ニコンFM/FEシリーズと見まごうばかりのデザインで、ZシリーズのAPS-Cニューモデル「Z fc」が登場した。2021年7月の発売以来、人気を集めている軽快な“一眼レフテイスト”のミラーレスカメラを、あらためておさらいしよう。後編ではコンパクトさと使い勝手、そしてキットレンズとカラーバリエーションに着目する。
ニコン Z fc おさらい
- デザイン・ダイヤル操作
- コンパクトさ・使い勝手
- レンズ&カラバリ
ミラーレスならではの薄さが軽快感を生み出す
コンパクトにギュッと凝縮されたサイズのボディで登場した「Z fc」。そこで、同様にクラシカルなデザインの「ニコン Df」と比較してみた。
重厚感が魅力の「Df」、軽快で取り回しがいい「Z fc」
「Df」は一眼レフならではのフランジバックの長さに加え、撮像面から後ろの厚み、ペンタ部の大きさが加わり、全体的にどっしりとした感じが否めなかった。その重厚感も魅力ではあったが、「Z fc」ではミラーレスならではのスレンダーさが生かされ、実に軽快だ。
「Df」はフルサイズのデジタル一眼レフ、かたや「Z fc」はAPS-Cのミラーレスということで、前者が大きくなってしまうのは仕方のないところだ。特に厚さ (奥行き) の部分では、「Df」には一眼レフならではのミラーボックスのスペースが必要であり、「Z fc」はミラーレスの中でも短いフランジバックのZマウント規格のため、その差は大きくなっている。
この薄さにより、「Z fc」は持ったときにフィルムカメラのような軽快感が得られる。コンパクトに設計されたキットレンズと併せて、フィルム一眼を使っていたときの動きやすさを覚える人も多いだろう。
軽々と持てる小さなボディ
フィルム一眼レフよりも薄くて軽い。重さはバッテリーとカード込みで約445gと「Z 50」よりも5g軽い。「FM2」の重さは約540g、「Df」は765g。
バリアングルモニターは「自撮り」にまで対応
使い勝手の部分では、Zシリーズでは初のバリアングルモニターを採用。軽快さを後押ししてくれるように自由なアングルで使えるのは非常にうれしいところだ。もちろん自撮りもOKで、動画撮影機能と併せてVlogにも活用しやすくなっている。
Zシリーズ初のバリアングルモニターを搭載
Zシリーズ初のバリアングルを採用し、モニターサイズは3型のタッチパネル。タッチシャッターやタッチAFもできる。軽量なボディと相まって、手持ちでの自撮りもしやすく、Vlogにも大いに活用できる。
裏面で閉じればよりオールドテイストな外観に
モニターを閉じれば、背面はしぼ革状のテクスチャーに。どこまでも渋いこだわりの外観だ。
エクステンショングリップでホールド感アップ
グリップがないぶんホールディングがちょっと不安という人のために別付けのグリップも用意されている。リモートでの使用は主にスマホとの連携、別売のBluetoothリモコンでの使用となり、「Z 50」と同様にリモートケーブルは使えない。また、ソフトウェア「Webcam Utility」を使えばPCのWebカムとして使えるようになる。
別売のエクステンショングリップ
デザイン上、グリップはないが、専用のエクステンショングリップ「Z fc-GR1」も用意されている。背面まで回り込むグリップで。バッテリーの出し入れにも考慮されている。また三脚穴も備わっている。
バッテリーは「Z 50」と同じく「EN-EL25」
バッテリーは「Z 50」と同じ「EN-EL25」。撮影可能枚数は「Z 50」よりも増え、EVF使用時で約310コマ、モニター使用時で約360コマ。予備も用意したいところだが、年末まで供給が不足するようだ。
「Z fc」にピッタリのクラシックデザイン「NIKKOR Z 28mm f/2.8 (Special Edition)」
クラシックデザインはボディのみではなく、新しいZマウント28mm単焦点レンズにも採用されている。それが「NIKKOR Z 28mm f/2.8 (Special Edition)」だ。MFのAiニッコールを模した外観で、「Z fc」にぴったり。フルサイズ相当で42mmと、ちょっと広角気味というのもスナップ撮影用には使いやすいだろう。このレンズはフルサイズ (FX) 対応レンズでもあり、予定されていた通常版よりも先にスペシャルエディション版が登場することになった。
