伊達淳一のレンズパラダイス『CAPA』2021年5月号 Other Shots
伊達淳一カメラマンがさまざまなレンズを使い倒しレビューする『CAPA』本誌人気連載の「レンズパラダイス」。2021年5月号の「レンズパラダイス」Other Shotsは、Eマウント用に開発されたソニーの大口径レンズ2本「FE 35mm F1.4 GM」「FE 12-24mm F2.8 GM」をチェックした。
ソニー FE 35mm F1.4 GM
広角レンズとは思えない柔らかい後ボケ
横浜山下公園のチューリップを絞り開放で撮影。広角レンズとは思えないほど背景が柔らかくボケているが、電子先幕で1/8000秒の高速シャッター撮影した影響で、後ボケの下半分が欠けてしまった。メカシャッターか電子シャッターに切り換えて撮影すれば、このボケの欠けは回避できる。
ピントを合わせた桜にしっかり解像
山下公園のしだれ桜を絞り開放で撮影。ピントを合わせた桜は花びらまでしっかり解像している。レンズ補正ありでもシーンによっては周辺減光が多少目立つが、画面中央に視線を誘導する焼き込み効果が得られるので、個人的にはありだと思う。前ボケに入れた花もぐるぐるボケにはなっていない。
F2.8では周辺減光はほぼ解消し、極めてシャープな描写
山下公園の氷川丸。開放から2段絞ってF2.8で撮影しているが、ここまで絞れば周辺減光はほぼ目立たない。さすが単焦点のGMレンズで、6100万画素の「α7R IV」で撮影した画像をピクセル等倍でチェックしても一切緩さがなく、クリアでシャープな写りだ。
近接時のピント面のにじみは非常に少ない
横浜公園のチューリップ。密集して咲いているチューリップを前ボケ、後ボケを生かして撮影したかったが、まだ咲いている花が少なめだったので前ボケは諦め、ドアップ撮影で背景を大ボケさせごまかしてみた。絞り開放の近接撮影でもピント面のにじみは非常に少なく、シャープな写りだ。
前後のボケにクセは少なく、自然なボケ味
横浜関内の猫カフェ「Miysis」にて。猫の目にピントを合わせると、鼻先や口元は完全にアウトフォーカス。絞り開放では、広角レンズとは思えないほどの被写界深度が浅さだ。後ボケに比べると、前ボケはやや微ボケが騒がしくなるものの、広角レンズとしてはかなり自然なボケ味だ。
開放F1.4なので、広角でも前後が大きくぼかせる
近所の団地の花壇に咲いてたクリスマスローズをローポジションで撮影。中望遠マクロのように前後が大きくぼけているが、焦点距離35mmの広角レンズでもF1.4で近接撮影すれば、画角の広さと被写界深度の浅さを両立した写真が撮れる。ピント面はシャープで、前後の微ボケも柔らかい。
開放描写がいいので、開放撮影が楽しい
横浜元町の裏路地を散策中に見つけた店のディスプレイを絞り開放で撮影。絞り開放ばかりで撮影して能がないと揶揄されそうだが、このレンズの魅力は、やはり絞り開放の解像性能の高さとボケの美しさなので、被写界深度を必要としない撮影では絞り開放撮影が楽しい。
最短撮影距離付近でヤマブキの花を接写
最短撮影距離は27cm。あまり大きくはないヤマブキの花に、AF-Cで少しずつ近づきながら撮影。風で揺れるのでとにかく高速シャッターを切りまくり、シベにピントが合ったカットを選んでいる。メカシャッター撮影に切り換えたので、高速シャッターでもボケの欠けは抑えられている。
軸上色収差によるボケの色づきは少ない
これも横浜元町の裏路地でのスナップ。何の変哲もない店頭ディスプレイも、このレンズの絞り開放で撮影すればおしゃれに写る。中望遠レンズに比べ、背景の情報が多く、それでいて主要被写体を浮かび上がらせることができるのが特徴だ。軸上色収差によるボケの色づきも軽微だ。
ぼけた花の輪郭に色づきがなく柔らかな描写に
