世界的に波乱の年だった2022年。2023年こそは明るく楽しい写真ライフが実現できることを願って、プロ写真家の皆さんに「2022年に買ってよかったモノ」を一斉調査しました。さあ、どんなアイテムが出てくるかな?
大浦タケシさんの2022ベストバイ「FUJIFILM X-T5」
X-Tシリーズは、私にとって思い入れのあるカメラ
「X-T2」「X-T3」と使用してきた富士フイルムのX-Tシリーズは、私にとって思い入れのあるカメラです。フィルムシミュレーションの絵づくりが気に入っていることに加え、アナログダイヤルを多用していることや、一眼レフライクでコンパクトなボディシェイプなど、古い人間である自分にとって好きになる要素の多い “静止画撮影用のカメラ” だったからです。露出補正ダイヤルの位置など一部の操作性に不満はあったものの、プライベートな撮影でも、仕事の撮影でも、持ち出す機会の多いカメラとなっていました。
ところが4世代目となる「X-T4」は、X-Tシリーズとして初めて手ブレ補正機構を内蔵してはいたものの、動画撮影にもウェイトを置いたコンセプトとなり、自分の思うX-Tシリーズとは異なるものへと変化してしまいました。特にバリアングル液晶モニターへの変更は、個人的にちょっと納得できないところ。そのため、下位モデルの「X-E3」とその後登場した「X-E4」が私にとってXシステムのメインのミラーレスに。さらに仕事用のカメラはほかのメーカーへと切り換えることになりました。
しかし、クラスを考えれば致し方ないところですが、X-EシリーズにはX-Tシリーズに比べAFに不足を感じることが少なくありません。週末に息子のサッカーの様子をカメラで収めることが多いのですが、コンティニュアスAF (AF-C) で撮影しているとAFフレームをしっかりと被写体に重ねているにも関わらず、撮影の最中アウトフォーカスになってしまうことがたびたび発生。しかもいいシーンのときに限って発生することが多いのです。「カメラを変えるしかないかなぁ」などと思っていた矢先に「X-T5」が発表されたのです。
静止画に原点回帰を果たしてくれた「X-T5」
さほど期待せずに向かった「X-T5」の記者発表会でしたが、気持ちが大きく揺れ動いたのが「静止画スタイルの原点に立ち返る」というメーカーの発言。今回のコンセプトには心躍るものがありました。
もちろんカメラの仕様は静止画撮影に適したものに変更されており、液晶モニターはバリアングル式から「X-T2」「X-T3」で採用されていた3方向チルト式に、ボディは厚みこそ「X-T4」と同じであるものの、横幅と高さは小さく、以前に近いシェイプとしています。カメラを構えた右手親指のみでは操作しにくかった露出補正ダイヤルもわずかに位置が移動し、ちょっとだけマシになっています。「そうだよ、そうだよ、静止画撮影用のカメラはこうでなくちゃ」というのが、記者発表会のあとのハンズオンで「X-T5」を触ったときの私の正直な感想でした。
さらに、イメージセンサーをはじめとするキーデバイスはXシステムのフラグシップ「X-H2」と同じとなり、AFの予測アルゴリズムの改善によりAF-Cでの安定した測距を実現しているなど、まさに自分の思ったようなスペックで “写真機” と呼ぶに相応しいつくりとしているではありませんか。もちろんその場で「またX-Tシリーズに戻ろう。このカメラを手に入れよう」と思ったのは言うまでもありません。
早めにお店に予約をいれたこともあり、発売開始初日に「X-T5」を手にすることができました。以来、前述した子どものサッカーをはじめ、スナップや物撮り、そしてレビュー記事用の撮影などに持ち出しています。また、クイックメニューやファインダー表示などをカスタマイズし、すっかり自分仕様の「X-T5」となっています。“静止画撮影用のカメラ” として本来のあるべき姿に戻ったと述べてよい「X-T5」。私にとって良き相棒になってくれそうです。
実写作例
肖像権の絡みもあり、お見せできるような写真ではないですが、AF-Cでの被写体の喰い付きはXシステムのミラーレスとしてダントツ。ISO3200での撮影ながら、モニターでの拡大率50%の閲覧であればノイズの発生や解像感の低下など全く気にならないレベルです。