機材レポート

一眼カメラで星空撮影にチャレンジ! 期待のマイクロフォーサーズ機「LUMIX G99」レビュー

最近はフルサイズミラーレスの話題で持ちきりのパナソニックだが、5月にはマイクロフォーサーズ規格の新モデル「LUMIX G99」が登場した。マイクロフォーサーズ機の発売は1年以上ぶり、中級機以上はもうフルサイズ一辺倒になってしまうのではないか? という心配もあったなか、フラッグシップ機「LUMIX G9 PRO」の操作性・画質を継承していると大々的に謳う本機が発売されたことを素直に喜びたい。今回はこのLUMIX G99をもって星空撮影にチャレンジしてみた。

上級機に迫る基本スペック

さて新発売になった「LUMIX G99」(以下、G99)のポジションだが、「LUMIX G9 PRO」(以下、G9 PRO)と「LUMIX G8」の中間になるだろう。ハイアマチュア向けモデルのバリエーションという雰囲気で、プロ向けとされる機種よりは一回り小さく、マイクロフォーサーズのありがたみを実感できるサイズに仕上がっている。

サイズは手ごろだが、宣伝文句通り基本性能はG9 PROに迫る勢いだ。

まず撮像素子には有効画素数2033万画素ローパスフィルターレス Live MOSセンサー、4CPUで高速演算処理を実現した画像処理エンジン「ヴィーナスエンジン」を搭載しており、スペック的には上級機とほぼ同じ。

操作性の面でも、軍艦部の液晶は省かれているものの、普段よく使うボタンの位置は操作性での評価も高いG9 PROに近く、直感的に操作しやすいので手探りで操作することの多い星空撮影ではありがたい。またカメラのサイズは小さいが、グリップは少し大きめになっており、多少手が大きい人でも使いやすい。背面ボタンの位置もよく考えられており、手の大小に関わらず誤操作を起こしにくい設計になっている。

天体写真や花火の撮影に便利な新機能を搭載

なぜ今回、フルサイズ機はなくマイクロフォーサーズ機で星空撮影に行くことになったのかというと、実は「LUMIX G99」では新機能として、天体写真や花火の撮影に便利な「ライブビューコンポジット」が加わったのだ。これは仕上がりを確認しながら「比較明合成」ができるという機能。比較明合成とは合成する画面の暗い場所はそのままで明るい部分だけを重ねていくという合成方法で、比較的明るい場所でも星の軌跡が撮影できるとあって、星空写真ファンの間では最近すっかりおなじみになった撮影方法だ。

比較明合成は仕上がりの予想が難しいため、撮影しながら星がどの程度動いているのか? 雲が流れてきていないか? などをライブビューコンポジットで確認しながら撮影できるのはとても便利だ。また、後処理で合成するよりもカメラ内の機能で合成したほうが、手間がかからないというのはもちろんのこと、流星や飛行機、人工衛星などの速く動くものの軌跡が途切れにくいという利点もある。ちなみに普通のバルブ撮影時には30分という時間制限があるが、ライブビューコンポジットでは3時間まで撮影できる。

本機が星空撮影に向いていると感じるもう1つの理由が防塵防滴ボディだ。基本的に晴れているときにしか撮影しない星空写真だが、夏冬問わず、長時間カメラを屋外に出しておくと雨が降ったのかと思うほど結露することもよくある。そのため、防塵防滴ボディというのは安心して星空撮影をするにはいまや必要不可欠の機能といえる。

いざ、星空撮影にチャレンジ!

梅雨前のわずかな晴れ間を求めて野辺山へ。45m電波望遠鏡の背景に広がる星空を撮影した。途中、霧が流れてきてしまったのを画面上で確認してシャッターを閉じた。薄い雲だとどの程度星が消えているのか判断しづらいことも多いので、ライブビューコンポジットで確認しながら撮影できるのは心強い。

LUMIX G99 LEICA DG SUMMILUX 12/F1.4 マニュアル F1.8 4秒×150枚 WB:3700K ISO1600

 

ライブビューコンポジット露光中は常に決めておいた露光時間ごとに画像が更新され、重ねている枚数も表示される。更新される枚数に制限はないので安心して撮影できる。ただ、電池の減りは早いので、予備バッテリーを準備しておきたい。USB端子から給電しながらの撮影もできるので、1時間を超えるような撮影の場合には外付けの大容量バッテリーなどの外部電源の使用を検討してもいいかもしれない。

 

ライブビューコンポジット機能を使うのは意外と簡単だ。Mモードでシャッタースピードを「LC」に合わせた後、メニューボタンを押して撮影機能のなかからライブビューコンポジットを選択し、1コマごとの露光時間を設定する。その後、撮影直前にシャッターボタンを1回全押ししてノイズリダクション用の画像を取得、さらにもう一度シャッターを全押すると撮影が開始され、もう一度押すと撮影を終了し、ノイズリダクションが行われて自動的に画像が保存される。

露光中シャッターを押し続ける必要はないので、露光開始時と終了時にレンズ前を黒い紙か何かで覆うなどの工夫をすればシャッターリモコンやレリーズなどを使わなくても撮影できる。

 

長時間露光中はレンズに露がついてしまうとそれまでの露光時間がすべて無駄になるだけでなく、その後ヒーターを巻いてもなかなか露が取れないので(拭いてもまたすぐについてしまう)、なるべく最初からレンズにヒーターを巻いておくことをおすすめする。暗くてよくわからないかもしれないが、この時すでに三脚やボディは露でびしょぬれだった。

 

夜半過ぎ、南東から天の川が立ち上がってきた。こちら側の空もやはり時折雲や霧が流れる悪条件だったため、20分ほどでシャッターを閉じた。後から合成すると切れ切れになってしまうことが多い飛行機の航跡や、右上のおそらく人工衛星と思われる光跡がきれいにつながっているところにも注目してほしい。

LUMIX G99 LEICA DG SUMMILUX 12/F1.4 マニュアル F1.4 4秒×300枚 WB:3700K ISO1600

 

次の写真は、露光時間を切り詰めて星を止めて撮影。思ったよりもノイズが少なく、天の川もよく表現できている。星の軌跡を撮影するときには比較的暗いレンズでも撮影できるが、このような撮影では開放がF1.4 やF2などの明るいレンズが必須になる。

LUMIX G99 LEICA DG SUMMILUX 12/F1.4 マニュアル F1.4 8秒 WB:3700K ISO1600

 

超高感度域でのノイズや超高画素化などを考えれば確かにフルサイズ機に分があることが多いが、それを実際に必要とすることはあまりない。それよりも持ち運んで撮影するシステムとしてカメラ機材を考えた時にはカメラやレンズが小さくて済むマイクロフォーサーズには利点が多いのではないだろうか。

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