朝日夕日の風景など、空と地上の輝度差が大きくどちらかに露出を合わせると白トビや黒ツブレを起こしてしまうシーンでは、「ハーフNDフィルター」が大活躍してくれる。材質もよくなりグラデーションパターンも増えてきて、今や風景撮影の必携アイテムとなっているハーフNDフィルターの活用術を紹介しよう。
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光が強い朝日夕日にはリバースタイプを使おう
朝焼け空や夕焼け空は水平線もしくは山並み付近がもっとも明るく、上部に行くに従って暗くなる。朝焼けや夕焼け雲が空全体を覆って一面に広がるときは、明るさは比較的均一だが、青空が見えている場合は明暗差が強くなる傾向にある。このため通常のグラデーションパターンでは十分に明暗差を抑えられず、朝焼けや夕焼けの色を出せないことがある。そこで活用したいのがリバースタイプのハーフNDフィルターだ。
中央部が最も濃く、上部に行くにしたがって薄くなっているので、境界線付近の朝焼けや夕焼けの色を捉えやすい。もっともNDが濃くなっている所を正確に境界線付近の明るい空に合わせることが重要だ。
また、日の出・日の入りの瞬間だけでなく、日の出前や日没後も水平線付近と空の上部との明暗差は思いのほか大きい。特に、空の藍色が濃くなるようなときは、相対的な明暗差がより大きくなるように感じる。ソフトタイプのND8では効果が足りず、水平線付近の朝焼け色が薄くなったり、地上の風景がつぶれ気味になるときは、リバースタイプを重ねて使うと、朝焼けや夕焼けの色を再現しやすくなる。
リバースタイプとは、「通常のグラデーションとは逆のハーフNDフィルター」
ソフトグラデーションタイプのハーフNDフィルターは境界部のND 濃度が薄く、強い太陽光部分に対して十分な効果を得られない。リバースタイプならば、ND濃度が逆なので、画面中央に強い太陽光があっても、その光量を抑えることができ、水平線や山並み付近の色を鮮やかに捉えられる。
【使用例1】リバースタイプなら境界線付近の空の色や太陽を鮮やかに再現
<なし→太陽も空も飛んでいる×>
<SoftGND8使用→太陽が飛んでしまう×>
<ReverseGND8使用→太陽も空も再現○>
眩しい夕日も白トビせず描写できる
西の空に雲がなく、眩しいくらいの夕日。フィルターなしだと空や夕日だけでなく、海面の階調も失われてしまった。ソフトND8を使うと夕焼け空や海は見えるようになったが、太陽は飛んでしまっている。そこで、リバースND8のもっともND効果が強いところを太陽に重ねると、白トビさせることなく夕日を撮影できた。
ニコン Z 7 ニッコール Z 24-70mm F4S 絞り優先オート F11 1/40秒 ISO200 WB:5000K 三脚・ハーフNDフィルター(ReverseGND8)使用 (撮影地/鹿児島県奄美大島)
【使用例2】強い太陽が画面中央に入るとき特に有効
<なし→海面が暗い×>
<SoftGND8使用→まだまだ海面が暗い×>
<ReverseGND8使用→海面をつぶさずに夕日もクッキリ○>
太陽の光量が抑えられ水面が美しいグラデーションに
太陽に露出を合わせると、厚みのある雲が海面にそのまま映り、重々しい色になってしまった。ソフトND8を使うと多少海面は明るくなったが十分とは言えない。リバースND8で水平線部分の明るさを抑えることで、海面をつぶさずに太陽もクッキリと捉えられた。
ニコン Z 7 ニッコール Z 24-70mm F4S 絞り優先オート F8 1/20 秒+ 0.3 補正 ISO100 WB:5000K三脚・ハーフNDフィルター(ReverseGND8)使用
【使用例3】リバースタイプの2枚重ねで深みのあるグラデーションに
<フィルターなし→空の色が浅い×>
<ReverseGND8→砂浜がつぶれ気味△>
<ReverseGND8+GND4使用→画面全体が自然な色合いに○>
画面センターの朝焼けの色を引き出し砂浜の黒ツブレも防げた
日の出20分前、朝焼けの橙色に対して、砂浜や青い空との間には強い明暗差がある。フィルターなしだと水平線付近の夕焼け色が露出オーバー気味になって色味が薄く、砂浜はほぼ黒くつぶれてしまった。そこでリバースND8を使うと、夕焼け色が鮮やかになり空の青さにも深みが出て、砂浜の黒ツブレもある程度抑えられた。ここにさらにリバースND4を重ねると、海面の朝焼け色や砂浜の色まで爽やかな雰囲気で捉えられた。
ニコン Z 7 ニッコール Z 14-30mm F4S 絞り優先オート F11 2秒 +0.3補正 ISO200 WB:5000K三脚・ハーフNDフィルター(ReverseGND8+GND4)使用 (撮影地/鹿児島県与論島)
【注意点】強くかけすぎたり位置合わせがずれると不自然になる
<ReverseGND8+GND4使用→ムラが目立つ×>
<ReverseGND8使用→ムラが目立たない○>
重ねすぎによって境界線が暗くムラに
NDフィルターの2枚重ねは強い明暗差を抑えることができるが、一方で効果が強すぎてND部がムラのように見えてしまうことがある。明暗差が弱い場面では、1枚のほうが自然な仕上がりとなる。また、フィルター位置の調整が不適切でもムラになってしまうので、自然な階調を引き出せるようにフイルターの選択や位置決めを行おう。
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