2021年、オリンパス株式会社から独立し、ミラーレスカメラの「OM-D」「PEN」シリーズ、交換レンズ「ZUIKO」シリーズなどを製造・販売するOMデジタルソリューションズ株式会社が新たなスタートを切った。オリンパスの始まりは小さな顕微鏡メーカーだった。誕生以来100年の歴史を持つ「オリンパス」というブランド名はどこから来たのだろうか。
カメラブランドの由来
ギリシャの神々が住む山の名をブランドに
オリンパスの始まりは、顕微鏡の国産化を目指す山下長 (1889〜1959) が、1919年に現在の東京都渋谷区幡ヶ谷で創業した「高千穂製作所」にある。社名は鹿児島県と宮崎県にまたがる高千穂の峰から付けられた。これは山下が鹿児島県出身であり、兵役に就いていた時期に訓練を受けた高千穂の地に特別な思いを抱いていたことに由来する。
1921年になると、ブランド名として「オリンパス」が誕生し、製品に「OLYMPUS」のロゴが付くようになる。この「オリンパス」はギリシャ神話の神々が住むオリンポス山 (Mt. Olympus) から付けられたもの。なぜ、突然ギリシャ神話が出てくるかというと、社名の「高千穂」が日本神話の聖地であり、高千穂の峰を欧米の人々がよく知る神々の山、オリンポスに見立てたため。山下の「世界に通用する光学製品を作る」という強い思いが世界の頂をイメージさせる「オリンパス」という名を付けさせたのだ。
「ズイコー」は「めでたい光」という意味の「瑞光」から
顕微鏡製造からスタートした高千穂製作所が初めてカメラを発売するのは1936年のこと。1号機の「セミオリンパスⅠ型」(セミ判スプリングカメラ) は、他社に提供してもらったボディに自社製75mmレンズを搭載したもの。レンズは「ズイコー (ZUIKO)」と名付けられ、このブランド名は今なお使い続けられている。
その由来は社内に設けられたレンズ設計組織「瑞穂光学研究所」の略称「瑞光」にある。また、「瑞光」には「吉兆を知らせるめでたい光」という意味もあり、レンズ名に相応しいと考えられた。1939年にはボディも自社製とした6×6cm判、セミ判兼用の「オリンパスシックス」が登場する。こちらはレンズシャッターも自前のもので、「高峰 (コーホー)」という名前が付けられた。山に関する名前が続くのは、オリンパス創業者の好みだったのかもしれない。
「オリンパス ペン」の由来はやはり筆記用具だった
太平洋戦争が終わると、「高千穂製作所」という硬い名前からカメラのブランド名を冠した「オリンパス光学工業株式会社」に改められる。オリンパスにとって大きな転機となるのが、1959年発売のカメラ「オリンパス ペン」だ。高価で大きく、重いカメラが多い当時、高性能なのに小型・軽量・低価格を実現。開発スタッフは1コマが35mm判の半分の面積になるハーフサイズを採用することで、筆記用具のように携帯性に優れ、毎日持ち歩けるカメラになると考えた。製品名を筆記用具の「ペン (PEN)」としたのも、このコンセプトに基づいている。狙いは的中。サラリーマンの月給の約半分で買える「オリンパス ペン」は大ヒット製品となり、派生モデルが多数作られた。
この「ペンシリーズ」を開発したのが、米谷美久 (1933〜2009)。後に35mm一眼レフカメラの「OMシリーズ」、フィルムコンパクト機の「XAシリーズ」を生み出したオリンパスを代表する設計者の1人だ。いずれのカメラも、他社のカメラより小型軽量で携帯性に優れ、高性能という特徴を持つ。また、マクロ撮影に強いレンズや撮影システムを揃え、山岳写真家やネイチャーフォトグラファーに愛されてきた。その開発コンセプトは、今なおデジタルカメラの「OM-Dシリーズ」や「PENシリーズ」に受け継がれている。
参考文献 :『50年の歩み』(オリンパス光学工業株式会社 1969)
参考 : オリンパスグループ企業情報サイト「オリンパス製品の歴史」「沿革」