伊達淳一のレンズパラダイス『CAPA』2021年3月号 Other Shots
伊達淳一カメラマンがさまざまなレンズを使い倒しレビューする『CAPA』本誌人気連載の「レンズパラダイス」。2022年3月号の「レンズパラダイス」Other Shotsは、驚くほど小さく軽く、それでいて価格も手ごろなキヤノンの超広角レンズ「RF16mm F2.8 STM」と超望遠ズームレンズ「RF100-400mm F5.6-8 IS USM」。「EOS R5」と組み合わせて描写性能をチェックした。
キヤノン RF16mm F2.8 STM
スペック
[マウント] キヤノンRFマウント [最大径×長さ] 約φ69.2×40.2mm (収納時) [重さ] 約165g [レンズ構成] 7群9枚 [最短撮影距離] 0.13m [最大撮影倍率] 0.26倍 [絞り羽根枚数] 7枚 [フィルター径] φ43mm参考価格 41,800円 (税込)
標準ズームでは入りきらない広角撮影が手軽に楽しめる
手のひらサイズのコンパクトでお手ごろ価格のレンズだが、標準ズームのワイド端では入りきらない広い範囲も画面に収められるのが特徴。輝度差の大きな境界部に少し色にじみが生じるが、周辺部でも解像の大きな乱れはなく安定した描写だ。
周辺部まで画質は安定している
絞っても劇的に解像性能が向上するわけではなく、いわゆるエッジ立った解像とまではいかないが、そのぶん偽色やジャギーなどデジタル特有の不自然な描写はなく、周辺部まで安定した描写が得られている。
広角レンズとして後ボケは穏やかで自然
超広角レンズは、標準ズームよりもパースペクティブ (遠近感) を強調したダイナミックな構図で撮れるのが特徴。ローポジション気味にカメラを構え、バイクを斜め後ろから撮影することで、バイクの後輪をより大きく見えるように撮影してみた。拡大箇所は画面左上の被写界深度外で、超広角レンズの後ボケとしては穏やかで自然だ。
小型軽量なので下からのアングルもらくらく楽しめる
小型軽量なレンズなので、バリアングルモニターを使って、ファインダーを覗きながらでは難しいアングルからの撮影も、片手でらくらく楽しめる。フォーカス駆動はSTMなのでそれほど速くはないが、サーボAFで追従させながら徐々に距離を縮めていくとスムーズに撮影できる。
最短撮影距離13cm、寄れるのも特徴
開放F2.8と明るく、最短撮影距離が13cmと、かなり寄れるのが特徴。絞り開放で近接撮影すれば、超広角レンズでも背景をぼかしピントを合わせた被写体を浮き立たせることが可能だ。ピント面のにじみは少なく、後ボケは柔らかだ。
片手を伸ばした下からの撮影も軽量だからこそ成せる技
らせん階段を真下から撮影。被写界深度を深くしてパンフォーカスで撮影するためF10まで絞っているが、ピクセル等倍で見ても周辺までキリッとシャープな描写だ。らせん階段の真下はパイロンで入れなかったので、片手を伸ばした状態でカメラを上向きにして撮影しているが、これもレンズが軽量だから成せる技だ。
小型軽量な広角レンズとは思えない点光源描写
江の島サムエル・コッキング苑のシーキャンドル。焦点距離16mmでも画角不足を感じるシチュエーションだが、なんとか横位置でも地平線と展望台を収められるポジションを探し出し手持ちで撮影。わずかにコマ収差の影響で点光源がくさび状に変形しているが、これだけ小型軽量で廉価なレンズの絞り開放としてはかなり優秀な部類だ。
薄暗い夜景撮影も手持ちでこなせる
江の島サムエル・コッキング苑のイルミネーション。今シーズンは、小さなLED球を数多く散りばめた星の海のような演出で、建物を直接照らすライトアップはなく、これも地灯りで撮影したもの。かなり暗かったが、ISO6400の高感度、開放F2.8の明るさ、「EOS R5」のボディ内ISの合わせ技で、なんとか手持ちでも撮影できた。
見上げるようなヤシの木も広角だからこそ画面に収まる
縦位置で撮影すれば、見上げるようなヤシの木のイルミネーションも地上のイルミネーションと一緒に収められる。16mmの超広角レンズならではの強みだ。ヤシの木と展望台をパンフォーカスで撮るには、それなりに絞り込む必要があるが、あまり感度を上げたくなかったのでF4で撮影。展望台は少しピントが緩いが、実用的には被写界深度内といえるだろう。
肉眼で見るより幻想的な仕上がりに
江の島サムエル・コッキング苑のウィンターチューリップ。写真ではかなり明るく見えるが、チューリップのライトアップはなく、点在しているLED点光源からの地灯りのみという極めて暗い状況。それでも明るく照らされた花でピントを合わせ、感度を上げ絞り開放で撮影してみると、肉眼で見るよりも幻想的な光景に仕上げられた。