機材レポート

手持ち撮影が苦にならない軽さのニコン超望遠レンズを実写チェック! NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S

伊達淳一のレンズパラダイス『CAPA』2023年1月号 Other Shots

NIKKOR Z 17-28mm f/2.8 実写チェック
ニコン Z 9 + NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S (奥)、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8 (手前)

伊達淳一カメラマンがさまざまなレンズを使い倒しレビューする『CAPA』の人気連載「レンズパラダイス」。2023年1月号の「レンズパラダイス」Other Shotsでは、開放F値をそれぞれF2.8、F4.5としつつ、小型軽量化によって携行性を高めた「NIKKOR Z 17-28mm f/2.8」と「NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S」の描写性能をチェックしてみた。

後編では、「NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S」の描写を実写作例で見ていこう。

目次

  1. NIKKOR Z 17-28mm f/2.8 実写チェック
  2. NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S 実写チェック

NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S

NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S 実写チェック

スペック
[マウント] ニコンZマウント [最大径×長さ] 約φ104×234.5mm [重さ] 約1160g (三脚座なし) / 約1245g (三脚座を含む) [レンズ構成] 13群19枚 [最短撮影距離] 2.5m [最大撮影倍率] 0.16倍 [絞り羽根枚数] 9枚 [フィルター径] φ95mm

参考価格 451,000円 (税込)

単焦点レンズならではの鋭い切れ味

都市公園の池に浮かんだ落ち葉がカラフルで、“ここにカルガモが浮かんでくれると晩秋らしさが演出できるのになぁ” と待ち続けたかいがあって、狙い通り落ち葉とカルガモのコラボを撮影できた。一般的な超望遠ズームよりも開放F値が2/3段は明るく、これだけ至近だと被写界深度は非常に浅く、目にピントを合わせるとくちばしは微妙にぼけている。キレの良さはさすが単焦点レンズだけのことはある。

NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S 実写チェック
ニコン Z 9 NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S シャッター優先オート 1/1000秒 F4.5 ISO4000 WB : 自然光オート
NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S 実写チェック
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ワンちゃんの毛並みの描写は繊細で微ボケもスムーズ

障害馬術競技を撮影中に観客席を振り返ると、ワンちゃんも馬術競技を観戦!? 「Z 9」の動物瞳AFまかせで撮影してみたが、ワンちゃんの手前の目にほぼズバっとピントが来ていて、ちょっと曇りがちな空やおそらく撮影しているボクの姿も、目の中に写り込んでいる。毛並みの描写も非常に繊細で、微ボケもスムーズだ。

NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S 実写チェック
ニコン Z 9 NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S シャッター優先オート 1/1250秒 F4.5 +1.0補正 ISO5000 WB : 自然光オート
NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S 実写チェック
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感度を上げずに済むので解像低下を抑えられる

都市公園の池に浮かぶマガモ。単焦点でもズームでも同じ400mmなので、「NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S」よりも遠くの被写体をアップで写せるわけではないが、開放F値が2/3段明るいのは強み。そのため同じシャッタースピードなら2/3段感度を落とすことができ、高感度NRによる解像感低下を抑えられる。悪条件ほど単焦点レンズのメリットが生かせる。

NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S 実写チェック
ニコン Z 9 NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S シャッター優先オート 1/800秒 F4.5 +0.3補正 ISO3200 WB : 晴天
NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S 実写チェック
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F8の撮影では機体のリベットまでクッキリ解像

ヘリのローターを止めるんじゃねぇ! と怒られそうだが、1/400秒まで落として撮影。シャッター優先オートで撮影しているので絞りはF8まで絞られていて、青空バックでも周辺光量低下はほぼ皆無。ヘリの機体の文字やリベットまでクッキリ解像しているので、高画素機ならAPS-Cクロップ撮影が有効だ。

NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S 実写チェック
ニコン Z 9 NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S シャッター優先オート 1/400秒 F8 -0.3補正 ISO100 WB : 自然光オート
NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S 実写チェック
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キンクロハジロのくちばしなどの前ボケは自然な描写

都市公園に浮かぶ水鳥と紅葉をなんとか絡めようと頑張ってみたが、水面に紅葉が映り込むポジションには来てくれず悪戦苦闘。雲がかなり厚くなってきて、開放F4.5でもISO6400の高感度撮影を強いられる明るさになってきて、この大きさだと羽根の細部はほとんど解像しない。上部のモミジ、キンクロハジロの黄色い目やくちばしのボケは、前ボケとしては自然だ。

NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S 実写チェック
ニコン Z 9 NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S シャッター優先オート 1/1250秒 F4.5 ISO6400 WB : 自然光オート
NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S 実写チェック
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馬の毛並みを高い解像とコントラストで再現

御殿場市馬術・スポーツセンターにて。世田谷の馬事公苑が閉鎖されて以来、初めての馬術競技観戦だ。前日の雨でぬかるんだ馬場を走る馬が跳ね上げる泥や、逆光で光る馬の毛並みがきれいだったので、ワイドエリアLで馬の後ろ姿を狙ってみた。ヨンニッパのような大ボケにはならないが、撮影距離がこれくらい遠くても、ある程度背景をぼかして主要被写体を浮かび上がらせることができる。解像とコントラストの高さも抜群だ。

NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S 実写チェック
ニコン Z 9 NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S シャッター優先オート 1/4000秒 F4.5 ISO800 WB : 自然光オート
NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S 実写チェック
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日の当たるたてがみは細い線まできっちり解像

■Z TELECONVERTER TC-1.4x 使用

競技が始まるのを待つ馬の列を望遠で切り取ってみた。観客席からでは望遠不足だったので1.4倍テレコンを装着し、560mm F6.3にして撮影。低コントラスト域の解像が少し甘くなった気もするが、ISO5600と感度も高くなっているので、高感度NRの影響もそれなりにはあるのだろう。日が当たっているたてがみは、細い線までしっかりと解像できている。

NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S 実写チェック
ニコン Z 9 NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S+Z TELECONVERTER TC-1.4x シャッター優先オート 1/3200秒 F6.3 +0.3補正 ISO5600 WB : 自然光オート 1.4倍テレコン使用 (560mm相当)
NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S 実写チェック
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細部は不鮮明だが許容範囲の解像感

■Z TELECONVERTER TC-1.4x 使用

貸出レンズが到着してすぐに近くの川に出撃。カワセミを探してポイントを何往復もするものの、最近はカワセミどころかコサギも少なく、野鳥撮影の常連さんもほぼいない状況。やっと見つけたカワセミもかなり遠く、1.4倍テレコンを併用して560mmにしてもこのサイズ。カワセミの羽根の細部は潰れて不鮮明だが、決してボヤボヤではないのでなんとか許せる解像感だろう。

NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S 実写チェック
ニコン Z 9 NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S+Z TELECONVERTER TC-1.4x シャッター優先オート 1/400秒 F6.3 +1.3補正 ISO3600 WB : 自然光オート (560mm相当)
NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S 実写チェック
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ISO18000ともなれば解像はやや不鮮明に

■Z TELECONVERTER TC-2.0x 使用

近くの川で2倍テレコンを装着してカルガモをド・アップで撮影。拡大再生してみると細部が不鮮明で、やっぱり2倍テレコンは使えないのかなと思ったが、撮影データで感度を確認するとなんとISO18000と5桁ISO。さすがにこの感度になると高感度NRがかかりまくるので、「DxO PureRAW 2」などを使って解像重視の現像を行ないたいところだ。機材が到着してすぐに出撃したため、このカットはJPEG記録のみだった。残念!

NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S 実写チェック
ニコン Z 9 NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S+Z TELECONVERTER TC-2.0x シャッター優先オート 1/640秒 F9 ISO18000 WB : 曇天  (800mm相当)
NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S 実写チェック
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撮影条件が良く2倍テレコン使用とは思えない解像が得られた

■Z TELECONVERTER TC-2.0x 使用

そろそろ日も暮れるので撤収しようと引き返す途中、茂みの隙間から青い物体が見えた。そっと近づくと、まるで仕掛けたような止まり枝にカワセミが! しかも幸運なことに日が当たらなくなるまでこの枝に15分近く留まり続けてくれた。撮影ポジションは限られていたが、撮影距離が短く、日が当たってコントラストも高かったので、2倍テレコン使用とは思えないほど高解像な描写が得られている。レンズも軽いので、足を使って被写体を探せるのも強みだ。

NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S 実写チェック
ニコン Z 9 NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S+Z TELECONVERTER TC-2.0x シャッター優先オート 1/200秒 F9 -0.3補正 ISO1250 WB : 晴天 (800mm相当)
NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S 実写チェック
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※参考価格は記事執筆時点の量販店価格です。