影機能、120コマ/秒の高速連写などを体験できた。
シャッターを切る直前から撮影できるプリ撮影機能は、メニューのドライブモードで設定できる。設定範囲は0.005秒〜1秒。プリ撮影の開始を、シャッター半押しか、設定したカスタムキーなどにするかを選択することもできる。
プリ撮影機能0.5秒で撮影したベストショット。バットがボールに当たった瞬間がしっかり捉えられていた。
体験スペース脇のモニターには、インパクトの瞬間を捉えた画像が表示されていた。バットに当たったボールがつぶれているのがわかる。バットが歪んでいないのも確認できる。
全速同調するストロボ発光を体験
対応するストロボ「HVL-F60RM2」「HVL-F46RM」を使うと、「α9 III」では全シャッタースピードで同調が可能となる。それを体感できる撮影スポットがこちら。
撮影スポットにセッティングされていた「α9 III」には、「FE 24-70mm F2.8 GM II」と「HVL-F60RM2」が装着されていた。
「α9 III」には発光タイミングを設定できる機能が搭載されており、対応していないストロボや他社製ストロボを高速同調させることが可能だ。
世界最軽量の “サンニッパ”「FE 300mm F2.8 GM OSS」
「α9 III」と同時発表された望遠単焦点レンズ「FE 300mm F2.8 GM OSS」。こちらも発売前に体験することができた。質量約1,470g (三脚座を除く) で、世界最軽量のサンニッパだ。軽いだけでなく重量バランスがいいので、機動性も高い。光学式手ブレ補正機構が搭載されている。鏡筒のスイッチや操作リングなどは「FE 400mm F2.8 GM OSS」や「FE 600mm F4 GM OSS」とほぼ共通で、操作性は大きく変わらない。三脚座は、取り外しが可能になっている。
フィルターは差し込みタイプになっている。市販のφ40.5mmフィルターに対応しており、別売の差し込み式円偏光フィルター「VF-DCPL1」は、レンズに装着した状態でもフィルターの回転が可能だ。
同梱の専用レンズフード「ALC-SH175」は、着脱しやすいロックボタンを装備。十分な強度を備えたエンジニアリングプラスチックを採用した新設計のフードで、軽量化を実現している。
撮影スポットはバドミントンのコート。AF性能を確かめたり、ラリーの様子やインパクトの瞬間を「α9 III」の機能を使って写し止めたりと、カメラとレンズの性能を存分に体感できるようになっていた。
「FE 600mm F4 GM OSS」を装着した「α1」なども用意されていた。
講師陣に聞いた「α9 III」と「FE 300mm F2.8 GM OSS」の実力
会場でセミナーの講師を務めていた小橋城さん、水谷たかひとさん、野口純一さんに「α9 III」と「FE 300mm F2.8 GM OSS」の使用感をうかがった。
小橋城さん
「α9 III」で特にすごいと感じたのはAF。一度ピントが合うと、手前に木があってもピントが合い続けるし、人物認識では頭や体も追ってくれる。「α9 III」でないと撮れない写真もあるけれど、競技や狙いによって使い分けるのがいいと思ます。
「FE 300mm F2.8 GM OSS」は70-200mm並みに軽量でコンパクトなので、余裕があれば持って行きたいレンズ。最近はズームレンズもコンパクトで高画質になってきましたが、やはり単焦点レンズのキレやヌケは別格です。
水谷たかひとさん
「α9 III」は、とにかくすごいカメラ。歪みのない本当の一瞬が撮れる。写真の世界が大きく変わると思います。「FE 300mm F2.8 GM OSS」の描写力もすごい。焦点距離300mmは、スポーツだけでなくポートレートなどでも使いたいと思っていた人は多いはず。多くの人が待ち望んでいたレンズがやっと出てくれたという感じだし、期待以上のものになっていると思います。
「α9 III」と「FE 300mm F2.8 GM OSS」の魅力については、「CAPA博」でもお話しする予定です!
野口純一さん
「α9 III」ではAF性能が向上しているのが体感できました。魚を獲りに水面近くまで降下し、すぐに向きを変えた野鳥を狙ったとき、ほぼすべてのカットで鳥の目にピントが合っていたのには驚きました。120コマ/秒の高速シャッターは撮りたい瞬間を逃しませんが、プリ撮影機能には慣れが必要だと思います。シャッター半押しの状態から写るので、これまでの感覚でシャッターを切ると、画面に余計な空間ができたりして、フレーミングが中途半端になりやすいからです。
「FE 300mm F2.8 GM OSS」の描写には、ズームレンズにはないクリアさがあります。「α9 III」との組み合わせで使うと、AFも速いし正確です。