寒い冬を乗り越えると、暖かい春を迎え、冬には見られなかった美しい花々が咲き誇る季節がやってきます。ナノハナの開花時期は、関東では、3月中旬から4月下旬が見ごろですが、早いところでは、2月中旬ごろから咲き始めます。
鮮やかな黄色が印象的で写真映えする花ですが、黄色一色なので、平凡な写真になりがち。ボケを作ったり、空を背景にしたりして目立たせたり、ナノハナを印象的に撮影する方法やテクニックをご紹介します。
背景のボケ具合や写る範囲などどんな背景にしたいかでレンズを選ぼう
ナノハナを撮るときは何を基準にレンズを選んだらいいのでしょうか。その答えは「背景」です。レンズ先端からピント位置までのワーキングディスタンスも考慮すべきポイントですが、自分が動けば花に近づける場合もあります。しかし、背景のボケ具合や背景の写る範囲、遠近感などはレンズ選びによって変わるので、どのレンズで撮るかがとても重要になってきます。
簡単に説明すると、背景をすっきりぼかしたいなら望遠レンズ、青空を広く取り入れたいなら広角レンズを使いましょう。また、通常のレンズでは寄れない距離まで迫ってナノハナをアップで撮るならマクロレンズを選びます。このように、それぞれどんなレンズがふさわしいのかをここで解説します。
基本テクニック
ナノハナ撮影で最も重宝するのが望遠レンズ
ナノハナはひとつひとつの花が小さく、細かいので、すっきりとした背景を選ばないと画面がうるさくなってしまう。そのためにも、背景を容易にぼかせる望遠レンズは使い勝手がいい。また、黄色一色のナノハナ畑を立体的に捉えるにも望遠レンズが向く。花畑の面に対して角度をつければ、ピント面以外はぼけて画面に奥行きが生まれる。
400ミリ相当
200ミリ相当
望遠レンズでも主役から離れて撮るとボケは弱くなる
この2枚は同じ場所で同じズームレンズを使っているが、200ミリ相当ではボケが少なく、背景がうるさく感じられる。200ミリは十分望遠域だが、ナノハナから引いて撮ったためボケが弱くなってしまった。望遠でも花に近づいて撮ることは大切だ。400ミリ相当の写真は、背景のサクラがきれいにぼけてナノハナが際立ち、春らしい写真になった。
芽吹いたばかりの林とナノハナ畑を絡めて撮る
花畑に対して水平アングルで狙っている。望遠レンズで絞りを開けているのでピント面だけがシャープに写り、前後はぼけた。クローズアップしたときのような大きなボケではなく、芽吹いたばかりの林を感じさせる程度のボケを引き出した。
200ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 1/100秒)+1.3補正 ISO100 WB:太陽光
応用テクニック①
一輪に迫って大きく捉えるならマクロレンズの出番
背景を含めたクローズアップをするなら通常のレンズでも写せるが、房の部分だけをアップにしたり、小さな一輪だけを狙ったりするならマクロレンズの出番となる。ナノハナ全体を捉えるのとはまた違った姿が見られて面白いが、拡大率が上がるので、手ブレ、被写体ブレの両方に注意しよう。
一輪に迫ると違う姿が見られる、これは望遠レンズでは撮れない
マクロレンズでピントが合うギリギリまで迫り、絞り開放F2.8で撮影した。ここまで寄ると雌シベだけがシャープで、前後の花びらは大きくぼける。手持ち撮影のため慎重にシャッターを切ったが、20カット近く撮った中でシベにピントが来ていたのはほんの3、4カットだった。
120ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 1/500秒)+2補正 ISO200 WB:晴天
応用テクニック②
広角レンズは散漫な画面になりやすいので、狙いをしっかり持って撮る
広角レンズは広く写せるだけではない。広角で寄って撮ると背景の広がりを見せられるほか、遠近感も強調できる。しかし、背景にさまざまな要素が入ってくるため、シンプルな背景を選ばないと画面がごちゃごちゃしてしまうので注意が必要。
△
広角レンズを使っているが、レンズの特徴を生かしきれていない。空の面積は多いが広がりはなく、全てが中途半端だ。
主役は大きく、背景の花は小さく写ってより迫力が出る
快晴時、広角レンズでナノハナに迫って撮れば、背景に青空をふんだんに写し込める。とても爽やかな写真に仕上がった。また広角特有の遠近感の強調によって、主役は大きく、背景の花は小さく写ってより迫力が出た。
24ミリ相当絞り優先オート(F2.81/1600秒)+1補正ISO200 WB:晴天
ワイドで見上げて伸びる様子を表現
手を伸ばして、ナノハナの下にカメラを差し込んだ。可動式の液晶モニターを見ながら、地面すれすれの位置から広角で狙っている。広い画角によって、ナノハナが空へ伸びる様子が生き生きと捉えられた。
24ミリ相当絞り優先オート(F2.81/2500秒)ISO100WB:晴天
写真・解説/吉住志穂