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プロカメラマンに聞いた海外での撮影でリアルに気をつけておくべき5つのこと

多い時には、年に4回~5回海外の撮影に出かけることのある筆者。そこで、初めて海外で撮影してみようと考えている方に向け、筆者の経験から、機材ってどう持っていけばいいの? 海外ロケで便利だったものって何? 海外の撮影で気をつけていることって何? といった疑問に、お答えしてみようと思います! 前編ではバッテリーの機内持ち込みや海外撮影におすすめのアイテムを紹介しましたが、後編では現地の撮影で周囲すべき点をご紹介します。

※編集部注:以下のアドバイスは筆者個人の経験にもとづくものであり、参考にする際はよく下調べしたうえですべて自己責任でお願いいたします

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その1. 空港では後ろに注意!

まずは空港について。日本国内でも、もちろん注意は必要なのですが、海外ではもっと注意が必要です。特に、上の写真のような預かり荷物受け取りの際は「後ろ」に気をつけてください。自分のスーツケースが流れてきて取りにいった瞬間、カートに置いた手荷物バッグなどがあっという間に消えてしまっているなんてことも……

これは以前、筆者の大先輩から聞いた話ですが、レース撮影でヨーロッパに行ったとき、股の間に挟んだ500mmF4のレンズを後ろから掴もうとしてきた人間がいて、大声を出して撃退したそうです。

あとは、スリにもお気をつけあれ。一時期フランスで流行ったスリですが、地下鉄で現地のかわいい子どもたちが日本でいう「おしくらまんじゅう」をしてくるそうです。「いやぁ~かわいいなぁ~」なんて思っていると、ファスナーの無い、または閉まっていないハンドバッグの中やポケットに入っているお財布、貴重品、現金などごっそりやられてしまうなんてことがあるとか。海外では常に周囲に気を配ることが大切です。

 

その2. カメラは肌身離さない!

当然といえば当然なのですが、これも日本国内の感覚と違って、国によっては「ほんの小さなスキ」を狙われてしまいます。小銭を出そうとして少し横に置くとか、上の写真のように一服しているときなんかも当然狙われます。

飲食店などでも狙われてしまうときがあるので、筆者の場合は機材を椅子やテーブルには置かず、下の写真のように足に引っ掛けています。

特に混雑する観光地などは狙われやすいのでお気をつけください。以前、スペインのサグラダファミリアを撮影しにいくとき、背の高い若者が数人距離を置いてずっとついてきていました。ちょっと気になるなと思い、人の多い場所に紛れ込み時間を過ごしたあとサグラダファミリアの中に入りました。また、イタリアのベネッチアでもかなり注意しました。というのもベネッチアは、すれ違うのに気をつかうほど通路が狭い場所が多く、こういったときカメラのストラップを握られて「まさか!」のことが起こってしまうことがあるため、撮影するまでカメラバッグからは出さないでおいたり、肩に掛ける場合もストラップを握りしめたりしておくなど注意が必要でした。とにかくカメラは肌身離さず!です。

 

その3. 海外のデンジャーは本当にデンジャラス!

海外で見る「DANGER(デンジャー)」と書いてある看板! あれ、本当に危険なんです。当然、日本国内で危険と書いてある看板も本当に危険なのですが、少し「君子危うきに近寄らず」というところもあり、万が一にもケガをしないよう早めに警告を出しているところもあります。しかし、海外の場合、自己責任の幅が広いため、日本ならそもそも立ち入り禁止になっているような危険な場所でも撮影OKになっていることがあります。

例えば、上の写真を撮影した場所もそう。ここはニュージーランドのある島なのですが、撮影した砂浜は全面撮影OKだったものの、デンジャーという看板と「被写体となる動物からは10m以上離れて撮影するように」という注意書きがありました。

野生のアザラシが海から上がってきたところですが、「いやぁかわいいなぁ~」なんてのんびりしていると大変なことになります。アザラシからみれば、筆者は縄張りに侵入してきた不審者です。とうぜん成敗しようとオウオウいいながらアザラシがやってきました。注意書きを読んでいた筆者は望遠レンズで遠くから狙っていたので、距離のあるうちにその場を離れることができたのですが、見逃していたら危ないところでした。怪我をしないで無事に撮影を終えるということが何より大事なことです。

 

その4. 路地裏の撮影は明るいうちにロケハンをしてから!

