2026年のカメラグランプリは「α7 V」が堂々受賞。同時に「FE 50-150mm F2 GM」がレンズ賞となり、ソニーは2冠獲得という栄誉に輝いた。カメラ業界をリードする「システム」の強みとその未来について、商品開発をリードするソニーの事業責任者に『CAPA』編集長の菅原が話を聞いた。

史上初! 大賞とレンズ賞2度目の2冠獲得を達成
菅原 大賞、レンズ賞のダブル受賞、おめでとうございます。前回のW受賞が2020年、「α7R IV」と「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」でした。2021年には「α1」で大賞、2022年のレンズ賞が「FE 50mm F1.2 GM」。そして2023年に「α7R V」、2024年に「α9 III」で大賞、昨年は「FE 28-70mm F2 GM」でレンズ賞を獲得しました。
※「大賞」「レンズ賞」の同時受賞 (2020年、2026年) を同一メーカーが果たしたのは史上初。2026年5月15日時点。
岸 「FE 50-150mm F2 GM」とペアとなるF2の標準ズームですね。

菅原 αの強みについて、作り手側の立場から話していただけますか。
町谷 ボディの強みは、画質の根幹であるイメージセンサーの開発、設計、製造を自社グループ内でできること。カメラは数年にとどまらずかなり先を見据えて開発しますから、長期にわたるロードマップを引いたり、センサーとカメラをどう連携して価値を生み出していくか長期的ビジョンを持てたりする。グループ内にAI技術もあり画像処理エンジンも作れる。自前で開発できるのは強いです。

岸 Gマスターは今年で10年目を迎えました。設計者には理想とする光学系がありますが、制約により諦めることが多い。しかし前例のない非球面レンズなどの多くの技術進化により、今まで難しかった設計が可能になりました。
菅原 その積み重ねが「FE 50-150mm F2 GM」に結実したのですね。
岸 昨年受賞の「FE 28-70mm F2 GM」もですが、F2で高性能を維持しながら普段使い可能なサイズに小型化できたのは積み重ねの成果と言えます。F2ズームは大きいと誰もが考える。それをいかにコンパクトに作るか試行錯誤を続けました。そしてズームというより “いろいろな焦点距離を持った単焦点レンズ” と考えて開発しています。光学的にも単焦点に匹敵する性能があります。
菅原 Gマスターは開放からしっかり性能が出ないといけないですからね。
岸 1段明るいのに開放性能はF2.8にまったく劣りません。通常の設計ではなかなか実現できず、部品管理、組み立て、調整まで、別次元のレベルで作り込まないと出せない性能なんです。F2ズームを新しいカテゴリーとして今後も育てていきたいですね。
ソニー α7 V

有効画素数 最大約3300万画素 (静止画時)
撮像素子 35mmフルサイズ Exmor RS CMOSセンサー
AF測距点数 最大759点
高速連続撮影速度 電子シャッター時 最高約30コマ/秒、メカシャッター時 最高約10コマ/秒
ファインダー 0.5型 約368万ドット 電子ビューファインダー (倍率 約0.78倍)
液晶モニター 3.2型 約210万ドット マルチアングル
手ブレ補正 ボディ内5軸手ブレ補正 (中央7.5段、周辺6.5段) ※CIPA2024規格準拠
幅×高さ×奥行き 約130.3×96.4×82.4mm
質量 約610g (本体のみ)、約695g (バッテリー、メモリーカードを含む)
ソニー FE 50-150mm F2 GM

レンズ構成 17群19枚
開放絞り F2
最小絞り F22
絞り羽根枚数 11枚 (円形絞り)
最短撮影距離 ワイド端 0.4m 、テレ端 0.74m
最大撮影倍率 0.2倍
フィルター径 95mm
最大径×長さ φ102.8×200mm
質量 約1340g (三脚座を除く)
CAPA編集長・菅原の考える「今回の製品が選ばれた理由」
菅原 ここで私の、今回の選考理由を紹介させていただきます。
「α7 V」はフルサイズミラーレスのベーシック機。部分積層型CMOSセンサーにより、風景やポートレートなどディテール表現を重視する被写体を解像度高く描写する。階調のつながりやシャドー部の粘りも良好で、編集耐性の高いRAWデータが得られる。AF性能も大きな強み。AIプロセッシングユニットを搭載し多彩な被写体認識に対応。実用度の高さがこの機種の大きな価値である。
一方、「FE 50-150mm F2 GM」の魅力は、ズーム全域F2という前例のない大口径の明るさと、XAレンズなどを贅沢に配置した光学設計により、Gマスターらしい優れた描写性能を一本で両立していること。特にポートレート撮影では、50から150mmまでの多用する焦点域をカバーしつつ、単焦点レンズ級の解像力と美しいボケを自在に扱えるため、撮影の自由度が飛躍的に高まる、と評価しました。
さらに今回、カメラとしての魅力を3つに整理してみました。
- 動体撮影時のブラックアウトフリー高速連写が滑らかで快適。
- AFの被写体認識と追従性能が格段に高まった。
- ホワイトバランスの色再現性が向上し、記憶色の表現まで可能になった。特にAWBはAIを活用したディープラーニングにより、難しい環境下でも最適な色温度を判断して撮影できる。
記憶色まで想像してカメラが絵づくりするのかというぐらい、AWBが作り込まれていると感じました。