中目黒の桜。満開近くの枝を探して、その先端の花にピントを合わせ、絞り開放で撮影。ピント面がシャープなのは改めて言及するまでもなく、ボケた花の輪郭に緑の色づきがなく、ソメイヨシノの白さがそのまま再現されている。後ボケも非常に柔らかだ。
ソニー FE 12-24mm F2.8 GM
絞り開放でも周辺部まで高解像
通常なら開放から2~3段絞って撮影するケースだが、レンズ性能をチェックするため、あえて絞り開放で撮影。12mmだと広角過ぎるので14mmまでズームしているが、ピクセル等倍でも四隅までシャープに解像。ごく周辺部を除けば、輪郭がエッジ立つほどの解像だ。
F11でしだれ桜をパンフォーカス撮影
山下公園のしだれ桜を12mmで仰角撮影。枝垂れた手前の桜の花と奥の氷川丸の両方を被写界深度内に収め、パンフォーカスにするためF11まで絞っている。F11くらいなら小絞りボケの影響は軽微で、ピクセル等倍でもキレの良い解像が引き出せる。
F18まで絞ると解像は低下気味
東京都議会棟と京王プラザホテルの間の街路沿いに咲くプリンセスミヤビを、新宿高層ビル群を絡めて撮影。パンフォーカスで撮影するためF18まで絞っているが、さすがに光の回折でコントラストとシャープネスは低下気味。F14までに抑えればシャープに写る。
回折補正によって小絞りボケの影響は軽微に
桜だけを撮影しても東京っぽさが出ないので、一発で新宿 (代々木) とわかるドコモタワーを入れてズームテレ側で撮影。ドコモタワーまでパンフォーカスにするためF16まで絞っているが、回折補正が効いているためか、小絞りボケの影響は軽微だ。
画面周辺部でも引っ張られるボケはなく自然なボケ味
ワイド端12mm絞り開放で、垂れ下がった寒桜の花を仰角で撮影。パースペクティブが強いので、周辺の後ボケが放射方向にやや伸びているものの、いわゆる引っぱられるボケや渦巻き状のボケにはなっておらず、輪線やフリンジも目立たず自然なボケ味だ。
一般的な広角域でも後ボケは自然で柔らかい
広角でハナカイドウに迫ってみた。さすがに12mmだと超広角すぎるので、ちょうどいい構図が得られる焦点距離までズーム。一般的な超広角ズームでもカバーできる17mmで撮影しているが、後ボケが周辺まで自然で柔らかい。円形のフロントフィルターが装着するとき以外は、「FE 16-35mm F2.8 GM」の出番はなくなりそうだ。
二線ボケが出やすい状況でも自然で穏やか
超広角ならではのパースペクティブの強さを生かしてハナニラを撮影。奥に見えるのは実は公園のトイレ (笑) だが、F2.8開放で適度にぼけるので、郊外のおしゃれなレストランのようにも見える。二線ボケが出やすいシーンだが、実に自然で穏やかな後ボケだ。
出目金レンズで今までに見たことのない逆光への強さ
前玉が突出した出目金レンズの多くは、太陽を画面のど真ん中に入れると、同心円状のゴーストが生じてしまうが、「FE 12-24mm F2.8 GM」はその心配はなし。光源の位置によっては淡いゴーストが生じることもあるが、これほど逆光に強い広角レンズは見たことがない。
まれにゴーストが発生するケースでもごく軽微
逆光でもほとんどゴーストやフレアが目立たないレンズだが、あえてゴーストが目立つシーンを探して撮影したのがこの写真。強い光源が画面から少し外れた位置にあると淡いゴーストが発生するが、背景が明るいとほとんど気づかないレベルだ。
12mmでF2.8は夜の撮影で重宝する
開放F2.8の明るさを生かし、地明かりで夜桜を撮影。橋の手すりにカメラを置いて半固定で撮影しているが、開放F4のレンズなら感度か露光時間を倍にする必要があり、高感度ノイズが増えたり、手ブレ・被写体ブレのリスクが高くなる。12mmでF2.8という明るさは魚眼を除けば唯一無二の存在だ。
※参考価格は記事執筆時点の量販店価格です。