機材レポート

風景を撮るならぜひ持っておきたい!「ハーフNDフィルター」なら自然の階調を美しく再現できる

朝日や夕焼け空は地上の風景との明暗差が大きく、空に露出を合わせると地上が黒くつぶれ、地上に露出を合わせると空が露出オーバーになり、せっかく焼けた空の色が失われる。このように空と地上といったような、明暗差が大きい場面こそハーフNDフィルターの出番だ。上半分がND、下半分が透明になっており、明るい空の部分だけにND効果をかけることができる。

 

NDと透明な部分の境界が直線だと、できあがった写真に明暗のムラが目立ちやすい。自然風景で使う場合は、山や木立など被写体に直線以外の部分があっても自然に見えるソフトグラデーションタイプが使いやすい。通常は角型のフィルターをホルダーに装着して用い、空と山、空と海といった境界部分とフィルターの濃淡の境目が重なるように位置を調整して使用する。実際に撮影してムラがあるようなら、自然な仕上がりになるよう位置を微調整しよう。

 

ND部は濃度によってND4やND8など種類があるが、主な使用場面となる朝日・夕日などの強い明暗差の調整にはND8を使用することが多い。また、日の出・日の入りのときは太陽の光が強いこともあるので、光学ガラスを使用したフィルターだとゴーストやフレアの発生を抑えられ安心だ。

 

<まず1枚揃えるならソフトタイプのND8>


Soft


Hard

自然風景撮影において、ハーフNDフィルターをまず揃えるなら、ソフトグラデーションタイプのND8がオススメ。輝度差が大きな朝日・夕日はもちろん、滝壺から森を見上げて撮影する場面など、まずは持っておけば安心だ。

 

輝度差の大きな場面で白トビ・黒ツブレを抑えよう!

自然の美しい階調再現には、ソフトグラデーションタイプがオススメ

<フィルターなし>

上の部分にかけると……

<SoftGND8使用>

夕日を飛ばすことなく棚田と夕焼けの階調を美しく再現

フィルターなしだと空は露出オーバーになり、夕焼け色が失われてしまった。夕焼け雲の明るさはほぼ均一なので、ソフトND8フィルターを使うことで、自然な夕焼けの色を再現できた。ソフトグラデーションタイプのハーフNDなら境界も目立ちづらい。

ニコンZ 7 ニッコール Z 24-70mm F4S 絞り優先オート F11 1/25秒 ISO200WB:5000K 三脚・ハーフNDフィルター(SoftGND8)使用 (撮影地/三重県熊野市)

 

森や滝壺などで使用する場合もソフトタイプが有効

<SoftGND8使用>

ソフトND8で岩肌の緑を飛ばさずに描写

洞窟内にある幾段にも流れ落ちる滝。洞内は薄暗いが、背景は屋外からの光が強く差し込んでおり、明暗差が非常に大きい。ソフトND8を使用して上部の明るさを抑え、滝の黒ツブレも防いで、自然な色合いに仕上げた。

ニコンZ7 ニッコール Z 14-30mm F4S 絞り優先オート F16 25 秒 ISO400 WB:5000K 三脚・ハーフNDフィルター(SoftGND8)使用 (撮影地/鹿児島県沖永良部島)

 

構図の変更に伴う画面全体の階調調整にもハーフNDフィルターは有効

<横構図→フィルターなしでOK>

縦構図にすると……

<縦構図→下部がつぶれ気味×>

<SoftGND4使用→水面の階調が再現された〇>

縦構図で生じた暗い部分をハーフNDフィルターで調整

横構図ではフィルターなしで下部のシャドーがよいアクセントになったが、縦構図にすると黒くつぶれる範囲が広くなってしまった。水面は朝焼け空を映し込んでいるため、海岸のようには強くつぶれないので、空の部分にソフトND4を使い、水面の階調を引き出した。

ニコンZ 7 ニッコール Z 14-30mm F4S 絞り優先オート F8 2秒 +0.7補正 ISO100WB:5000K 三脚・ハーフND フィルター(SoftGND4)使用

 

各社から発売されている主なハーフNDフィルター

KANI Premium

バリエーションが豊富で出目金レンズでも使用が可能

通常のフィルターネジに対応するタイプだけでなく、出目金レンズにもフィルター装着が可能なアダプターがあるのが特徴。Premium シリーズは反射率を特に抑えた新コーティングにより、これまで以上にゴーストやフレアを抑えられる。Dual Purposeは一枚でハードとソフトを使い分けられるユニークな製品。

 

ケンコー NUANCES EXTREME

強化ガラスを採用した新シリーズを発売

高いニュートラル性や低反射コーティングで定評のあったNUANCES シリーズを強化ガラス採用により強度を高めたのがNUANCES EXTREME シリーズだ。フィルター装着の際に不意に落としがちな角型フィルターを安心して使用できる。グラデーション、リバース、センターと各種タイプが用意されている。

 

マルミ グラデーションND

マグネットホルダーで脱着がスムーズ

ハードタイプに加え、ソフトタイプとリバースタイプがある。マグネットホルダーを使用して、角型フィルターをスムーズに脱着できるのが特徴。ホルダーは3枚まで重ねて使用でき、加えてPL フィルターとの併用も可能。デジタルコーティングされた光学ガラスなのでゴーストやフレアも目立たない。

 

樹脂タイプはゴーストに注意

<未使用>

 

<樹脂タイプフィルター使用>

安価だが、そのぶんゴーストが発生しやすい

アクリルのような樹脂素材のハーフNDフィルターは、安価だがゴーストが起こりやすい。フィルター未使用時にはなかったゴーストが盛大に発生し、写真を台無しにしてしまうことさえある。朝夕の撮影が多いなら、高価でも光学ガラス製のフィルターがオススメだ。