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【都市情景撮影の基本①】写真の明るさを思い通りに操って被写体を魅せよう!

高層ビルやシンボリックなタワーなどのランドマークから路上や路地といった街の情景まで、都会ならではの被写体の撮影方法を、これまでたくさん紹介して来ました。今回は、撮影時のカメラの設定やレンズの選び方、太陽光の撮影での取り入れ方など、基本的なテクニックやコツをご紹介いたします。

 

撮影:吉森信哉

 

カメラには露出計が内蔵されていて、シーンや明るさに応じて露出(写真の明るさ)を決めています。この露出計はメーカーを問わず、「18%の標準反射 (グレー)」をモノサシに設定されており、どのような被写体であっても、基本は測光した部分を18%の明るさにしようと働いています。

このため、露出をカメラ任せにすると、白いものや黒いものがグレーに写ってしまいます。そこで露出を意図的に調整するのが露出補正の役割です。露出を明るくするにはプラス補正、暗くするにはマイナス補正を行いますが、まずは目の前の風景を見た目の明るさに写すことから始めていきましょう。デジタルカメラでは、撮った画像をその場で確認できます。画像と目の前の風景を見比べて、暗く写っているならプラス補正を、明るく写っているならマイナス補正をして最適な明るさに仕上げましょう。

 

見た目と同じ明るさに写す

目の前の風景を撮影したら、実際とは違う明るさに写ってしまったことがあるだろう。これは、カメラは常に一定の明るさ(18%グレーを基準)に写そうとするからだ。写すものが明るすぎる風景や白っぽい色のとき、または暗い風景や黒っぽい色のときは、見た目の明るさに写るように露出補正をする必要がある。

 

白っぽい被写体の場合

撮影:北村智史

プラス補正で見た目の明るさに写る

画面全体(主にメインの被写体)が白っぽい色の場合、カメラは画面が明るいと認識して、実際よりも暗く写してしまうことがある。このようなときはプラス補正をすることで、見た目の明るさに近づく。

 

黒っぽい被写体の場合

撮影:北村智史

マイナス補正で見た目の明るさに写る

画面全体が日陰の黒い岩など黒っぽい被写体の場合は、カメラは画面が暗いと認識して、実際よりも明るく写してしまうことがある。このようなときはマイナス補正をすることで、黒い岩肌を見た目どおりに写せる。

 

イメージどおりの明るさに写す

基本的に露出補正は、被写体を見た目と同じ明るさに写すために行うが、自分のイメージする明るさに仕上げるために補正量を調整するといったケースも多い。見た目よりも明るく補正してやわらかさや光を強調したり、見た目よりも暗く補正して深い色合いや重厚感を引き出したりするといったことが可能だ。

 

撮影:北村智史

カタチを強調するためにマイナス補正をしてシルエット描写に

橋の主塔(柱)とワイヤーの形を強調したかったので、大幅なマイナス補正をしてシルエットに近づけてみた。光の量としてはかなりのアンダー露出となるが、青黒い空にすることで心象風景的な表現を狙っている。これが“イメージの明るさ”だ。

 

見せたい被写体に露出を合わせる

特に逆光のシーンでは、「画面内の被写体をどう見せるか、見せたいか」によって露出の補正量は変わる。被写体の細部描写を見せたいならプラス補正をするが、被写体をシルエットにして、その形や周囲の風景を強調するならマイナス補正が必要なことが多い。この場合は撮影者の明確な意図が必要になる。

 

撮影:吉森信哉

【+1】灯篭の細部を見せる
プラス補正を行うと、補正ナシでは暗くて見えにくかった灯籠の細部がよく見えるようになった。だが、背景の空は極端に明るくなっている。

【±0】どっちつかずの中途半端な露出
日陰の被写体(灯篭)と背後の風景との明暗差が大きいため、極端ではないが被写体が露出アンダーに。また、背景は少し明るめに写った。

【-1.3】マイナス補正をして灯篭のカタチを見せる
補正なしで暗めだった灯籠はさらに暗くなり、細部は見えなくなった。しかし、全体のシルエットは強調されている。背景の青空は、自然な明るさで色濃くなった。

 
 

写真の明るさの基本は「目で見たまま」です。まずは見たままに写せるよう、明るさの補正に慣れましょう。明るさの補正に慣れてくる頃には「見たままとは違う、自分なりの見せたい明るさ」に目覚めるはず。写真の明るさをコントロールし、作品撮りする楽しさを存分に感じてください。