機材レポート

スペック表だけじゃわからない“リアルな魅力”に気づく――パナソニック「S1R」と巡るアイルランドの旅【中編】

パナソニックのフルサイズミラーレスカメラ「LUMIX S1R(以下、S1R)」を相棒にアイルランドを巡る旅の第2弾。前回はアイルランドの空をグラデーション豊かに描き切ったS1Rだが、今回はいろいろな撮影機能を試してみたい。

▲2019年3月23日に発売された「LUMIX S1R」。参考価格は税込50万990円(ボディ)

 

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撮影のなかで実感した操作性の良さ

曇ったり、スカッと晴れたり、はたまたザーッと雨を降らせたりを繰り返すアイルランドの気候。アイルランドの大地は様々な表情を見せてくれる。

撮影していくなかで気がついたことは、操作性の良さと画の調整幅の大きさだ。

 

まずは操作性だが、どんな画にするのか、頭のなかに描いたイメージをカメラに指示するとき、メニュー画面から入り……というのではなく「Q」ボタンを押して一気にイメージ通りにすることができる。また、調整しているときは2画面になり、画を見ながら調整ができるようになっている。もちろんWBをシフトさせるときも同様で、画面を見ながら調整ができる。

 

また、筆者はリアモニターを見ながら撮影するよりもEVFを見ながら撮影することが多く、自然と設定変更作業は右手親指で探りながら行うことになる。その点、S1Rは操作するべきボタンやダイヤルがEVFから目を離さずともすぐにわかり、慣れないカメラであるにもかかわらずスムーズに動かすことができた。

 

ちなみに、再生ボタンだけは左手側についているため、右手だけでは操作ができない。そのため筆者は右手側にあるFnボタンを再生ボタンへ割り当てて、撮影におけるほぼすべての操作を右手だけで行うようにカスタマイズした。

 

マニュアルフォーカスに変更したときも便利な機能が備わっていた。

マニュアルフォーカスへ変更した場合、上のように2画面になり、より正確なピント合わせが可能となる。ピントの確認をする場合、多くのカメラがピント拡大画面をモニターいっぱい広げるのだが、S1Rは2画面で確認できるのである。これは便利な機能である。この機能は今後、より明るいF値のレンズが出てきたときやマクロレンズを使っての撮影で威力を発揮することになるだろう。

 

操作性では1つ不満な点があった。それは、メイン電源のスイッチの場所である。カメラ上部の右側中央付近に配置されているのだが、これが操作しづらい。この点だけはいただけなかった。

調整幅の大きいフォトスタイル

続いては調整幅の大きさだ。各社ともに写真の色合いやコントラストなどをあらかじめ設定したモードを用意しており、パナソニックはこれを「フォトスタイル」と称している。このフォトスタイルには様々なモードがあり、スタンダード、ヴィヴィッド、ナチュラル、フラット、風景、ポートレート、モノクローム、そしてなにやら意味深な「L」のついたモノクロームが用意されている。

 

モードすべてでスタンスが違い、調整方向も変わるのだが、そのどれについても後にパソコンでレタッチを必要としない、そのままで良いと思えるくらい調整幅が大きいのだ。これもS1Rの特徴の1つと言えるだろう。

<ヴィヴィッドで撮影>

1番目の写真では、春先では珍しいサンピラーが発生した。彩度、コントラストを共に上げ、WBを晴天日陰へ変更して撮影したもの。レタッチの必要性を感じさせないほどの調整幅である。

 

<ポートレートモードで撮影>

彩度を下げコントラストを下げた画。筆者はこのポートレートモードの発色傾向が気に入っている。

 

<「L」モノクロームで撮影>

コントラストを下げて撮影した。通常のモノクロームよりもグラデーションが豊かに出るようで、筆者はこちらの「L」モノクロームが好みである。

 

グラデーション再現の良さや調整幅の広さを撮影に生かす

その後、転々と場所変え撮影を続けるものの、曇り空が多くなっていく。こうした天候のなかでの画作りは、どう重々しい雰囲気を出していくかにかかってくる。

 

グラデーション再現の良さや、調整幅の広さを生かし画作りしていく。

 

次の写真はアンダー目の画であるが、上述のようにボディのグラデーション再現が秀逸である。ちなみに、このレンタカーは受け取ったまま洗車は一切していない状態での撮影だ。

室内撮りでハイレゾモードを試す

S1Rには、センサーをシフトさせながら8回連続で自動撮影を行い、カメラ内で自動合成処理を行う「ハイレゾモード」という機能が搭載されている。この設定で撮影されたデータはRAW(設定によって通常のRAWも同時に記録される)で保存されるため、後々パソコンでRAW現像する必要がある。

 

ハイレゾモードで撮影すると画素数は何と約1億8700万画素といきなり数字がインフレしてくる。ではどのくらい高精細になるのか? ハイレゾRAW(1億8700万画素)と通常RAW(4700万画素)をJPEGに現像して比較してみることにした。

▲左:左がハイレゾモード(1億8700万画素)、右が通常撮影(4700万画素)

 

上の比較は画面中央の銅像の腰付近とその後ろにあるステンドグラスをカットしたものである。正直4700万画素でもかなり解像していると言えるのだが、ハイレゾモードはさらに細かく記録していることがわかる。カットしたデータをさらに拡大してみると4700万画素のほうはすぐジャギが出てモザイクのようになるのだが、ハイレゾモードで撮影したデータはジャギが出るまでしばし拡大できた。

 

さて、このハイレゾモードいったい何に使うのだろうか?4700万画素もあれば十分では?と疑問に思う読者の方もいらっしゃるであろう。そこで筆者なりの解答を記しておきたい。

 

ハイレゾモードは、写真の役割の1つ「記録」に役立つものだと筆者は考えている。撮影した教会もそうなのだが、こうした歴史建造物の記録などもその1つである。

 

2019年4月15日から同年4月16日にかけて起こったノートルダム大聖堂の火災。筆者もパリを訪れた際にノートルダム大聖堂を眺めたのだが、あの美しい大聖堂が燃えてしまったことが残念でならなかった。こうした際に高精細な記録があれば再建の役に立つかもしれない。日本でも歴史建造物は多く、細部まで記録し保存できれば「詳細な記録」を後世に手渡すことができる。

 

また、絵画や消えていく街並みなど後世に残しておきたいものがたくさんある。こうした「記録」を残していく際、画素数はあったらあっただけ良いと筆者は考える。そうした点においてはハイレゾモードの使い道は確実にあるのではないだろうか。また、こうしたモードをカメラに搭載してきたことで、パナソニックは「本気」でプロユースを考えているということを感じた。

 

次回は今回持参したLUMIX Sレンズの描写や手ブレ補正を試していきたい。