伊達淳一のレンズパラダイス『CAPA』2022年6月号 Other Shots
伊達淳一カメラマンがさまざまなレンズを使い倒しレビューする『CAPA』本誌人気連載の「レンズパラダイス」。2022年6月号の「レンズパラダイス」Other Shotsは、お手ごろな価格設定の開放F2.8標準ズームの2代目となる「タムロン 28-75mm F/2.8 Di III VXD G2」と、世界初の開放F2スタート望遠ズーム「タムロン 35-150mm F/2-2.8 Di III VXD」をピックアップ。解像性能とボケ描写をチェックしてみた。
タムロン 28-75mm F/2.8 Di III VXD G2
スペック
[マウント] ソニーEマウント [最大径×長さ] φ75.8×117.6mm [重さ] 540g [レンズ構成] 15群17枚 [最短撮影距離] 0.18m (ワイド時) [最大撮影倍率] 0.37倍 (ワイド時) [絞り羽根枚数] 9枚 [フィルター径] φ67mm参考価格 104,500円 (税込)
花の輪郭一つ一つまでクッキリ解像
信州・須坂の園里郷土資料館と桜をワイド端で撮影。手前と奥の桜を被写界深度でカバーできるよう、2段ちょっと絞って撮影しているが、ピクセル等倍でも一つ一つの花まで輪郭がクッキリ写っていて、にじみや色ズレは一切感じない。
柔らかなボケ描写と高い解像性能を見事に両立
ワイド端28mmスタートという制約はあるものの、F2.8開放の大口径標準ズームとしては小型軽量でお手ごろ価格。しかも、絞り開放からにじみのない解像が得られ、それでいて微ボケは硬すぎず、ある程度ぼければ実に柔らかだ。ボケと解像性能を見事に両立した標準ズームだ。
近接撮影時の微ボケはにじみ気味で柔らか
このレンズは最短撮影距離が短く、テレ端は38cmと平凡なスペックながら、ワイド端はなんと18cmまで寄れる。この特徴を生かし、整然と並んで咲き誇るチューリップを虫の目線的にローアングルで撮影してみた。近接撮影時は微ボケがにじみ気味で柔らかく、うるさいボケにならないのはボク好みだ。
柔らかい微ボケとピント面の解像は絶妙なバランス
白い花びらの一部がピンクになっているのが面白かったので、テレ端の最短撮影距離付近まで寄って絞り開放で撮影。解像とコントラストは遠景撮影よりも落ちる印象を受けるが、むしろ微ボケは柔らかく、それでいてピント面の甘さは感じない絶妙なバランスだ。
最短撮影距離付近では解像やコントラストは低下気味
テレ端の絞り開放でハナニラを撮影。最短撮影距離手前なので被写界深度が非常に浅く、背景が大ボケしている。さすがに、解像やコントラストは少し低下気味で、花びらの輪郭に軸上色収差による色にじみも認められる。しかし、カリカリのマクロレンズよりも個人的には好きな描写だ。
少し縁取り感はあるもののきれいな玉ボケに
背景の川面に反射した光がキラキラと光り、桜の花も半逆光で輝いていたので、ズーム中域で切り取ってみた。ピント位置は画面中央から少し右側の桜の枝で、絞り開放で撮影しているので水面の反射も、少し縁取り感はあるが、非球面レンズ起因の輪線ボケも目立ちにくく、きれいな玉ボケになっている。
背景のボケはザワつかずとても滑らか
絞り開放から解像とコントラストが高いと、微ボケの輪郭がクッキリし過ぎ、そこにカメラの輪郭強調も加わって、非常にザワザワとしたボケになりやすい。しかし、このレンズは、解像とコントラストが必要以上に高すぎないので、非常にボケが滑らかなのが魅力だ。
ゴーストは出にくく悪目立ちしない
信州・高山村の黒部のエドヒガン。逆光でもそれほど悪目立ちするゴーストは出にくいが、ハーフNDなど角形フィルターを装着すると、太陽の光が強い時間帯には、前玉に反射した光がフィルターで再反射する。そのため、このカットは、強力にシャドー部を持ち上げるDRO [Lv5] で撮影している。
フレアも少なく、花の輪郭が適度ににじんで美しい
ワイド端の最短撮影距離付近でムスカリを撮影。画角のすぐ外に太陽がある強い逆光だが、フレアはそれほど多くはなく、ゴーストも出ていない。光が当たったムスカリの花の輪郭 (ここは微ボケエリア) が適度ににじんできれいだ。
均一の解像が得られるが片ボケになってしまった謎な現象
横浜大桟橋に停泊中の飛鳥IIとみなとみらいを三脚撮影。このカットをよく見ると、ピント面は右は奥、左は手前になっていて、いわゆる片ボケ状態。といって、常に片ボケになるわけではなく同じ焦点距離でも見事に均一な解像が得られることもある。ちょっと謎な現象だ。