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【2020ベストバイ】背面液晶のない「変なライカ」は自分のスイッチを入れてくれる ─ 我妻慶一さん

1年で世界のありようがガラッと変わってしまった2020年。あっという間に1年が終わってしまったという方も多いのでは? ほんの少しでも楽しんで明るい2021年を迎えていただきたく、プロの写真家やカメラライターに「2020年に買ってよかったモノ」を一斉調査しました! さあ、何が出てくるかな?

我妻慶一さんの2020年ベストバイ「ライカ M10-D」

ライカ M10-D

給付金をきっかけに清水の舞台から飛び降りた!

今年買ってよかった物はズバリ、「ライカ M10-D」。ちょっと変わったカメラだ。

変わったカメラの良いところは「現行品」の期間が長いところ。2018年の発売からいまだに後継機はない。発表されたときからずっと気になっていて、給付金をきっかけに清水の舞台から飛び降りてみた。実に2年近くかけて念願がかなった形だ。

背面液晶を排除した潔さ、想像力を使ってシャッターを切る

デジタルライカは「M9-P」に続き2台目。CCDからCMOSセンサーへの変化は大きく、DNGのデータにも現像時に余裕がある。また最高感度が20倍くらいになったので、1日のうち撮影できる時間が数時間増え、暗めの室内でも地明かりでそれなりのシャッター速度で撮影可能になった。

このカメラの一番の特徴はいさぎよく背面液晶を排除したこと。撮影後の確認をしないと、撮影のテンポが格段にあがる。

ライカ M10-D

撮影した画像を確認するには、スマホなどの専用アプリで確認するしかないが、このアプリと繋いだまま撮影をするとバッテリーの消費が倍以上に早くなる。なので現場で使うことは少ないが、撮影の合間や、帰り道などにざっくり確認するには十分だ。また、ボディの厚みがフィルム時代のM型に近くなり、握りやすいのも嬉しい。

ライカ M10-D

何よりこのカメラ、楽しいのひとことに尽きる。自分の操作がダイレクトに写真の出来に直結するというのは、とても楽しく面白い。そして少し怖い。

レンジファインダーなので画角もあまりシビアではなく、すぐ結果が見えるミラーレス一眼などよりも、自分の想像力を使ってシャッターを切ることが増えた。

ライカ M10-D

ライカ M10-D
ファインダー内表示

趣味カメラなので、レンズはフィルム時代から持っている沈胴式のズミクロンなどオールドレンズを多く使っている。ズームレンズがないので足を使う。バリアングルの液晶がないので腰を使う。快晴でISO100・F8。SS500の露出勘を使う。撮影という行為自体を楽しむならば、使う物は多い方が楽しい。マニュアル車などの楽しみ方に近いのかもしれない。

ライカ M10-D

サムレストの存在が自分にスイッチを入れてくれる

もうひとつ外見的な「変」な特徴としてサムレストが付いている。グリップが良くなるのは勿論だが、撮影時にこれを立ち上げるという行為で自分の中での撮影スイッチが入るのだ。

繰り返すが、このカメラはやることが多い。正確に言うと増やすことができる (オート露出のモードもあるので)。やることが多いということは集中力を使うので、自分自身で切り替えをしないと疲れてしまう。そういう意味で、自分の中での切り替えスイッチとして大いに役立っている。

ライカ M10-D

2020年、自分もまたテレワークの変化の波に巻き込まれた。仕事も減り、移動の時間なども削ることができるようになり、そういった空いた時間にちょっとした散歩がてら趣味カメラでブラつくことができるようになった。

そうした仕事以外の撮影で、いわゆる「お作法」を自分の中で意識しながら撮影できるデジタルカメラというのは少ない。「M10-D」は趣味で遊べるマニュアル車 (カメラ)、そんな位置付けの一台だ。

ライカ M10-D 実写作例

ライカ M10-D 作例

新しいカメラで必ずテストシュートするのは、実家で飼ってる犬! 興味津々な目で、こちらを見つめてくれた。

ライカ M10-D ズミクロン 5cm F2 絞りF2 1/90秒 ISO800

 

 

〈文・写真〉我妻慶一