これから、夏休みで、大型連休をとって、旅行に行かれる方も多いはず。旅行する時、写真撮影は欠かせませんね。昨今はスマートフォンによる撮影も増え、より一層手軽なイメージになりました。でも、あとで、旅が終わって写真を見返すと、その場所がわかる被写体を捉えただけのつまらない写真であることが、たまにあります。それは、撮ったときの感動や場所の魅力などを伝える“旅情感”が引き出せていないのです。ですので今回は、ありきりたりの旅写真を、感動や魅力あふれる旅写真に変える、10のコツをご紹介いたします。
旅写真のコツ⑦
【脱!直球写真】 見る人に想像させる絵作り、狙い方をする
旅写真は記念写真とは異なる。記念写真は場所や建物がはっきりわかればいいが、旅写真ではその場を感じさせながら、見る側の想像力を膨らませる作品にすることもアリ。建物の一部分をクローズアップしたり、光や影を生かしたり、雰囲気重視で狙ったりと、「そのものズバリ!」ではない撮り方も有効な作画手段であり、個性的な旅写真にすることができる。
のれんに落ちる笹の影、町屋のイメージで画面を構成
赤が鮮やかなのれんに光と影が映る。あえて建物全体は見せず、影をクローズアップした。日本らしさを感じさせながら、周囲の雰囲気も想像させ、旅で出会ったという印象を強調できた。【撮影地/金沢東茶屋街】
96ミリ相当 絞り優先オート(F8 1/125秒) -1.7補正 ISO100 WB:オート
旅写真のコツ⑧
【脱!全部見せ写真】 浅い被写界深度で雰囲気重視に仕上げる
旅写真では深い被写界深度で見たものすべてを収めたくなるが、それでは平凡に仕上がりがちだ。魅力的に撮るには、大きなボケを生かしてみよう。視点が集中し、旅の雰囲気を強調できるだけでなく、想像させることで奥深さも出る。
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並ぶ灯篭の1つに、ピントを合わせて視点を誘導する
軒にずらりと並んだ灯籠。浅い被写界深度でひとつにピントを合わせて背景をぼかすと、視点が集まり、空気感や奥行き感のある作品になった。絞り込んだ写真は説明的になり、旅情感は薄れやすい。 【撮影地/奈良春日大社】
50ミリ相当 絞り優先オート(F2 1/750秒) -1補正 ISO100 WB:オート
旅写真のコツ⑨
【脱!No撮影】 雨の日だからこそ撮れる“旅情感”を狙う
旅先の天候がいつも晴天とは限らず、ときには雨に降られることも。雨天時は、ぬれた路面や建物にしっとりとした雰囲気が出て、晴天とは違った質感を見せてくれる。さらに傘を差した人物を画面に入れると、雨の日ならではの旅情感を表現できる。
石畳は雨にぬれたほうが質感が出る
雨でぬれた石畳はしっとりした質感になり、雨天ならではの旅情感あふれる作品になる。また、観光客を入れた作品は、女性が持つ赤い傘がポイントとなり、色が沈みやすい雨の日に彩りが加わえられた。【撮影地/金沢東茶屋街】
旅写真のコツ⑩
【脱!カラー写真】 その場の雰囲気に合う色味で見せる
多くの人は旅で出会った街の雰囲気を伝えるなら、カラー写真が有効だと考えるだろう。だが、「深み」や「重み」の表現にはモノクロで撮るのも有効。特に歴史のある場所では、モノクロで撮ることで、その土地の伝統なども表現しやすくなる。また色がないためにシンプルになり、被写体そのものの形状を伝えやすくなるほか、見る側の想像力を膨らませる効果もある。
色を排除して雲の迫力と東大寺の佇まいを強調する
長い歴史を持つ奈良の東大寺。その歴史の長さと深みを表現するためにモノクロで仕上げた。雲が強調され、東大寺の存在感も強調できている。モノクロならではの重厚感のある旅写真になった。【撮影地/奈良東大寺】
18ミリ相当 絞り優先オート(F11 1/125秒) ISO100 WB:オート
これまで旅写真がうまくなる10のコツをご紹介いたしました。どれもこれもとなると、混乱して、その旅行が台無しにもなりかねませんので、まずは、旅を楽しみながら、あ!こんなこと書いてたな!くらいのイメージで、楽しく撮影してくださいね。
いい旅行写真が撮れますように……
写真・解説/藤井智弘