都市の情景を撮るうえで、路上には魅力的な被写体であふれています。とはいっても、道の種類はさまざまで撮り方もいろいろ。日々何気なく通り過ぎる路上を、どういう風に切り取り素敵な写真にするか、狙い目の被写体から効果的な撮り方までをご紹介します。
ぬれた路面、水たまり、傘をさす人など
雨の日の路上は被写体の宝庫
見慣れた路上風景をかっこよく写したいと思ったら、動いている被写体を見つけて、それをわざとぶらして捉え、動感を表現してみるといいでしょう。シャッター速度を遅くすることで、静止画である写真でも動きを表現できるのです。このテクニックが生きてくる被写体が路上を走る車や自転車です。いつもの街の写真に車のブレをアクセント的に加えると、人とは違った都市風景を撮れるでしょう。シャッター速度をさらに遅くすると、歩く人をぶらして撮ることもできます。
基本テクニック
水たまりに映り込んだ景色を狙う
路上にできる水たまりは、雨上がりに狙うのが効果的。 水面の映り込みを狙うと、見慣れている被写体も間接的に捉えられて、魅力的な被写体へと生まれ変わる。撮影するときは、まず肉眼で周囲の風景がどのように映っているか、どの角度がベストかよく観察すること。ランドマーク的なビルやタワーなど目を引く被写体が映り込んでいると、その存在感がより際立ち、印象的な写真になる。
ピントは映り込んだ被写体に合わせる
雨上がりの路面にできた水たまりに映った都市風景を狙う。主題は映り込みなので、水面に映った街の景色にピントを合わせる。さらにここではホワイトバランスを「晴天」にして、青みを加えることで雨の日の雰囲気を引き出した。
50ミリ相当 絞り優先オート(F5.6 1/60秒) ISO1600 WB:晴天
映り込みと実像の対比を狙いつつ瞬間的な面白さも取り入れる
最初は、水たまりに映ったスカイツリーに目がいき撮影したが、平面的で単調な写真になってしまった。そこで通りがかった女性の足を入れてとっさに撮影。瞬間の面白さと立体感が生まれ、より印象的になった。実像のプラスαを入れることで映り込みとの対比が生まれつつ、安定感や想像性も高まる。
54ミリ相当 プログラムオート(F5.6 1/200秒) -0.3補正 ISO160 WB:オート
応用テクニック①
高い場所から狙って傘の花や地面の模様などを造形的に捉える
都市撮影では、傘は雨の日のモチーフとして最適だ。特に高い位置から見下ろすアングルを選ぶと、傘の造形や色彩が生きてくる。歩道橋やビルの上から狙ってみよう。その際、地面にも模様があると効果的な背景となる。傘の形と地面の模様で造形的な写真を狙える。
地面に模様があると絵にしやすい
高層ビルの展望室から捉えた横断歩道の様子。 カラフルな傘や服が多くなった瞬間に連写し、最もバランスのいい位置に歩行者が並んだカットを採用した。晴天時に撮影しても、傘という花がないと、このパターン的な面白さは得られない。
105ミリ相当 マニュアル露出(F5.6 1/320秒) ISO1600 WB:太陽光
パターンとして傘や地面を表現する
ハイアングルから撮影。ほかの歩行者など無駄な要素をカットしたことで、傘と長靴の色彩感が際立った。こうした石畳や横断歩道といった路上の幾何学パターンは、雨天+ハイアングルが似合う場所だ。
応用テクニック②
ぬれた地面が光を反射して輝きを増す雨の日は夜撮影がおすすめ
雨は地面をぬらし、光を反射させる。特に夜の撮影では、その反射の効果で光の輝きが倍増する。雨の日や雨上がりは、晴れた日に夜景を撮るよりも、画面にたくさんの光を写し込むことができるのだ。
天候によって地面の印象はだいぶ変わる
夜に同じ石畳を撮影した。左は雨の日、右は晴れの日である。石畳の先にある店の明かりで、全体的にオレンジ色に写っているが、雨の日はたまった水に明かりが反射して、輝きが印象深い。
観覧車の光が反射していた七色の地面を狙う
虹色に光る遠くの観覧車が、ぬれた石畳に反射して輝いていた。遠くのものは低いカメラポジションにするほど地面に多く映り込むので、傘をさしたまましゃがんで、高感度に設定して手持ちで撮影した。なお、ピントも露出も地面の反射に合わせている。
70ミリ相当 絞り優先オート(F5.6 1/5秒) -0.7補正 ISO1600 WB:太陽光
路上風景は、天候や時間帯を変えると、幻想的な撮影も可能になります。水たまりの映り込み、濡れた地面の光の反射、雨の日のカラフルな傘など、いろいろな被写体にスポットを当てて撮影してみましょう。