機材レポート

実写とチャートでチェック! 超コンパクトな標準レンズ「SIGMA 45mm F2.8 DG DN」の描写力

あえて開放F2.8を選択した標準単焦点レンズという存在

2019年7月に「SIGMA fp」と同時に発表された3本のレンズのうちのひとつであった「SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary」。ぼけの美しいコンパクトで高性能な標準単焦点レンズとされているが、その性能を改めて解像力やぼけディスクなどの各種実写チャートで詳細に検証する機会に恵まれた。各種チャートで検証した「SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary」の実際をお伝えしたい。

SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary

 

中〜近距離で明確に球面収差によるフレアを発生させた設計

「SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary」の基本的なスペックから確認していこう。そのレンズ名称のとおり、焦点距離45mm、開放F値2.8の標準単焦点レンズである。標準単焦点レンズの開放F値2.8は暗いといえるだろう。ただし、おかげで35mm判フルサイズセンサーに対応しながら、最大径約64.0mm、長さ46.2mm、重さ約215g (ライカLマウント用) を実現している。付属フードまでをアルミ合金製にした質感の高い金属パーツを多用して約200gは、実際に持ってみるとより軽く感じる。

今回のレビューではライカLマウント用を「SIGMA fp」に装着してテストを行ったが、ソニーEマウント用のモデルも用意される。希望小売価格は75,000円 (税別)、実勢価格は57,000円前後 (2020年9月独自調べ) だ。

レンズ構成は7群8枚で、うち非球面レンズを2枚含む。絞り羽根枚数は7枚で、ぼけにこだわったレンズらしく円形絞りを採用している。最短撮影距離は24cmで最大撮影倍率は0.25倍。比較的近接撮影を苦手とする標準単焦点レンズのなかでは、かなり近接撮影性能に優れたレンズだ。

軽量でコンパクト、それでいて高性能。まさにシグマのContemporaryラインのコンセプト「最新のテクノロジーを投入、高い光学性能とコンパクトネスの両立で、幅広い撮影シーンに対応するハイパフォーマンス・ライン (シグマWEBサイトから引用)」どおりのレンズといえる。

ただ、多くのシグマレンズファンが読んでいるであろう「SEIN エンジニアによるプロダクト誕生秘話 大曽根、語る。第六話 45mm F2.8 DG DN | Contemporaryを語る」、詳細は実際に記事を読んでほしいが、こちらで大曽根氏は、このレンズについて

「光学設計者からは、単に球面収差を「補正」するのではなく、球面収差を明確に残しつつしかも高度なコントロールを行い、特にぼけが顕著に出やすい中~近距離では明確に球面収差によるフレアーを発生させ像を滲ませる、という手法が提案された。」

と述べている。

クラシックレンズとは一線画すが個性的な収差設計だという「SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary」が実際に各種チャート撮影すると、どんな結果をみせるのか、本記事では筆者がAmazon Kindle電子書籍『SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary レンズデータベース』を制作する際に撮影した各種チャートを元に本レンズの特徴を解説していく。

SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary
アルミ合金を主体に作られた質感、ビルドクオリティともに高いレンズ。しかし、質量は約215gと軽く、しかもコンパクトだ。

 

解像力チェック

解像力実写チャートは、小山壯二氏制作のオリジナルものを使用。A1サイズのオリジナルチャートを画面いっぱいに撮影し、各絞りでの描写の違いを観察している。チャートの0.8を完全に解像するには約4500万画素、チャートの0.7を完全に解像するには約5000万画素の解像力が必要となる。各種チャートは基本的にカメラのデフォルト設定で撮影。以下では、中央部と周辺部をそれぞれ抜き出した。撮影したJPEGデータを観察して評価を行っている。本記事にはその一部を掲載した。

チャート撮影では、球面収差の影響は感じられない優秀な結果

「SIGMA fp」は、有効画素数が約2460万画素のカメラなので、基準となるチャートは1.1。焦点距離45mmの「SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary」でA1サイズの小山壯二氏オリジナル解像力チャートを撮影すると、撮影距離はだいたい70cmになる。これくらいの距離なら十分に中〜近距離であり、球面収差によるフレアが発生し、像がにじむのではないかと考え、結果を期待した。

しかし開放のF2.8では中央部分を含め、わずかに解像力が低下しフワッとソフトに感じられる。とはいえ、F3.2と比べると、わずかにコントラストが落ち、解像力が低く感じられる程度だ。クラシックレンズなどで発生する解像はしているが、紗の掛かったようにフワフワといったレベルではない。

絞り開放の描写は、球面収差によってソフトになる傾向といわれれば、確かに少し解像力が落ちる印象がある程度。

<撮影条件>
SIGMA fp 絞り優先AEにて各絞りで撮影 マニュアルフォーカス ISO感度 : 100 露出補正 : +1/3EV WB : オート カラーモード : スタンダード 画質 : JPEG FINE その他 : レンズ光学補正などは「SIGMA fp」の初期設定のまま LEDライト使用

■中央部

実際にチャートを見ていくと、開放のF2.8から中央部は基準となるチャートの1.1どころか、さらに小さなチャートの1を7割方解像するほどの優秀さ。基本的に絞るほどに解像力が増し、F8.0〜F11が解像力のピークであろう。とはいえ、開放のF2.8から十分に解像力が高いので中央部の解像力を上げるのに、絞りを絞る必要性はほぼ感じない。

■周辺部

周辺部は、中央部と比較すると当然やや解像力が落ちる。それでも絞り開放のF2.8から、チャートの1.1を8割方、チャートの1ですら6割方は解像している印象だ。こちらも絞るほどに解像力が増す印象でF8.0前後が解像力のピーク。個人的には被写界深度も深くなる影響か、F11あたりがおすすめである。

■歪曲や色収差はかなり抑えられている

絞るほどに画面全体の解像力が増す傾向であるが、絞り過ぎると回折などの影響で解像力が低下する。F16以降はその影響が顕著だ。特別な意図がなければ、F16以降はおすすめしない。

歪曲は厳密いえば、極わずかにタル型が発生する。ただし、気にする必要があるレベルではない。また、色収差の影響は絞り開放の周辺部をつぶさに観察しても、ほぼ発生はみられない。クラシックレンズのような球面収差の発生どころか、非常に優秀な結果である。

 

 

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