海外に行ったら素敵な街角をスナップしたい!そう思いますよね。特に路地裏なんかはその国の生活の息吹が感じられて夢中になって撮影してしまいます。けれども撮影するときはお気をつけください。特に、トワイライトやナイトのスナップは人が少なくなっている上に街灯も少なく、薄暗い場所が多くあります。

慣れない場所では勝手がわからず薄暗い道へ迷い込んでしまうこともあるので、できれば人通りのある明るい時間に一度ロケハンを行ってから撮影されることをおすすめします。上の写真はウィーンの街並みをスナップしたときに撮影したものですが、一度明るいうちにあちこちロケハンしたあと、トワイライトからナイトの時間にスナップを行いました。

筆者がロケハンを行うときに気をつけている点は、あちこちゴミが捨てられている場所はNG、アンモニア臭い場所はNG、建物の間の細い路地で建物のどこにも窓が無く路地の前後で挟まれてしまう場所はNG、街灯の無いもしくは街灯の光が届きにくい場所はNGなどなど、「身がざわめく」感覚があった場合、とにかくその場所はNGにします。

また、交差点で話しかけてくる人にも注意が必要です。筆者が以前ポルトガルのリスボンでナイトスナップ撮影をしていたとき、路地の交差点で話しかけてくる怪しげな人物が……(しかも各交差点で)。当時の筆者は、短めの髪、ミラーのサングラス、日焼けにヒゲに黒づくめの服装、おまけにカメラマンジャケットとこちらも怪しい風体ではあったので、怪しい者同士バランスは取れているのかもしれませんが、話しかけてくる内容は圧倒的に向こうが怪しかったです。なんと、筆者にむかって「コカイン?コカイン?」と話しかけてきたのです。そんなもの絶対買いません!

しかも、あとで聞いた話なのですが、話しかけられ立ち止まっている間に囲まれて「まさか!」のことが起こったりすることもあるようで、連係プレーの窃盗グループもいるそうです。こういったときは、無視して足早に立ち去ることが良いようです。とにかく路地裏のナイトスナップ撮影は昼間のうちに一度ロケハンを行うことをおすすめします。

 

その5. レンタカーの中も見られている!

最後はレンタカーのお話しです。今は、後部ガラスにプライバシーガラスが使われているクルマも多くなり、中が見えづらくはなりましたが、それでも狙っている人間もいます。ですので、車の中にある荷物が見えないようにあるものを被せます。それが前回少しだけ触れた「黒のダウンコート」です。

荷物はすべて後部座席の足元、スーツケースはトランクに隠し、覗きこまれても何もないようにとにかく隠します。乗り降りするたびに貴重品やカメラ、ポータブルカーナビは持ち歩きますが、それでも幾ばくかは車内に残ってしまいます。こういうとき、黒いダウンコートですべて覆い隠してしまいます。特に、観光地の地下駐車場や離れた駐車場などでは狙われてしまうことがあるためかなり慎重に車内のものを隠します。

以前、フォトグラファーの先輩から、食事に入ったお店の駐車場で車上荒らしにあってしまい、大変なことになったという話を聞きしました。「気をつけてはいたのだけれど、ほんの少し車内の何かが見えたのかもしれない……まいったよ」と話していました。無用なトラブルを避ける上でも車内のものは見えないように隠すことが一番です。そして駐車する場所も、少々高くついても安全な場所に駐車されることをおすすめします。

 

というわけで、以上、海外撮影で気をつけるべきことを5つ挙げてきました。もちろんこれだけ守っていれば安心というわけではありませんが、筆者が今まで歩いてきた海外での経験をお話しさせていただきました。気をつけるべきことは多いですが、海外は日本では撮れない写真がいっぱい撮れますし、何といっても非日常がそこかしこにあります!ぜひ参考にしていただき、海外の撮影旅行を楽しんでください! そしてくれぐれもご無事に帰国してください。