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【動画で“自分の世界”を究める新進映像クリエイターたちの活躍・第3回:SUMIZOON】美しい光と構図で描く独特の世界観

YouTubeやVlogなど、スチル写真とは違ったカタチで作品を生み出すクリエイターがいま注目を集めている。はじめから動画でアプローチを開始した人もいれば、もともとはスチルがメインで徐々に動画の世界に足を踏み入れていった人もいる。映像や作品に対するそれぞれのこだわり、撮影や編集に関するメソッド、さらには機材のハナシなど、6名の新進クリエイターたちに動画への想いについて熱く語ってもらった。今回はSUMIZOONさんをご紹介!

 

動画で“自分の世界”を究める新進映像クリエイターたち

  1. ビートないとー – ワクワクドキドキの旅&キャンプ動画
  2. 藤原嘉騎 – 雄大なドローンスケープの世界
  3. SUMIZOON – 美しい光と構図で描く独特の世界観
  4. 清水大輔 – 技法を駆使したタイムラプス映像
  5. 大川優介 – 自らの体験や思いをスタイリッシュに表現するシネマティック作品
  6. 村上悠太 – まるで鉄道写真が動いているような写真家ならではの画作りを追求

 

SUMIZOON

2011年よりサラリーマンの傍ら風景、人物、MV、レビュー動画等ジャンルを問わず映像制作を行う。機材メーカーへの映像提供、レビュー執筆等、活動の幅を広げている。現在、YouTubeでの公開動画は約300本、チャンネル登録者は1万人以上。

<YouTubeチャンネル>

STUDIO SUMIZOON
https://youtube.com/user/sumizoon
YouTubeチャンネル「STUDIO SUMIZOON」。人物、MV、ライブ、機材レビュー、風景、ショートフィルムなど、とにかくジャンルにとらわれず作品を公開している。

 

撮影時に大事なのは“大まかな”完成イメージ

元々、スチル撮影を趣味にしていたが、近年のカメラの進化によって実現されたラージセンサーでの映像の美しさに魅せられて以来、動画にどっぷりとハマるようになった。人物だけでなく、風景、飛行機、スナップ的な動画まで、ジャンルを選ばずに制作している。主な発表の場はYouTubeチャンネル「STUDIO SUMIZOON」だ。私にとって新たなチャレンジの場でもあり、これからもさまざまな映像作品を発信していきたいと考えている。

 

撮影時にはまず、すべてのカットが写真としても成り立つように構図や絵の美しさにこだわっている。ほとんどのカメラマンがそうだと思うが、人物を撮る際はなるべくモデルが美しく見えるような光を選ぶ。日中の屋外であれば、真上から強い光が当たらない時間帯や天候を考慮したり、室内であればなるべくナチュラルに見えるように照明を工夫したりする。

 

また、動画撮影の場合は先に構成を細かく決めて撮影するスタイルが一般的だが、私の場合は趣味なので堅苦しく考えずに、ある意味「いきあたりばったり」で撮影することが多い。とはいえ、何もイメージを持たないまま撮影するわけではなく、「大まかな完成のイメージ」だけは持って臨んでいる。最終的なイメージを持ってさえいれば、編集時にカットが少なくて映像が繋がらない、などということも起きにくくなる。編集のモチベーションや作品の完成度にも大きく影響するので重要だ。

 

海辺で踊る女性を美しく印象的に表現

モデルさんに自由に踊ってもらい撮影、それをそのまま作品にした。海と女性という鉄板の組み合わせではあるが、一度は撮りたいと思っていた。スローを使って時間軸を自由に表現できるのは動画の醍醐味である。


「Dance with waves」

 

スナップ感覚の映像は軽快に手持ち撮影

仲間と一緒に奈良の風情ある町並みを訪ねた。このときはスチル撮影の合間に動画を撮影。装備は完全にスチル撮影そのもので、ジンバルも三脚も使わずに完全に手持ち。気軽な装備でもこういったラフな映像であれば全く問題はない。

「橿原市今井町でぶらぶら撮影」

 

美しい階調が得られるルミックスS1Hを愛用

カメラの設定に関しては通常のガンマ設定で撮影することもあるが、ダイナミックレンジが広く、編集時に色を触りやすいようにLogガンマで撮影することが多い。特に私の愛用しているLUMIX S1Hでは、フルサイズ画角での「4:2:2 10bit」撮影とスーパー35ミリ画角での「4:2:0 10bit」撮影が可能で、美しい階調が得られる。もちろん、すべてをカメラ任せにするのではなく、自分なりの感度限界やスイートスポットなどカメラの特性を理解した上で、カメラにとって無理がない範囲で露出設定を行っている。

 

この数年のカメラの動画画質の向上は目覚ましいが、どんなカメラにも美しく撮影できる限界点がある。どんなレンズを選んで、どんな明かりで、どんな設定であれば限界点近くでも美しく撮れるのかを意識することが大切だ。

 

10年以上前のデジタル一眼では、感度が上げられない中でいかにキレイに撮るかを誰もが試行錯誤していたと思うが、私もその一人だった。当時の経験が今に生きていると思う。

 

シネマカメラ「S1H」はまさに動画撮影に最適だ

メインのカメラはパナソニックLUMIX S1H。Netflixが唯一認めたミラーレス一眼という別名を持つシネマカメラだ。その階調性の良さと絵の素直さは今まで使ってきたどのカメラよりも私の理想に近い。三脚要らずの手ブレ補正の良さと10bitの4K60pを時間無制限で撮影可能にするカメラだ。サブには同じLUMIXシリーズのS1を使用。

 

NDフィルターは必須アイテム

特に日中に明るいレンズを使って浅い被写界深度で撮る際は、NDフィルターで露出を調整する。露出設定が楽な可変NDを使用することが多い。

 

ソフトを駆使して理想の色にこだわる

動画を編集する際に特に気を配っているのは、色をキレイに見せることだ。DaVinci Resolveは、映画制作の現場でも使われているカラーグレーディングツールで、これを使用して思う色に近づけていく。時間のないときはLUT(ルックアップテーブルという色のプリセットのようなもの)を当てて簡単に済ますこともあるが、多くは一からトーンや色を調整する。

 

私はDaVinci Resolveの有償版を使用しているが、ノイズリダクションなどの一部の機能を除いては無料で使うことができる夢のようなソフトなので、これを使わない手はないと思う。

 

編集からカラーグレーディングまでをこのソフト1本で完結することが可能で、これがあるからこそ自分の思った色が出せると言っても過言ではない。AppleのFCPXやAdobe Premiereなどでも似たことができるが、ソフトの起源がカラーグレーディングツールであるDaVinciの、色を触るための機能は奥が深く、多機能でもあるのが魅力だ。

 

カラーページ調整でイメージする色に仕上げる

DaVinci Resolveでのカラーページ調整。手法は人それぞれだが、各ノードで色調整、トーンカーブ調整、レイヤー処理、特定色の調整、ビネッティング調整など異なる処理を行い、自分のイメージする色に仕上げている。編集していて一番楽しい部分だ。

 

大型テレビにも出力しリアルタイムで確認する

編集環境はデュアルディスプレイに加えて、DaVinci Resolveのグレーディング状況をリアルタイムでモニターできるように大型テレビにも出力している。この状態で映像依頼者へのプレビューも行うことができるため重宝している。