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【動画で“自分の世界”を究める新進映像クリエイターたちの活躍・第1回:ビートないとー】ワクワクドキドキの旅&キャンプ動画

YouTubeやVlogなど、スチル写真とは違ったカタチで作品を生み出すクリエイターがいま注目を集めている。はじめから動画でアプローチを開始した人もいれば、もともとはスチルがメインで徐々に動画の世界に足を踏み入れていった人もいる。映像や作品に対するそれぞれのこだわり、撮影や編集に関するメソッド、さらには機材のハナシなど、6名の新進クリエイターたちに動画への想いについて熱く語ってもらった。今回は、ビートないとーさんをご紹介!

 

動画で“自分の世界”を究める新進映像クリエイターたち

  1. ビートないとー – ワクワクドキドキの旅&キャンプ動画
  2. 藤原嘉騎 – 雄大なドローンスケープの世界
  3. SUMIZOON – 美しい光と構図で描く独特の世界観
  4. 清水大輔 – 技法を駆使したタイムラプス映像
  5. 大川優介 – 自らの体験や思いをスタイリッシュに表現するシネマティック作品
  6. 村上悠太 – まるで鉄道写真が動いているような写真家ならではの画作りを追求

 

ビートないとー

1983年、愛知県生まれ。大学を卒業後、広告制作会社で営業、ジュエリーの販売を行ない、30歳を機にバックパッカーとしてアジア・中南米を周り、帰国後に映像製作を始める。Vlogや旅、キャンプ動画を中心に投稿し、2020年7月現在、約9万人のフォロワーを獲得。

<YouTubeチャンネル>

ビートないとー /Beat Naito
https://goo.gl/LfYy9M

キャンプや旅行を中心に好奇心を刺激するネタを取り上げている。カメラやバッグ、一眼マイク、画像ソフトウェアのレビューもある。

 

海外の動画を参考に独学で撮影法を身に着けた

本格的にYouTubeで動画を発表するようになって約2年になる。チャンネル開設をしたのは2010年。当初は旅の動画などを上げていたが、さっぱりだった。

 

その後、30歳で会社を辞めて、2年半ほど海外に旅に出た。デジタル一眼レフを持って行ったが、そのときは写真が中心だった。旅から帰ると、小中学校時代の友だちがユーチューバーになっていた。「のりごとー」君だ。彼は旅行やガジェットのレビュー、DIY関連などの動画を公開していて、冬に一緒にデイキャンプをした動画を上げたら、それまでと明らかに違う数字が出た。「のりごとー」君の視聴者が来てくれたのかもしれない。もともとアウトドアは好きだったので、テントを購入し、それからキャンプ関連の動画も撮影するようになった。

 

撮り方は基本、独学で身に付けた。ほかの人の動画を見て、特に参考にしたのは海外のもの。ハウツー動画もアップされていて、日本にはあまりないスタイリッシュな映像に惹かれた。 メインの撮影機材はソニーα7IIIだが、その場に応じてコンデジやスマホ、GoProを使うこともある。何しろ撮っておかなければ後で何もできない。実際に編集するとき、あのときなぜカメラを回さなかったのかと後悔することもある。

 

ただ、現場は基本的に一人なので、結構大変だ。旅先に向かう車を写すシーンでは、背景を選び、カメラをセットして車を走らせる。当然、撮影後はカメラを回収に戻らなければならない。

 

キャンプで料理を作る場面も一人で調理して撮るので、これは事前に段取りを把握しておく必要がある。肉が焦げたり、トチったりすることもあるが、それも僕の面白さととらえ、撮り直しはしていない。

 

絵コンテを作って撮ることもあるが、旅などは行ってみないとわからないことが多い。あえて作り込むことはあまりせず、その場のリアルな展開、反応を伝えるようにしている。

 

アフリカの旅ではライオンにも遭遇

2019年4月、3泊4日のキャンプ・サファリツアーに参加した。ハードな旅だったが、予想以上の大自然や野生動物たちとの出会いを映像に収めることができた。運よくオスライオンの近くにいて、撮影にも成功。この後、彼はすぐに移動してしまった。


<アフリカ旅 〜キャンプ・サファリツアー〜【VLOG】>

 

キャンプの撮影は休みなしでも楽しい

キャンプ旅は本来、日常から離れた時間を楽しむために行くのだろうが、僕の場合はのんびりする暇はない。目的地に向かう途中もイメージカットを撮影し、旅に出かける高揚感を盛り上げていく。とはいえ、忙しくても僕自身、キャンプの時間はすごく好きだ。

【キャンプ】食欲の秋!男のキャンプ料理。Solo Camping

 

その場の雰囲気を重視して撮影する

写真は一枚の迫力や物語があるが、動画はそれに加えて臨場感や空気感も伝わってくることに魅力を感じる。映像はもちろんだが、音声もクリアに、その場の雰囲気が伝わる収録を大事にしている。

 

想定外の状況に備え、できるだけ多くの機材を持参する

現在はソニーα7IIIを中心にシステムを揃えている。このほかドローンなども使い、ロケに行くときはできるだけ多くの機材を持って行く。それは僕の友人で師匠の「のりごとー」君の教えでもある。現場では想定外のことが時折起きるからだ。

 

DaVinci Resolveを使い丁寧に色調整を行なう

編集ソフトでメインに使うのは「Adobe Premiere Pro」。時間をかけて、より凝った色を出したいときは「DaVinci Resolve」を使う。臨場感を出すため、あえてぶれた自撮りの映像を挟んだりする。映画のような質感を意識して編集を行っている。

 

時間の流れの表現やBGMにこだわる

制作する題材はひと月ずつ書き出して、週に1本のペースで更新している。

 

僕は動画編集に時間をかけるし、多分、ほかの人より作業が遅い。ワンシーンずつLUT(ルックアップテーブル)を使って、僕が求める色に調整していく。室内で撮影したもので7~8時間、屋外で撮ったものは2日ぐらいかかっている。

 

現場で急いでいて雑に撮ってしまったときは、補正にもっと時間がかかる。そんな痛い経験もした。動画はシャッタースピードを固定して撮らないと、画像に違和感が出てしまう。ちょっと場所を移動しただけで光が変わるので、可変式のNDフィルターは必須だ。露出はマニュアルで調整している。

 

キャンプや旅の動画は一日の流れや時間の流れを表現することで、視聴者が飽きないような演出を心がけている。以前は派手なトランジション(切り替え効果)を使っていたこともある。

 

そして、もう一つ大事にしているのがBGMだ。最初は無料の音源を使っていたが、選べる曲数が限られ、後々著作権の問題が出てくることも考えられるので、今は海外のBGMサイト「Epidemic Sound」を使っている。ストックフォトのようにプロがオリジナル曲を提供していて、クオリティーが高い。僕は同じ曲は使わないので、毎回新しく選んでいる。キャンプ動画は違う3曲を流してみて、そこから一つを選ぶ。完成しても曲が気に入らないと、作り直すこともある。

 

YouTube を始めたことで、僕自身、コミュニティーがぐんと広がった。共通の趣味を持つ新しい友人ができ、優れた映像を作るクリエーターとも会える。良いプラットフォームだと思う。

 

取材/市井康延