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【タワーの撮り方④】ライトアップを利用したタワー夜景の撮影テクニック

都市風景において、タワーの存在感は絶大です。それだけを狙っても、風景の一部として広く撮っても絵になります。構図にタワーが入るだけで、アクセントのついた素敵な一枚をとることも可能です。この万能な被写体であるタワーの撮影テクニックやコツをご紹介いたします。

 

撮影:川北茂貴

 

一般的な夜景撮影と同様に三脚を使って長秒露光で撮る
 
東京タワーをはじめ、ライトアップされるタワーは全国各地にあり、とてもフォトジェニックで写欲をかき立てられます。場所によって周辺環境はかなり異なりますが、大きく遠景と近景の2種類の撮り方に分けられます。まずは、これらの狙い方をご紹介。このとき、どちらのケースでも三脚を使った長秒露光で撮るのが基本になります。また、夜景写真のアクセント的に取り入れられることも多いタワーですが、ここでは主役として、よりきらびやかな作品にするテクニックも解説します。

 
 

基本テクニック

遠景のタワーは望遠レンズで引き寄せて近景の場合は広角レンズを用いて全体を撮る

見晴らしのいい場所から遠景のタワーを狙う場合は、望遠レンズを使って引き寄せるのが基本。タワーは細長いので、縦位置で画面にできるだけ大きく捉えると、無駄なく決まる。一方、近くから見上げて撮る際は、画角が狭いと全体像収まらないので広角レンズの使用がベター。下は大きく、先端は小さく写って、遠近感のあるタワーが撮れる。

 

撮影:川北茂貴

 

暗いだけの空は極力カットする
縦に長いタワーを撮るときは、収まりのいい縦位置構図が◎。また、月や雲などが夜空の余白を埋めていれば別だが、左写真のように暗い空が多い場合はつまらない。そこで右写真では、300ミリ相当の望遠を使ってタワーを大きく捉えている。

 

撮影:川北茂貴

 

画面が単調になるときはアクセントを加える
東京タワーの真下から、広角16ミリ相当で画面いっぱいにその姿を捉えて、迫力のある写真を狙った。しかし空が真っ暗なため、少し寂しい印象だ(左写真)。撮影場所が道路際だったので、画面下を少し空けて、通る車の光跡を13秒露光で入れる。タワーと同色の光が加わって、にぎやかな写真に仕上がった(右写真)。

 
 

応用テクニック①

イルミネーションと絡めてより華やかな写真にする

観光名所でもあるタワーは、特にクリスマスシーズンであれば、近くでイルミネーションが灯っていることも多いだろう。光輝くイルミネーションとライトアップされたタワーの組み合わせは最高。この2つの距離が近いならパンフォーカスで狙い、離れているならイルミネーションを前ボケにして入れるのがおすすめだ。

 

撮影:川北茂貴

 

玉ボケを入れると華やかに仕上がる
街中で見る小さく灯っているイルミネーションでも、前ボケにするには十分。この写真は、レンズをイルミネーションに近づけて、絞り開放で撮影。カラフルな玉ボケが入り、華やかになった。

92ミリ相当 絞り優先オート(F4 1/30秒) -0.3補正 ISO1000 WB:太陽光

 

 

クリスマスシーズンはツリーと絡めるのもおすすめ
東京タワーの下には毎年、クリスマスツリーが飾られる。こうした場面では広角レンズを使い、タワーと一緒に見上げて、トワイライトの空に浮かぶタワーの脇役としてツリーを添えてみよう。

16ミリ相当 絞り優先オート(F11 0.6秒) -0.7補正 ISO100 WB:太陽光

 
 

応用テクニック②

多重露光を行ってやわらかいイメージに仕上げる

フィルムカメラ時代からの夜景撮影テクニックの一つに、多重露光がある。一つの画面に多数のカットを重ねる(合成する)方法で、主題が明確なライトアップされたタワーには最適な表現方法だ。デジタル一眼ではカメラ内にこの機能を搭載しているものも多いが、画像処理ソフトを使って行うことも可能だ。やわらかい写真を作り出せる。

 

撮影:清水哲朗

 

まずは、東京タワーにしっかりとピントを合わせ、絞りをやや深めにして撮影。次に、絞りを開けて、意図的にピントを外したカットを撮る。この2枚目のボケ具合で、仕上がりのやわらかさが決まる。

 

 

撮影:清水哲朗

 

芯のある幻想的な東京タワーの写真に
この2枚のカットを重ねると、芯のある幻想的な東京タワーの写真が完成する。ソフト系のフィルターを使ったかのような、やわらかいイメージだ。手軽に行えるので、ぜひ試してほしいテクニックだ。

 

シーズンに限らず、夜景でのタワーを撮影するときは、ライトアップを効果的に利用しましょう。三脚を使用し、長秒露光で撮影するのが基本になります。多重露光での撮影も幻想的なやわらかい撮影が可能です。