機材レポート

【ニコン歴代カメラ】ニコン S/MS – シンクロ接点が搭載された3世代目の改良版

1917年から2017年に至るニコン100年の歴史はカメラだけでは語れない。双眼鏡、顕微鏡、レンズ、測定・検査機器、測量機、半導体露光装置(ステッパー)、その他さまざまな光学製品やその応用技術から成り立っている。また、それは技術者のたゆまぬ研究・開発努力によって構築されてきたことは言うまでもない。ここでは、その長い道のりの第一歩から順を追って見ていく。

 

シンクロ接点が搭載された3世代目の改良版(since 1950)

ニコンMにシンクロ接点を組み込んだモデルであるニコンSは1950年12月に発売された。しかし、実際に市場に出たのは1951年に入ってからとの説もある。型名の”S”はシンクロの頭文字をとったものだが、これ以降ニコンのレンジファインダーカメラはS2、SP、S3、S4、S3Mと必ず”S”が付くので、レンジファインダータイプのニコンを総称して「Sシリーズ」と呼び、そのレンズマウントを「Sマウント」と呼ぶようになった。

1950年前後からフォーカルプレーンシャッターのレンジファインダーカメラにもフラッシュシンクロが内蔵されるようになり、ドイツでも1950年にはライカⅢF、コンタックスⅡaと、両雄のシンクロ対応機が発売されている。ただこの時代、まだストロボは普及しておらず、フラッシュバルブ用だ。そしてニコンにもシンクロ接点が内蔵されてS型が誕生したわけだ。

フラッシュの発光器(フラッシュガン)をカメラに接続するためのシンクロソケットには、コダック型とドイツ型という2種類の規格があり、それぞれ日本のJIS規格にも採用されたのだが、このS型ではいずれにも属さない特殊規格のシンクロソケットが組み込まれた。これらはボディの巻き戻し側の肩部に2組設けられ、それぞれ”S”と”F”の刻印が施されている。

なお、M型で識別のためにシリアル番号の頭に施された”M”の刻印は、このS型では廃止されたのだが、一部”M”刻印がありながらS型と同様のシンクロソケットを備えたものがあり、「MS型」と呼ばれている。

 

ニコンS/MSの特徴

ニコンSは基本的にはニコンMにシンクロ接点を組み込んだものである。従って、34×24㍉の画面サイズや砂型鋳物のボディはニコンMのものを踏襲しており、その点でS2型以降の機種とは大きく異なっている。外観もM型やI型と酷似しており、シンクロソケットの存在でやっと識別可能となっている。

 

I型からM型にかけての外観変化
M型でフィルム圧板の変更のため、裏蓋に四角いふくらみが設けられた。またアクセサリーシューの形も変遷があったが、M型で最終的にこの形になりS型に受け継がれた。

 

左右軍艦部のダイヤルは前モデルとほぼ同じ
いわゆる軍艦部の各操作部分はM型から変わっていないが、シャッターボタンの周囲のリングはニコンSになって背の高いものになった。ただ、 S型でもMIOJ(Made in Occupied Japan)の刻印のあるものは一部を除いてM型と同じ背の低いリングとなっている。

 


(上写真:ニコンM、下写真:ニコンS)

 

シンクロソケットは前後二組を設置
S型のシンクロソケットは特殊規格のものが巻き戻し側の肩部に前後二組設けられている。前側には”F”、 後側に”S”の表示があり、初期は側面にあった刻印が後期は上面に移動した。

 

ニコンMSの赤目ソケット
M型の刻印とシンクロ接点を備えた機種であるMS型の中にはシンクロソケットが赤いものがあり、「赤目ソケット」と呼ばれている。

 

Sシリーズの標準レンズ
ニコンSマウントの標準レンズとしては、50ミリ F2と50ミリ F1.4が用意された。いずれも内バヨネットに装着するもので、レンズには距離リングを備えていない。

 

50ミリF2 — 沈胴 —

50ミリ F2の標準レンズは、3群6枚構成のゾナータイプで、当初は沈胴式であった。光学系は戦前のキヤノン用のものをそのまま使ったと言われる。

 

50ミリF2 — 固定鏡胴 —

50ミリ F2の光学系はそのままで固定鏡胴に変更されたもの。発売時期は1950年ごろと言われている。その後長期間にわたって製造された。

 

50ミリ F1.4

50ミリ F1.4の標準レンズは、3群7枚のゾナータイプで、1950年の発売。同年50ミリ F1.5も短期間造られたが、すぐにこのレンズに置き換わった。

 


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