Aiニッコール風のデザインが「Z fc」にマッチする
通常版は開発発表のみだったが、このスペシャルエディションの方が先に登場となった。こちらは「Z fc」のデザインに合わせ、かつてのAiニッコールテイストの外観デザインとなっている。フルサイズ対応なので、FX機にもそのまま使うことができる。「Z fc」とのキットは2021年10月1日に発売済み。単体では11月19日発売予定となっている。
コンパクトな標準ズームがシルバーカラーで登場「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR」
そしてもう1本、「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR」のシルバーカラー版も用意されている。標準ズームが欲しい場合には、こちらのレンズをキットで購入するのがベストの選択。沈胴式なので持ち運びにも便利だ。
評判の高い標準ズームのシルバーバージョン
「Z 50」のキットレンズにもなっているDXフォーマット専用の16-50mmがシルバーの外装で「Z fc」にも用意された。フルサイズで24~75mm相当となる標準ズームで、沈胴式構造により、収納時は非常にコンパクトになり携帯しやすいサイズになる。手ブレ補正機構内蔵なので、ボディ内手ブレ補正機構非搭載の「Z fc」には有利だ。MF時はスムーズな操作感で、ブリージングも少なく動画でも使いやすくなっている。
魅力マシマシのカラバリも用意
購入後サービスとして外カバー (人工皮革部分) の張り替えができる「プレミアムエクステリア」6色を用意。キャンペーン中は無料で貼り替えができる。自分好みの「Z fc」にすれば、愛着もひとしおだろう。
好みに合わせたカラーバリエーションが選べる
用意されているカラバリは全6色で「サンドベージュ」「ミントグリーン」「ナチュラルグレー」「コーラルピンク」「ホワイト」「アンバーブラウン」。購入後、ピックアップサービスなどを使って、一度預けた上で行われる。ニコンダイレクトで購入した場合は、注文の時に指定した色でそのまま購入ができて、手間がかからない。
Zの新しい中心モデルにもなりそうな中級ミラーレスだ
「Z fc」はもちろんZマウントの仕様なので、すでに販売されているZマウントレンズ、さらにはマウントアダプターFTZを介してFマウントレンズも使え、新旧さまざまなレンズで存分に遊べそうだ。フルサイズZシリーズのサブ機としても有力だろう。
価格の面でも、レンズキットで15万円前後と手ごろ。しかも、扱いやすくコンパクトなミドルクラスということもあって、マニアから女性まで、より多くの人にアピールするカメラに仕上がっている。
Fマウント&Zマウントの交換レンズで楽しみが広がる
マウントは通常のZマウントなので、Zマウントレンズはもちろんのこと、「マウントアダプター FTZ」を使えばFマウントレンズ、AF-SニッコールであればAFでも使うことができる。ただし撮像素子はDXフォーマットなので焦点距離は1.5倍相当となる。MFのFマウントオールドニッコールなどを使うときには拡大表示やピーキングを活用すればピント合わせも楽だ。
ニコン Z fc
発売日
ボディ、Z fc 16-50 VR SL レンズキット : 2021年7月23日
Z fc 28mm f/2.8 Special Edition キット : 2021年10月1日
参考価格 (税込)
ボディ : 129,800円
Z fc 16-50 VR SL レンズキット : 149,600円
Z fc 28mm f/2.8 Special Edition キット : 159,500円
マウント ニコンZマウント
撮像素子 2088万画素APS-CサイズCMOSセンサー
AF 209点ハイブリッドAF (像面位相差・コントラスト)
瞳AF 人物・動物
連続撮影性能 最高約11コマ/秒
ファインダー 約236万画素 倍率約1.02倍
動画性能 4K UHD 30P
大きさ (幅×高さ×奥行き) 約134.5×93.5×43.5mm
重さ 約445g
※参考価格は記事執筆時点の量販店価格です。
〈製品撮影〉青柳敏史