機材レポート

フルサイズミラーレス4モデルの「瞳AF」を一斉テスト! 並べて比較してみてわかったこと

これまで4回に渡り、瞳AFに焦点を当てて4機種(ソニー「α7III」ニコン「Z 6」キヤノン「EOS R」パナソニック「LUMIX S1」)をチェックしてきたが、今回はそのまとめとして4機種を並べて比較していきたい。

※本記事の内容は、2019年8月撮影時点のものです

【各モデルの検証記事はこちら】

瞳AFガチンコチェック】ソニー「α7 III」はウワサ通りの食いつきと認識度だった!

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回転動作時や眼鏡をかけた状態では? キヤノン「EOS R」の瞳AFを様々なシーンで検証

「人体認識」まで対応するパナソニック、「瞳AF」の実力は? フルサイズミラーレス「LUMIX S1」で検証

 

【比較その1】どのくらいから瞳AFが効く?

各機種で実験したが、今回はこれらを並べて見てみよう。顔認識が瞳認識に変わるときの顔の大きさは、かなりの差があるのがわかると思う。ちなみに撮影では、レンズがニコンのみ24-70mm F4、ほかは24-105mm F4のレンズを使い、ズーミングで大きさを見ている。撮影距離なども揃えようと思ったが、あまりにも差が大きすぎたので、バラバラになってしまっている。

ちなみに、EOS Rは9月26日に公開された新しいファームウエアであるVer.1.4では、さらに遠くからでも顔・瞳認識AFが効くようになった。今回の実験はファームアップ前(Ver.1.3)に撮影したので他社と比べて物足りない感じだが、Ver.1.4にすることでLUMIX S1よりもさら小さく、ソニー α7IIIに迫るほどの小さい状態からの認識になっている(※2019年10月7日追記)。ファームアップしていない人は、一刻も早く行ったほうがいいだろう。

<α7III>

 

<Z 6>

 

<EOS R>

 

<LUMIX S1>

このようにカメラによってかなり差があるが、これが技術的な差なのか、あるいは設計思想的な違いなのか、このあたりは不明だ。例えばα7IIIは非常に小さい時点で認識していて凄いと感じるが、果たしてこの大きさで左右の目のピント差が出るかどうかは被写界深度から考えてみても実用的には微妙ともいえる。ちょうどいい距離というと、個人的見解だが、ニコンよりちょっと遠めくらいからでいいんじゃないかと思う。

 

【比較その2】ファインダーでの測距点の推移

次に各回でも行った測距点の推移を別のシーンで見て、比較して見ようかと思う。機種によっては苦手な動き、得意な動きなどもありそうな印象で、とてもワンシーンだけですべての傾向を捉えることは無理だと思うが、並べて見ることで見えてくることもあるだろう。

今回は柵のある階段をゆっくり下りてくるシーン。はじめは画面の端のほう、一眼レフだったら測距エリア外となりそうなポイントからスタートし、階段を下りて前に歩いてくるという流れ。途中に回転もはさんでいる。実際にシャッターを押して撮影しているので、そのときのファインダーの見え方にも注目してほしい。AFモードはすべてAF-C、つまりコンティニュアスAFに準ずるモード、レンズは各メーカー純正の70-200mm F4のレンズで、絞り開放での絞り優先オート、ISO800で撮影。ファインダー動画撮影はLUMIX G99を用いている。

α7III

<ファインダー動画>

最初の時点から瞳認識がよく対応。顔の向きによっては顔認識に変わることもあるが、人物から外れることはない印象。途中、回転動作から階段を下りる動作のとき、瞳認識が外れて手すりに一時的に移ってしまうことがあった。ただ、それは短時間ですぐに瞳認識に復帰。ちなみに手すりに移ってしまう現象はEOS Rでも見られた。接近しながらの回転動作では認識モードの変化が同様に見られたが、その切り替えの速さ、追従の速さは他機種よりも機敏に感じる。連写モードは高速連写(H+)モードなので、ブラックアウトはレリーズの初回のみ。目障りな感じはなく、映画のカチンコのように切れたタイミングを知らせてくれる感覚で、むしろわかりやすい。

 

<実写1>


拡大

 

<実写2>

拡大

<実写3>

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Z 6

最初の時点では顔認識枠が表示され、食いつきが非常によく、階段を下りてくるまでは回転動作があってもそのまま顔認識のまま食いついてきた。ウエストアップくらいになったところで瞳認識枠に変化。回転時には顔認識枠になったが、正面ですぐに瞳認識枠に変化した。迷いがない感じで、全体的に食いつきの良い印象。連写モードは高速連写の拡張モード(H+)で、ブラックアウトはないが、レリーズ時の明るさ変化は伴う。

<実写1>

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<実写2>

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<実写3>

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EOS R

最初の時点で顔認識がしっかり効いている。若干、枠のほうは遅れてついてくる印象だ(※9月26日公開のファームウエアVer.1.4には、「AF枠の表示速度向上」も盛り込まれています)。回転動作でも顔認識は外れなかった。そのあと階段を下りるときに、一瞬顔認識が外れ手すりに流れたが、すぐに顔認識に戻った。高速連写モードで撮影しているが、撮影中はブラックアウトしないのが特徴。瞳認識はだいぶ接近してから対応、ただし、上の端に近い位置でもしっかり認識してくれている。

<実写1>

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<実写2>

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<実写3>

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LUMIX S1

最初の時点では顔認識が効き、シャッターごとに顔認識ではなく、人体認識、あるいは自動認識枠が表示される感じで進む。柵横に全身が出た時点で瞳認識枠も登場、回転時には人体認識の表示に変わった。その後はほぼ瞳認識で対応したが、回転時には人体認識になった。瞳認識は意外と比較的出る機会が少なかったが、人体認識効果は高く、人物から外れるようなことはなかった。連写モードはHモードで、AF-Cではブラックアウトが生じる。

<実写1>

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<実写2>

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<実写3>

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【比較その3】回転シーン

最後に、各回で行った回転シーンでの測距点の変化、追尾の具合を比較して見てみることにする。クイックな動きにいかに対応してくれるのか観察してみよう。次の動画では時間を5倍に引き延ばしてスローモーションでも確認している。

全く同じ動きにはならないので、その辺はアバウトに見てもらいたい。動きとしては左右、2回の振り向きを試している。1回目はシャッターなし、2回目は所々でシャッターを切っている。AF-C、つまりコンティニュアスAF相当で、そのカメラで一番の高速連写モードで撮影している。シャッターとピントの優先設定は初期設定のまま行っている。なので、ピントが合わずシャッターが切れていないところもある。

測距点の推移は各機種だいたい同じ流れで、正面気味になると瞳認識、外れると顔認識となる。「比較2」のときよりも動きがクイックなので、後ろ姿になった瞬間はほとんどの機種が顔認識のままキープしているが、α7IIIは顔認識から細かな表示でわかるように自動認識に機敏に変化している。この辺の動きは一歩進んだ印象を受ける。

 

【まとめ】α7IIIが食いつき具合やスピードで一歩リードか

比較撮影したシーンは多くはないが、これらを見ただけでも違いが見てとれ、各機種で特徴があることがおわかりいただけただろう。瞳認識の追尾具合は各機種で結構異なり、対応できそうなシーン、得手不得手などがありそうな印象だ。なかでもα7IIIは認識する顔の大きさ、食いつき具合やスピードに関して、一歩リードしているように感じた。

 

モデル/朝倉璃奈(ABP Inc.)