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【花撮影の基本⑤】「ピントが合わない!」花撮影の大敵

春夏秋冬、いつでも被写体として私たちを楽しませてくれる「花」。撮影する際、「こんな風に撮りたい!」とイメージするかと思いますが、それを写真で再現するためには、カメラ操作における基本的な知識やテクニックが必要になってきます。基本的な撮影のコツを押さえておきましょう。

 

 

花撮影で多いクローズアップの大敵が「ピントのズレ」です。アップになるほど被写界深度が浅くなるため、ピント合わせはとてもシビアになります。マクロレンズで思い切りクローズアップすると、ピント位置が数ミリずれただけでピンボケに見えてしまうこともあるのです。ピント合わせは、基本的にはオートフォーカス(AF)でOK。ただし、帰宅後にパソコンで見たらピントがずれていたということがないよう、撮ったその場でピントの確認を行いましょう。
ピントを合わせる位置が小さいか細くて、うまくAFで合わないときは、ライブビューを使い、画面の一部を拡大しながらMFでピントを合わせます。その際、三脚を使用してカメラを固定すると、より厳密なピント合わせが可能になります。デジタルカメラならではの機能なので、ぜひ活用してください。

 

 

三脚使用時はライブビューの拡大表示を使って厳密に合わせる

ライブビューでは、画面の一部を拡大表示することができ、背面モニターいっぱいにピント位置を映し出せる。ルーペでのぞいたように拡大され、それを見ながらピント合わせを行えば正確さが増す。高い倍率で拡大されるので、三脚に据えていないと画面が大きく揺れて画像が見にくくなる。

 

ピント位置を拡大表示してMFで合わせるのがベター

ライブビュー画面上からシベの部分だけを拡大した。MF を使って、慎重にピントのピークをつかんでいく。この際、ぼけた状態で拡大するとどこを狙っているのかわかりにくいので、おおよそピントを合わせた状態から拡大するといい。

120ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 1/250秒) +1.3補正 ISO200 WB:晴天

 

AF時はフルタイムマニュアルの活用でピント精度を高める

AF で合わせた後、しっかり合っているかどうか拡大してチェック。ずれているときは MF で微調整を行おう。フルタイムマニュアルならスイッチ操作なしでAF からMF に切り替えられるので操作がスムーズだ。

 

手持ち撮影の場合は体を前後に揺らしてピントの微調整を行う

最大撮影倍率付近は、ピントが合う距離と合わない距離の境目になるのでAFが迷いやすい。この場合はMFで操作するのがおすすめ。その際、ピントリングを回しながら合わせるよりも、最も近距離にピント位置を合わせた状態で、体を前後に動かして被写体にピントが合った瞬間にシャッターを切るというやり方のほうがスムーズに合って効果的だ。

 

合焦したと思ったら、すぐにシャッターを切る

カメラを前後に動かしながら被写体がシャープに見えた瞬間にシャッターを切ろう。手持ち撮影では、構えている間にわずかに体が揺れればピントもずれてしまう。1、2 カット撮っただけではピントがずれていることも考えられるので、多めにシャッターを切っておくといい。

120ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 1/400秒) +1.3補正 ISO800 WB:晴天

 

揺れている花でも「AF-C」の活用はNG×

被写体を追いながらピントを合わせ続ける「コンティニュアス AF(AF-C)」。遠くの走る人物や乗り物を撮るにはいいが、カメラは近距離の被写体を追いかけるのは苦手だ。なので、風で揺れている花を撮るのには向かない。風があるときはやむのを待とう。

 

 

具体的な花のピント位置について

●花心が見える場合はシベにピントを

シベが見えるタイプの花はシベの先端に合わせよう。雄シベ、雌シベがはっきりしていれば、雌シベに合わせる。ユリやハイビスカスのようにシベが突出している花は斜めから撮るとシベの先端と花びらの両方にピントが合う。

 

●シベのない(見えない)花は手前の花びらに

花弁(花びら)でシベが見えないタイプの場合は花びらに合わせる。しかも、奥の花弁ではなく、手前の花弁に合わせるのが自然だ。チューリップでは花びらの先端にピントを合わせるといい。

 

●小さな花が固まっている花は手前の花に合わせる

ナノハナ、フジ、アジサイなど、小さな花が集まってひとつの塊となっているタイプは、手前の一輪に合わせる。輪郭に合わせると、中央がぼけてしまうので NG。サクラも枝先の房を狙う場合はこのパターンが当てはまる。

 
●花畑は画面の手前から1/3のところに

奥行きのある花畑は、手前から 1/3ぐらいのところに合わせると手前がややぼけて、奥が大きくぼけるので自然な奥行きが出せる。奥にピントを合わせて手前に前ボケを作るという応用パターンもある。

 

 

写真を撮るとき、「カメラのピントが合わない!!」ということがよくあります。少しのコツさえつかめれば、クローズアップしてもボケていないシャープな花々が撮ることも可能になります。

 

 

写真・解説/吉住志穂