路上には街灯や標識、カーブミラー、看板など、さまざまな設置物があふれています。普段は被写体としてあまり絵にならないと感じ、見逃しがちでもある設置物。このような設置物にスポットを当てて、魅力的な写真に仕上げる撮影テクニックをご紹介します。
シャープで力強い表現を狙うならパンフォーカスで
雰囲気重視ならボケを生かそう
被写界深度をコントロールすると、さまざまな表現が可能になります。絞り込んでパンフォーカスにすると、シャープで力強い表現が得られます。主に広角レンズを使って、遠近感を誇張させた撮影に向きます。逆に絞りを開けて被写界深度を浅くし、ボケを生かすと、雰囲気重視のやわらかいイメージの写真になります。こちらは大口径の標準レンズや中望遠レンズだと狙いやすいでしょう。設置物自体や現場の状況から、どちらの表現が自分のイメージに合っているかを見極めることが大切です。
基本テクニック
パンフォーカスで捉えて周囲までしっかり見せる
広角レンズを使って絞りを絞り込むと、パンフォーカス描写が得られやすい。パンフォーカスにすると標識や看板などの設置物だけでなく、周囲もシャープに写るので、その場の状況をしっかり見せることができる。ただし、特に広角で周囲を広く入れると、画面が煩雑になりやすい。設置物がメインになるようなフレーミングをして、周囲はある程度整理するとバランスよくまとまる。
広角レンズを使って絞りを絞るのが基本
超広角18ミリ相当で、ギターの形の看板に迫る。背景に高層ビルを入れて、奥行きと現場の様子を伝える。絞りはF8に設定し、誇張された遠近感とパンフォーカスによるシャープな仕上がりを狙った。余計なものが入らないよう、画面全体を確認しながら構図を決めている。
18ミリ相当 絞り優先オート(F8 1/200秒) -0.3補正 ISO100 WB:オート
平面的な光景はパンフォーカスにしやすい
夜の街灯を中望遠レンズで撮影。街灯と壁が近く、奥行きもないため、絞りF2.8でも壁に映った街灯の影まではっきりしている。またメタリック調の壁なので、周囲の街の明かりが鮮やかに反射し、ファンタジックな写真になった。イメージどおりの色調になるように、WBは調節している。
90ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 1/60秒) -0.7補正 ISO400 WB:3350K
応用テクニック①
背景を適度にぼかして設置物を強調する
絞りを開けて被写界深度を浅くし、設置物を浮き立たせる方法もある。ポートレートに近い撮り方だ。奥行きのある状況だと大きなボケを得やすい。ただし、あまりにボケが大きく、背景の様子がわからないと臨場感に乏しくなる。街の雰囲気が伝わるように長い焦点距離は使わず、広角から標準クラスのレンズで撮るのがおすすめだ。
絞りを開けて、かつ設置物と背景が離れていると、大きなボケが得られる
アメリカ、サンフランシスコで見かけた標識。ビルに反射した光がレフ板のように標識を照らしていた。単焦点標準レンズの絞り開放で撮影。大きな背景ボケで標識が浮かび上がると同時に、街のざわつきも感じられる写真になった。
50ミリ相当 絞り優先オート(F1.4 1/3000秒) ISO200 WB:オート
道の奥行きを生かすとぼかしやすい
昭和を感じさせるレトロな街の一角。広角単焦点を使い、光が当たっている看板に近づいた。奥行きのある状況なので絞りを開放にして背景をぼかす。広角らしい遠近感と適度なボケで、臨場感が得られた。
24ミリ相当 絞り優先オート(F1.4 1/45秒) ISO800 WB:オート
応用テクニック②
ぼかすものにも意味を与えるとぐっと作品に奥行きが出る
ボケを使った場合、闇雲にぼかすのではなく、何かを感じさせるボケにすると作品の深みが増してくる。それには、標識と背景の距離やレンズの画角、絞り値を考慮して、どんな背景になるのかを計算することが大事だ。またボケが効果的な時間帯というのもある。日中より夕暮れがドラマチックな仕上がりになりやすい。
実像をぼかしてミラーの世界に誘導
ティルト機能を搭載したレンズを使用。カーブミラーに反射した景色にピントを合わせ、ティルト操作で画面左側の街灯を大きくぼかした。見る側の意識が、ミラーに映った夕暮れの景色の中に入り込むようなイメージを狙っている。
50ミリ相当 絞り優先オート(F3.2 1/80秒)ISO100 WB:オート
ポスターをぼかして街の様子を匂わす
標識の赤い色と、ビルに貼られた大きな人物のポスターが気になった。標識を主役にして、ポスターはぼかす。夕暮れどきの青く沈んだ色調も意識し、露出はアンダー目に設定。繁華街の様子を匂わす、深みのある写真になった。
50ミリ相当 絞り優先オート(F1.1 1/750秒)-0.7補正 ISO160 WB:太陽光
力強い表現をしたい場合は、絞りを絞ったパンフォーカスで撮影。雰囲気のある表現をしたい場合は、絞りを開放して撮影。絞りの調整をすることで、さまざまな表現が可能になります。撮影時は、被写体をどのように表現したいかをイメージしながらシャッターを押してみましょう。