表現の楽しさを感じて撮影の機会を広げてほしい
町谷 ありがとうございます。「α7 V」はベーシック機。プロやハイアマチュアの方に加えて、これからどうやって撮影を楽しもうかなという広い顧客層に届ける製品です。「自分の思いどおりに撮れる!」「自分で表現できて楽しい!」と感じて、撮影の機会を広げてほしいというのが一番の狙いになります。
また、一眼レフカメラではミラーにより被写体がどうしても消失してしまう。しかしブラックアウトフリーなら常に被写体を見ながら撮影できる。「α7 V」の導入で、多くの方にこの撮影体験をしていただきたいんです。
菅原 自分で動くものを撮らないと、このすごさは実感できないですからね。
町谷 さらに画像処理エンジンとAI処理機能を、今回1個の「BIONZ XR2」に統合でき、よりAIと画像処理が密に連携した複雑な処理が可能になりました。今までAI技術はAFを中心に使っていましたが、画質などの改善にも能力を広げることができました。
岸 「FE 50-150mm F2 GM」は前述のとおり “焦点距離を変えられる単焦点レンズ” を目指しました。このF2ズームは、いずれ多くの人に今の大三元レンズの感覚で使っていただきたいんです。もちろんプロも大歓迎ですが、初めて写真を撮る方にこそ大判センサーと大口径レンズの組み合わせでしか撮れない世界を体感してもらいたいですね。
菅原 かつてないF2という望遠の世界で、ユーザーがどんな作品を作り出していくのか? その結果もいずれ出てくるでしょうね。「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」があればとりあえず事足りていたのが、このレンズが出てきたことによって常識が変わりました。
岸 同じ絵でも一段明るいレンズで撮れることで、人とは違う絵になる可能性に満ちていると思います。

ソニーの持つ可能性に今後期待したいことは
菅原 今回受賞した2製品は、従来のミラーレス一眼の先を行く先進性能を備えていますが、先日「α7R VI」が発表され、とどまるところ知らずといった勢いです。技術を出し惜しみせず、新しいことを盛り込んでいくというのは素晴らしい。表現の道具としてさらに磨きをかけていってください。
そして、ここまで被写体認識性能が高まると、アマチュアや一般の人への貢献度がすごく大きい。撮影技術がなくて撮れなかったものが撮れるようになる。野鳥、動物、飛行機といった、諦めていたものに全部連写でピントが合うじゃないですか。これは撮れたときの感動がすごい。そんな体験ができるのも、この機材があるからこそです。
町谷 社内でも “これまで撮れなかったものが撮れるカメラ” と全員で言って開発をしています。コンセプトは “偶然じゃなく必然”。不可能が当たり前に撮れてしまう。「α7 V」は機能を詰め込みすぎじゃないかとも言われますが、ベーシック機にこれだけの機能があるからこそ、どなたでもいい写真が撮れる。それによって写真の楽しさ、レンズ交換式カメラの良さを知って、さらに楽しんでいただきたいんです。
菅原 アマチュアが良い写真を撮れると、プロの領域が脅かされそうですが、カメラの進化をプロが悲観することはない。自分が望むシーンを確実に撮れる安心感は、その先にある作品性の追求に意識を向けることにつながります。プロ・アマを超えて、新しい表現の可能性を広げるシステムがさらに進化していくことを期待します。

αシステムを通して「感動体験」をユーザーに届けたい
菅原 最後に、今後どのような価値、そして撮影体験をユーザーの方々に届けていきたいかをお聞かせください。
岸 今、ユーザーの使い方が非常に多様化しています。皆さん、多彩なレンズを付けて楽しんでいますし、動画と静止画の境目もなくなっている。さらに写真を共有する場もずっと広がっている。普通に写真を撮るのは当たり前で、いかに人と違う写真や、自分らしい表現をするかといった、さまざまな新しい楽しみ方をしています。われわれも、そういう方たちがさらに写真を撮ったり、どんどん投稿したりして楽しめる世界、自分がいろいろな表現ができる世界を作っていきたいです。
そして撮れた写真自体の楽しさもありますが、やはり撮影という行為自体が楽しい商品は強い。そこに一番の喜びがあって、大事にしたい。今後も最高の技術を開発して、生み出された技術を使って、より多くの方にカメラを楽しんでいただきたいですね。
町谷 私も、撮影体験とかユーザーの求めるものが多種多様になっているなと感じていて、その中で映像の楽しみ方もいろいろ変わってきている。アウトプットすることも大切で、それにより撮影の技術や表現がうまくなっていく。そうした自分自身の成長も楽しんでいただけるのではと思います。それを後押しできるような技術やカメラ商品というのを、われわれは引き続き提供していきたいと思います。

〈協力〉ソニーマーケティング株式会社
〈取材〉CAPA編集部
〈取材撮影〉高原マサキ