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【日中の展望写真の撮り方②】街並みをバランスよくまとめる構図の選び方

7月に入り、働いている方も、学生さんも、もうすぐ夏休みに入るこの季節。気分転換に旅行される方もおられるかと思います。そんな時、シンボリックタワーや高層ビルから街を見下ろすシーンもあるでしょう。何気なくカメラを向けて見下ろす町並みも、実は撮影テクニックがいくつかありますのでご紹介します。

 

 

ただ漠然と広い風景を切り取ることはやめましょう

日中の展望風景は、展望室のほか、山や丘の上、橋、歩道橋といった場所からも撮ることが可能です。とはいえ、これらの場所はどれも、撮影者が動き回れる範囲に制約があり、一般的な風景撮影に比べるとカメラアングルやカメラポジションの自由度は低いでしょう。だからこそフレーミングが構図の見栄えを決める重要なカギになります。ただ漠然と広い風景を切り取るのではなく、画面のポイントになる被写体を決め、そのポイントをどこに配置すると効果的なのかを考えて撮影しましょう。

 

基本テクニック

シンボルやランドマークを中心に構図を決める

日中展望撮影でのフレーミングのコツは、画面のポイントになる被写体を見つけ、それを中心にして構図を決めることにある。例えばタワーや競技場、大きな公園など街を代表するランドマークがあれば、それを利用するのが確実だ。それらがない場合は、大きな看板や建物など単にビジュアル的に目立つものでもOKだ。

 




主役をはっきりさせて画面を引き締める

大小さまざまな建物が密集する東京の眺め。上の写真は狙いが絞りきれず、中途半端な印象だ。そこでズームアップし、遠景に見える富士山を頂点に置いたうえで、富士山に向かって連なる高層ビル群という狙いで画面を切り取った。これで構図が引き締まった。

241ミリ相当 マニュアル露出(F11 1/50秒) ISO100 WB:オート

 

空と街をつなぐ接点にランドマークを配置

空の面積を広く取ることで、奥行きと開放感を強調。そして、広がる雲の一箇所をピンで突き刺すような形で建つスカイツリーを構図のアクセントとして配置した。スカイツリーのような目立つランドマークはどう撮っても絵になりやすく、画面構成において便利な存在だ。

24ミリ相当 シャッター速度優先オート(F5 1/800秒) ISO100 WB:太陽光

 

 

応用テクニック①

道路や川などの「線」で画面に流れを作る

都会の展望風景はさまざまな建造物で満ちあふれ、一見すると規則性は何もないように思える。だが実は、ところどころに道路や線路、河川といった「線」の要素があり、その線に沿った街並みの流れがある。構図を見栄えよくまとめるには、そうした線を見極め、バランスよく画面に配置することが大切だ。

 



なんとなく切り取っても、構図にまとまりは生まれない。しっかりと風景を見て、道路の両側を中心に高いビルが集まっている点に着目すべきだ。

道路が斜めに横切る構図で捉えて、リズムと奥行きを作り出す

画面の左上から右下へと高速道路が川のように流れる部分を切り取った。この導線によって、雑然と密集しているように見えた風景にリズムと奥行きが生まれた。導線は、対角線上に配置するのが最もバランスよくまとめやすい。

27ミリ相当 絞り優先オート(F8 1/250秒) ISO100 WB:太陽光

 

応用テクニック②

シンボルがないときは見せたい部分を大きく見せる

展望風景の細部をじっくりと観察し、気になる被写体を見つけたら、そこにズームアップして切り取ってみよう。例えば遊園地やプール、競技場、駐車場、公園といった人が多く集まる場所は、上から眺めると造形的に面白いことが多い。雲の影や霧などの自然現象に注目するのもいいだろう。

 

全景を撮ることは基本だが、これだけで終わらせず、部分のクローズアップも撮っておこう。

 

スモッグで覆われた部分にズームアップして幻想的な雰囲気に

右上の全景写真と同じ窓から撮影。スモッグで覆われた遠景の一部をズームアップして切り取ることで、空中都市のようなイメージにまとめた。視界の悪い曇天でも、ポイントさえ絞ればこうした雰囲気のある写真が撮れる。

108ミリ相当 プログラムオート(F5 1/110秒) ISO400 WB:オート

 

都市の模様に注目してカタチの面白さを切り取る

真下が見える展望室の場合は、ズームアップ+ハイアングルの視点が面白い。この写真では、特徴的な形をした階段や花壇、樹木を切り取ることで、後述するジオラマモードを使わずに「箱庭」のようなイメージにまとめた。

90ミリ相当 絞り優先オート(F8 1/320秒) ISO100 WB:太陽光

 

展望撮影では、シンボルタワーやランドマークなどの被写体を見つけ、構図におさめると写真がまとまります。また、そういう目立つ被写体がない場合は、道や川などの「線」の要素を、対角線上に横切るように配置すれば、バランスよくまとまるでしょう。

 

写真/解説:永山昌克