機材レポート

実写とチャートでチェック! 超コンパクトな標準レンズ「SIGMA 45mm F2.8 DG DN」の描写力

周辺光量落ちチェック

「周辺光量落ち」とは、画面の四隅が暗くなる現象のこと。晴天の青空などを撮影すると画面の四隅だけが暗くなるのに気づく方も多いのではないだろうか。これは、レンズ中心部分 (光軸) よりも周辺部分が光を通す量が少ない (暗い) ために発生する。

「周辺光量落ち」が発生する原因は大きくふたつで、ひとつは「口径食」。光軸に対して一定以上の角度で入ってきた光が、絞りの前後のレンズ径や内部構造物などに邪魔され、周辺部分が中央部よりも暗くなる現象。ぼけディスクチャートでは、ぼけの形がラクビーボール形や一部が欠けたようになり、絞り開放付近で影響が顕著に現れる。

もうひとつは「コサイン4乗則」による影響だ。撮影像素子に対してまっすぐにレンズに入った光と周辺部から角度をもって入ってきた光とでは、明るさが異なるという現象が起きる。これを計算する際にコサイン4乗を含む計算式が使われるので「コサイン4乗則」という。「コサイン4乗則」の影響は、絞りを絞っても変化しないが、「口径食」による影響は変化する。ここでは、絞りを絞ることで変化する「口径食」による周辺光量落ちの程度を観察するために、フラットにライティングした半透明のアクリル板を撮影している。

絞り開放からF4.0あたりまで絞ると周辺光量落ちの影響はかなり改善する。それ以降は変化の量が小さいので、絞るよりもデジタル補正で対応したい。

<撮影条件>
SIGMA fp 絞り優先AEにて各絞りで撮影 マニュアルフォーカス ISO感度 : 100 WB : オート カラーモード : スタンダード 画質 : JPEG FINE その他 : レンズ光学補正などは「SIGMA fp」の初期設定のまま LEDライト使用

気になるシーンでは絞るより、デジタルで対応したい

今回のテストは、「SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary」と「SIGMA fp」の組み合わせで行った。「SIGMA fp」の初期設定では、レンズ光学補正の周辺光量はオートになっている。そのため撮影結果は、補正が行われたものだ。それでも絞り開放付近では、画面の四隅に周辺光量落ちが発生している。

具体的にみていくと、絞り開放のF2.8がもっとも強く周辺光量落ちが発生する。わずかに絞ったF3.2から改善がはじまり、F4.0あたりで1度影響が落ち着く印象。実はさらに絞ってもF8.0あたりまで、周辺光量落ちの発生量にあまり変化は感じられない。

絞っても周辺光量落ちの影響が劇的に改善するタイプのレンズではないようだ。周辺光量落ちが気になる条件での撮影では、絞るよりもRAW現像などの後処理で対応することをおすすめする。

ぼけディスクチャートチェック

超小型のLEDをカメラに向けて、画面のなかで点光源として「玉ぼけ (ぼけディスク)」を発生させ、画面内の各部で撮影。この「玉ぼけ」からは、ぼけディスクへの不要な色付きによる各種色収差、ディスク内部の描写のムラ、いわゆる“ザワつき”などからぼけ描写の傾向、非球面レンズなどが原因のひとつといわれる“玉ねぎぼけ”の様子など、さまざまなレンズの特性が読みとれる。以下では画面全体でのぼけの形の傾向と、中央部と周辺部のぼけディスクをアップして掲載している。

F4.0まで絞ると周辺部のぼけの形がしっかりと丸くなる。これで中央部に発生する玉ぼけと周辺部に発生する玉ぼけの形をそろえることができる。

<撮影条件>
SIGMA fp 絞り優先AEにて各絞りで撮影 マニュアルフォーカス ISO感度: 100 WB : オート カラーモード : スタンダード 画質 : JPEG FINE その他 : レンズ光学補正などは「SIGMA fp」の初期設定のまま LEDライト使用

ぼけの形のコントロールも素晴らしい結果

標準単焦点レンズとしては開放がF2.8、レンズ焦点距離も50mmよりもわずかに短い45mmと、絞り、焦点距離の条件からぼけの発生には不利かと思われた。だが、最短撮影距離が24cmと短いため、大きなぼけが発生しやすいレンズとなっている。

ぼけの質からみていく、ぼけディスクチャート (ぼけの円) のふちにわずかに色付きが観察される。また、一般的に非球面レンズの影響といわれるぼけディスクチャートのなかの同心円状のシワ、玉ねぎぼけの傾向が若干観察される。それ以外はザワつきも少なく、コンパクトなレンズながら大口径レンズのような単焦点らしい美しいぼけが楽しめる。

ぼけの質も素晴らしいのだが、それ以上に目を引いたのがぼけの形だ。絞り羽根枚数7枚の円形絞りを採用しているので、開放の中央部ではしっかりと真円に近いぼけが得られる。ここまではシグマの絞り羽根設計が上手という話。しかし、本レンズではF4.0まで絞ると周辺部のぼけまでしっかりと真円に近い形になる。F4.0まで絞れば、画面中央部に発生する玉ぼけも、周辺部に発生する玉ぼけも形をそろえることができるわけだ。質、形ともに単焦点レンズらしい上質なぼけが楽しめる結果といえる。

最大撮影倍率と最短撮影距離チェック

小山壯二氏が撮影した最短撮影距離と最大撮影倍率を見るための静物画チャートを被写体が実物大となるようにA2サイズでプリントアウト。このプリントアウトを最短撮影距離で撮影することで最短撮影距離と最大撮影倍率でどの程度のアップで撮影できるかを観察した。中心部には切手やペン、フォークなど比較的実物の大きさがわかりやすいものを並べることで、実際に撮影シーンでどのくらいアップで撮影できるのかをイメージしやすいよう配慮した。

<撮影条件>
SIGMA fp 絞り優先AEにて各絞りで撮影 マニュアルフォーカス ISO感度 : 100 WB : オート カラーモード : スタンダード 画質 : JPEG FINE  その他 : レンズ光学補正などは「SIGMA fp」の初期設定のまま / LEDライト使用

クォーターマクロを実現する近接撮影の強いレンズ

一般的に標準単焦点レンズは、近接撮影が苦手なものが多い。一眼レフ時代から伝統的に50mmの単焦点レンズの最短撮影距離は約45cm、最大撮影倍率は0.15倍程度のものが多い。このスペックだと、身のまわりのものをアップで撮影しようと考えると、ちょっと物足りない。いつもカメラに着けておく常用レンズとして、標準単焦点レンズが物足りなく感じるシーンのひとつといえるだろう。

一方、「SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary」は最短撮影距離が24cm、最大撮影倍率0.25倍のクォーターマクロ。マクロレンズ並みといえる近接撮影への強さを発揮してくれる。おかげで、より常用したい標準単焦点レンズになっている。

 

 

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