伊達淳一のレンズパラダイス『CAPA』2021年9月号 Other Shots
伊達淳一カメラマンがさまざまなレンズを使い倒しレビューする『CAPA』本誌人気連載の「レンズパラダイス」。2021年9月号の「レンズパラダイス」Other Shotsは、小型軽量で人気のパナソニック「LUMIX S5」+「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」との組み合わせに最適な「LUMIX S 50mm F1.8」と「LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.」をピックアップ。思いのほか高い描写力に注目だ。
LUMIX S 50mm F1.8
ピント面ににじみはなく、後ボケもキレイ
ひまわりガーデン武蔵村山にて。見ごろを少し過ぎていたので、まだフレッシュで元気なひまわりを探し、絞り開放で背景を大きくぼかし、フワッと浮き立たせてみた。絞り開放でもピント面ににじみはなく、コントラストの高い描写で、口径食もあまり目立たず、キレイな後ボケだ。
ぼけたヤマユリの輪郭に色づきがない
久々の多摩動物公園に出掛けたら、あちらこちらにヤマユリがキレイに咲いていた。絞り開放で左右の手前の花にピントが合うように、撮影ポジションを探して撮影。軸上色収差が少なく、後ボケになった白いヤマユリの輪郭に色づきがなく気持ちのいい描写だ。後ボケもなめらかだ。
絞り開放からキレのある解像
横浜関内猫カフェMiysisにて。フルサイズミラーレス用としては小型軽量なレンズにもかかわらず、絞り開放からキレの良い解像で、軸上色収差も少ないので、猫のヒゲや毛並みのボケに色づきはほぼ感じない。ポートレート撮影距離でのボケ味も良く、子どもやペットの撮影にピッタリなレンズだ。
暗くても高速シャッターが確保でき安心
同じく横浜関内の猫カフェMiysisにて。かなり明るく見えるが、実際は窓から一番離れた奥まった場所で、照明もそれほど明るくない (しかも後ろはフリッカー光源)。しかし、F1.8の明るさがあれば、それほど感度を高くしなくても、手ブレしにくいシャッタースピードを確保できる。
前ボケの猫の毛並みがザワつかず好印象
横浜関内の猫カフェMiysisで、お客さまのお膝でくつろぐ仔猫に、先輩猫が近寄ってきた。猫のヒゲや毛並み、膝にかけたブランケットを見れば、前後のボケ味がよくわかるはず。特に左の先輩猫が前ボケになっているにもかかわらず、毛並みがそれほどザワついていないのは好感が持てる描写だ。
4730万画素のS1Rにも堪えうる解像力
約4730万画素の「LUMIX S1R」でも開放描写をテスト。S1R自体、それほどシャープネスを強調しない画作りということもあり、カリカリにエッジ立つほどの解像とコントラストではないが、ピクセル等倍で見ても周辺までしっかり解像していて、とても絞り開放とは思えない安定した遠景描写だ。
あまり寄れないのが少し残念
原稿書きが終わった自分のご褒美に、蔵前のグルメバーガーショップで月替わりのスペシャルバーガーを注文。本当はもう少し寄って撮影したいところだが、最短撮影距離が45cmなので、小物などをテーブルフォトで撮影するには、思うように寄れないのが弱点。ただ、近接撮影時もにじみはなく、非常に整った解像とボケが得られるレンズだ。
厳しい条件でも前後のボケの色づきは目立ちにくい
通常の撮影では軸上色収差が気になることはまずないが、このカットのように輝度差が極めて大きな境界部分には、前ボケにパープル、後ボケにグリーンのフリンジが多少出る。ただ、開放F1.8でこれだけコンパクトなレンズで、近接撮影でもにじみが出ず、前後のボケに色づきが目立ちにくいレンズは希少だ。
深い深度が必要な場面以外は絞らないでOK
手前の端が大きくぼけすぎないように少しだけ絞って撮影。絞り開放の解像が良すぎるので、絞ったからといって驚くほど解像が向上するわけではない。深い被写界深度を必要としない限りは、特に絞って撮影する必要を感じないレンズだ。
LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.
