これから、夏休みで、大型連休をとって、旅行に行かれる方も多いはず。旅行する時、写真撮影は欠かせませんね。昨今はスマートフォンによる撮影も増え、より一層手軽なイメージになりました。でも、あとで、旅が終わって写真を見返すと、その場所がわかる被写体を捉えただけのつまらない写真であることが、たまにあります。それは、撮ったときの感動や場所の魅力などを伝える“旅情感”が引き出せていないのです。ですので今回は、ありきりたりの旅写真を、感動や魅力あふれる旅写真に変える、10のコツをご紹介いたします。
旅写真のコツ⑤
【脱!平凡写真】 逆光を利用してドラマチックに作画する
旅先の記念写真を撮るなら、光は順光がおすすめ。建物や風景などがはっきり写るため、記録写真や説明写真に向いているのだ。ところが旅写真の作品となると、必ずしも順光がベストとは限らない。記録的、説明的だと平凡に見えてしまいがちだ。そこで、逆光の位置にまわって撮ってみると、ドラマチックな写真になる。また逆光では、被写体をあえてシルエットで狙ってみるのも面白い。インパクトが生まれ、一風変わった旅の作品に仕上がる。
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逆光と順光、光の当たり方だけで描写は劇的に変化する
像の正面から順光で撮った写真と、まわりこんで逆光で狙ったものと比べてみよう。順光は説明写真としては問題ないが、旅の作品としては平凡すぎる。逆光では、空と雲、そして像のハイライトが強調されて、印象的な作品になった。【撮影地/長崎平和祈念公園】
強い逆光線を生かし教会をシルエットで見せる
丘の上に建つ教会。逆光で雲がきれいだ。その印象を描き出すために、超広角レンズで空と雲を大きく入れた。太陽がアクセントになり、インパクトのある写真になった。教会に露出を合わせた右下の写真は、ただ建物が写 っているだけに感じる。【撮影地/長崎大浦天主堂】
18ミリ相当 絞り優先オート(F11 1/800秒) ISO100 WB:オート
旅写真のコツ⑥
【脱!無呼吸写真】 動く被写体をぶらして臨場感を盛り込む
旅先でその土地らしい街並みに出会ったとき、そのまま撮っただけでは印象的な作品にはなりにくい。そこでスローシャッターを活用して、通りを歩く人や走る車などをぶらして入れてみよう。街並みに動きが出て、臨場感のある作品にできる。特に夜景が有名な場所なら、車の光跡を取り入れると、華やかさも出て効果的。ただ、スローシャッター撮影には三脚が必要だ。コンパクトな三脚なら旅にも持って行きやすく、撮影の幅を広げられる。
人をぶらして、雨の日の足早な様子を捉える
雨の日の中華街。旅先の雰囲気を出すために、シャッター速度0.3秒で、傘を差して歩く人たちをぶらした。足早に歩く様子が強調され、また手前のピンクの傘がアクセントにもなっている。街の動きが感じられる写真だ。【撮影地/神戸南京町】
24ミリ相当 絞り優先オート(F16 0.3秒) -0.3補正 ISO100 WB:オート
観光地の夜のにぎわいを車の光跡で表現する
函館の赤レンガ倉庫。有名な観光地なので、昼間だけでなく夜も狙う。三脚を立てて、13秒のスローシャッターで車の光跡を写し込んだ。一般的な観光地写真ではなく、その街の息遣いやにぎわいが感じられる作品になった。【撮影地/函館金森赤レンガ倉庫】
80ミリ相当 絞り優先オート(F11 13秒) ISO100 WB:オート
旅先での臨場感や旅情感を表現する方法を、これまでもご紹介しておりますが、やはり、その時、その場所の空気感や雰囲気をしっかり捉えていくことが必要です。その方法のひとつとして、被写体と太陽光とカメラの位置関係を、巧みに操りながら撮影してみましょう。
写真・解説/藤井智弘