マウントアダプターが今、大きな進化を遂げている。一昔前までは、マウントをただ変換するだけのものだったが、ミラーレスカメラの台頭とともにAFやAEなどの電子制御が可能なものが続々と登場。AFスピードや手ブレ補正の効き、MFレンズをAFレンズに変えてしまう製品の実力など、徹底的に使い倒してみた。前編ではフィルター内蔵タイプと、MFレンズでAF撮影を可能にするマウントアダプターを紹介する。
- もはや変換だけじゃない!
- AFや手ブレ補正は使えて当たり前!?
「変換だけ」はもう古い! マウントアタプターの進化が止まらない
マウント面から像面までの長さ=フランジバックの違いを利用してマウントの異なるレンズとカメラをつなぐアクセサリーがマウントアダプター。フランジバックの短いミラーレスカメラでは注目度の高いアイテムだ。なかでも、カメラとレンズ間の情報通信のための電子接点を備えたスマートアダプターと呼ばれるタイプの高性能化、高機能化が見逃せない。
最近ではキヤノンの「ドロップインフィルター マウントアダプター EF-EOS R」にならったサードパーティー製マウントアダプターが登場。キヤノンEFマウントレンズとキヤノンRF、ソニーE、ライカL、富士フイルムXなどのマウントのカメラの組み合わせでC-PLや可変式NDフィルターが利用できるのが特徴だ。それなりに高価にはなるものの、フロントフィルターをサイズごとに何枚も買いそろえるよりはトータルでの出費が抑えられるのが魅力と言える。
C-PLフィルター内蔵の「Commlite CM-EF-EOSR VCPL」(EF → RF)
C-PLフィルターを内蔵したコムライトのキヤノンEF/EF-S → キヤノンRFマウントアダプター。電子接点も装備しているのでAFやAEはもちろん、手ブレ補正にも対応する。ただし、交換用のノーマルフィルターはないようだ。参考価格14,850円 (税込)。
ダイヤルを回すと効果が変わる
側面のダイヤルを回すと内蔵のC-PLフィルターが回転。ミラーレスカメラは一眼レフと違って画面が暗くならないのがメリットだ。
フードがじゃまにならず調整できる
水面に咲くスイレンの花を撮影するには水面や葉の反射のコントロールが重要。マウントアダプターはレンズ手前で効果を調整できるので、フードなどがじゃまにならず快適。
可変ND内蔵の「Fotodiox EF-SNE-FSN-NDT II」(EF → E)
可変式NDフィルターを内蔵したフォトディオックスのキヤノンEF/EF-S → ソニーEマウントアダプター。効果の調整リングはフォローフォーカスアクセサリーに対応。本格的な動画撮影にも活用できる。AFやAE、手ブレ補正にも対応する。参考価格32,940円 (税込)。
減光効果は2~8段分。調整リングを回すだけで効果を変えられるので、素早いセッティングが可能だ。
最小 (ND4) |
最大 (ND256) |
ND効果は自在に調整可能
手前の花をぼかしながら噴水は適度に流したいとき、NDフィルター内蔵のマウントアダプターは便利。シャッタースピードを見ながら濃度を調整して撮影した。
効かせすぎるとムラが発生
効果を強くしすぎると部分的な色ムラや色カブリが生じることがあるので要注意。より高い減光効果が必要な場合は、前枠にNDフィルターを追加する。
作例の共通データ
ソニー α9 II Fotodiox EF-SNE-FSN-NDT II + EF24-105mm F4L IS USM 絞りF4 1/3秒 ISO400 WB : オート
MFレンズでAF撮影ができる! オールドレンズもAF化
電動の繰り出し機構を内蔵したAF化マウントアダプターも増えつつある。MFのライカMマウントレンズでAF撮影が行なえるだけでも値打ちがあるうえに、別のマウントアダプターを重ね付けすることで古今のMF一眼レフ用レンズのAF化までもが可能になるのだから楽しい。
マウントアダプター側の繰り出し量に限りがあるので、レンズ側でアバウトにピントを合わせておく必要はあるが、MFだけでやるよりも素早くかつ高精度にピントを合わせられるのは大きなメリットと言える。
手ブレ補正も効く「TECHART TZM-01 + K&F Concept KF-NFM セット」(ニコンF →ライカM → ニコンZ)
ニコンZボディでライカMマウントレンズをAF化できるテックアートの「TZM-01」とK&FコンセプトのライカM用マウントアダプターを併用すれば、MFのオールドレンズでAF撮影が楽しめる。レンズ焦点距離を設定することでボディ内手ブレ補正も利用できる。参考価格45,100円 (税込)。
MFマクロレンズでもAFが使える
懐かしいマクロレンズを持ち出してみた。マクロ域ではある程度自分でピントを合わせたあと、AFを動作させるとピントが合わせやすい。昔のニッコールらしい描写が手ブレ補正機能付きで楽しめる。
USB DOCKのUSB端子でファームアップも可能
リアキャップとしても使えるUSB DOCKを介してパソコンに接続することで「TZM-01」のファームウェアアップデートが可能。最新のものに更新すると動作の安定性向上などが期待できる。
ニコンFマウントをソニーEマウントへ「TECHART LM-EA7 + K&F Concept KF-NFM セット」(ニコンF →ライカM → ソニーE)
「TZM-01」同様、ライカMマウントレンズをAF化してソニーEマウントのカメラに装着できるテックアートの「LM-EA7」。モーター部に干渉しないことを確認済みのK&Fコンセプト製マウントアダプターがセット販売されていて、オールドレンズでのAF撮影が可能だ。参考価格45,630円 (税込)。
MFレンズでAF撮影ができるありがたさ!
昔よく使っていたMFレンズでAFが使えるというのはちょっと奇妙な感覚だが、慣れてくるととても便利。速度こそいまのAFには及ばないが、エリアAFなどの機能も普通に使える。
「TZM-01」や「LM-EA7」は内蔵モーターでレンズ側マウントを前後に動かしてピントを合わせる方式。そのため、装着したレンズがMFタイプでもAFが可能だ。赤枠で囲んだ部分が前後に動く。
ライカMマウントレンズをニコンZマウントへ「Megadap MTZ11」(ライカM → ニコンZ)
ライカMマウントレンズをAF化してニコンZマウントのカメラに装着できるメガダプのマウントアダプター。こちらも装着レンズの焦点距離設定でExif情報の記録やボディ内手ブレ補正が可能だ。参考価格41,940円 (税込)。焦点工房オンラインストアではK&Fコンセプト製マウントアダプターとセットで購入できる。
焦点工房オンラインストアでは「TZM-01」と各社旧マウント対応のK&Fコンセプト製のマウントアダプターをセット販売 (税込 44,000円~46,500円)。「TZM-01」は下部にモーターユニットがあるため、併用するマウントアダプターの形状によって取り付けができない場合があるが、セット販売のものは干渉がないことが確認されているので安心。「LM-EA7」とのセット販売 (税込 44,611円~47,300円) や「MTZ11」とのセット販売 (税込 42,980円~44,280円) もある。
※参考価格は、記事執筆時点の焦点工房オンラインストア価格です。
〈解説〉北村智史
〈製品撮影・作例撮影・解説〉青柳敏史