S5との組み合わせならば片手だけでもなんとか構えられる
東京オリンピック2020開催を記念して、カラースモークで編隊飛行するブルーインパルス。見物客も入れたワイドの動画も残したかったので、延長ロッドを装着した「DJI Pocket 2」を左手に持ちながら、70-300mmズームを装着した「LUMIX S5」を右手で構えながら連写した1カット。望遠ズームとしてはそれほど重くないので、S5との組み合わせなら片手だけでもなんとか構えられる。
前後の微ボケも比較的滑らか
ひまわりガーデン武蔵村山にて。満開のピークを過ぎてお辞儀しているひまわりが多かったが、咲いたばかりで、まだ元気いっぱいな個体を望遠で切り取ってみた。ピントはひまわりの真ん中で、蜜を集めている蜂がシャープに描写されている。前後の微ボケも比較的滑らかで自然だ。
花を浮き立たせるのに望遠ズームは便利
多摩動物公園に咲いていたヤマユリを望遠で切り取ってみた。撮影ポジションを工夫することで背景をシンプルにまとめ、主被写体の魅力をストレートに表現できるのが望遠ズームの便利な点だ。手前の花の雄しべにガチピンが来るよう、ピンポイントAFでピントを合わせている。
最短撮影距離が短いのが魅力で、しかも解像も高い
レンズ名に「MACRO」という文字が入っているように、最短撮影距離が、ワイド端で0.54m、テレ端で0.74mと非常に短く、テレ端では最大撮影倍率1/2倍のクローズアップ撮影ができるのが特徴。このカットはそこまでの近接撮影ではないが、最短撮影距離を気にせず、思う存分被写体に寄れて、解像とコントラストも高いのが魅力だ。
前ボケより後ボケが少し硬め
ピント面の解像と前後の微ボケを約4730万画素の「LUMIX S1R」でチェック。ピント位置が段差で水が流れ落ちている箇所で、絞り開放からキレの良い描写が得られている。前ボケよりも後ボケが少し硬めで、左上の枯れ芝や水面の反射は少し二線ボケ傾向が見られる。
揺らぎが少なく夏にしてはシャープな描写が得られた
足湯しながら羽田に離発着する飛行機を眺められる羽田イノベーションシティの展望台から撮影。フルサイズの300mmだとちょっと望遠不足なので、駐機している機体を入れつつ、都心上空ルートで着陸する飛行機を狙ってみた。夕方で空気の揺らぎも少なくなり、夏にしてはシャープに撮影できている。
周辺減光は目立たず、安定した解像性能
これも羽田イノベーションシティの展望台から撮影したカット。飛行場から離陸する瞬間をそれなりの大きさで撮影するには500〜600mm以上は必要で、70-300mmで大きく撮れるのは、青空バックでヒコーキのお腹。どちらかといえば、飛行場内の展望デッキからの撮影に向いているレンズだ。ただ、青空バックでも周辺減光は目立たず、解像性能も安定している。
手を伸ばしモニターを見ながら撮影
多摩動物公園でサーバルを檻越しに撮影。晴天で檻が光っていて、サーバルは日陰、しかも、サーバルと檻の距離も短いという悪条件だが、EVFを覗かず、両手を伸ばしてモニター撮影することで、カメラと檻の距離をわずかながら縮め、目がクリアになるよう檻を抜いてみた。カメラとレンズがそれほど重くないからできる撮影スタイルだ。
放牧場の手前に出てきたチーターをシャープに再現
多摩動物公園のチーターの子ども。放牧場に出た瞬間で、恐る恐る周囲を警戒しながらご出勤。チーターの毛並みも驚くほどシャープに再現されている。ただ、多摩動物公園のチーターの放牧場は広く、70-300mmズームでアップで撮れるのは、このように手前に来た瞬間のみ。奥の日陰に隠れてしまうと手も足も出なくなる。
多少の高感度なら解像感は低下しにくい
多摩動物公園のレッサーパンダ。70-300mmズームでも比較的アップで撮影できるが、暑さが苦手なので放牧場も日陰エリアで、それなりのシャッタースピードで撮影しようとすると、感度がかなり高くなってしまう。ただ、レンズの解像性能は高いので、多少の高感度であれば解像感は低下しにくい。後ろの白い花のボケを見ると、やはり後ボケは少し二線ボケ傾向だ。
※参考価格は記事執筆時点の量販店価格です。