夏は写真を撮るのに最高の季節だが、とにかく暑い!一時間も撮っていると撮影どころではなくなり、熱中症にもなりかねない。そこで狙いたいのが、夕方の写真。強い日差しが避けられ、夕焼けや斜光、逆光の写真が撮りやすい。太陽が傾き、空が色づき始める夕方の写真を撮るテクニックやコツ、さらにプロカメラマンならではの夏の暑さ対策グッズなどをご紹介します。
夕方スナップ編 -夕焼けのほか日没後の人工灯にも注目-
夕焼けや人工灯などの光を生かして撮ろう
夕方のスナップ撮影で夕焼け空を軸に狙う場合は、ホワイトバランスや露出補正による色味の調整がポイント。街の雰囲気を中心に狙う場合は、画面内に街灯の光を大胆に取り入れたり、夕方の斜光線を生かして、逆光でシルエット表現を狙ったりすることで、変化に富んだ画面構成を楽しむことが可能だ。
夕方の街並み
日中は平凡に見える街並みも、変化に富んだ夕空によ ってドラマチックな光景に変化する。そんな点に注目しながら、目を引く建物をポイントに、街並みを切り取っていこう。技術的には、ホワイトバランス(WB)と露出補正がポイント。
ホワイトバランスで空の色味を調節
夕焼け空を入れるなら、ホワイトバランスを「太陽光」にすると、空の色味を引き出せる。夕焼けが弱い場合は、ホワイトバランスを「くもり」や「日陰」にすると、赤みを強調可能。また、あえて「蛍光灯」設定を用いて青みがかった空を演出してもよい。
52.8ミリ相当 絞り優先オート(F8 1.3秒) -1.3補正 ISO100 WB:蛍光灯
オートホワイトバランスは、夕焼けの色が補正されて弱まる場合があるので「太陽光」が基本。「くもり」や「日陰」では赤みが強まる。右の写真は、日陰&露出補正-1.3で赤みを強調した。
街灯を生かす
夕方は街灯が光りだす時間。夕方のスナップでは、この街灯をいかに生かすかもポイントだ。街灯の光を直接入れるほか、反射した光を取り入れるのも面白い。その場合は、光源の位置を観察し、被写体にどのように当たるかを確認しよう。
光沢のある被写体は街灯の反射が生きる
窓ガラスや水面など、光を反射する被写体の場合は街灯の写り込みを狙ってみよう。例えば、上の写真のように踏切の近くを電車が通る場合であれば、信号機の赤い光が電車の車両に当たる瞬間を狙って、アクセントとして活用できる。
600ミリ相当 絞り優先オート(F5.6 1/500秒) ISO6400 WB:太陽光
日中
街灯あり(ライトアップ)
ライトアップされる噴水を日中と夕方で撮り比べ。周囲が暗くなることで雑然とした背景がすっきりする。また、露出補正は多少マイナスにしたほうが背景が暗く落ちて効果的だ。
スローシャッターで街灯の量を増やす
展望台から夕方の街並みを撮ると、街灯の灯りがアクセントになる。ただ、街灯の量が少ないと中途半端な印象になるので、シャッター速度を遅くして、クルマの光跡などを入れ、画面に写る光を意図的に増やそう。
38ミリ相当 絞り優先オート(F4.5 1/15秒) ISO1600 WB:蛍光灯
シルエット表現
前方に夕日がある日没後の西の空などを撮る場合は逆光となり、空と地面の明暗差が極端に大きくなる。そのため、両方の階調を再現するのは難しい。暗い部分をシルエットとして写せば、色や被写体のフォルムが強調できる。
雑然とした部分をシルエットに
空や水面などのハイライト部重視の露出だと、地面の暗い部分は露出アンダーになり黒つぶれする。それを利用して、雑然とした部分を隠しつつ、ハイライト部の印象を強めた。多少マイナス補正して、コントラストを高めの設定にするのも効果的。
35ミリ相当 絞り優先オート(F8 1/125秒) -0.7補正ISO800 WB:くもり
わずかな明るさの違いで夕焼けの印象も変わる
+0.3補正
少しプラス補正すると、見た目に近い明るさに再現できる。だが、夕焼けの色が浅くなるほか、街並みなどのシルエットも締まりがなくて、全体的に軽い印象だ。
-0.7補正
マイナス側に補正すると、見た目よりも暗い画面に。それにより、夕焼けの色が濃厚に再現され、街並みのシルエットも引き締まる。
おまけ – プロカメラマンならではのおすすめ暑さ対策グッズ!!
吉森信哉カメラマン編
日除け効果の高い帽子とドリンク類の確保は必須
撮影自体は夕方でも、ロケハンで日中から行動することも多い。そのため、暑さ対策は必須。基本装備は帽子の着用とドリンクの確保。できるだけ日除け効果の高い帽子を用いるなど、機能性や携帯性などを重視している。
ペットボトルホルダー
結露する冷たいドリンクは、そのままではバッグ内に収納しづらい。タオル地のペットボトルホルダーで問題を解決。100均で購入できる。
帽子(クールビットシリーズ)
一見すると普通の帽子だが、日差しから後頭部を守る着脱式カバーが付属。使用しない場合は、内側に収納できるようになっている。
普段目にする日常的な街並みも、日が沈むにつれ、グラデーションのかかった幻想的な風景へと変わります。一瞬たりとも同じシャッターチャンスはありません。ですので、目の前の風景と、撮影イメージをしっかり考慮しながら、撮影を心掛けましょう。