
スペインが延長戦の末、アルゼンチンとの接戦を制し、16年ぶり2度目の優勝を果たして幕を閉じた「FIFAワールドカップ2026」。スポーツフォトグラファーの岸本勉さんによる現地取材の後編をお届けします。貴重なスタジアムでの撮影の様子から、岸本さんが拠点としたメキシコの様子まで、スナップでレポート!
- ピッチで撮ったサムライブルーの軌跡
- フォトグラファーが見たサッカーW杯の舞台裏
移動は飛行機のため機材はできるだけコンパクトに

今大会はアメリカ・カナダ・メキシコの3か国共催。北中米16会場を舞台に48か国が出場する、かつてない規模のワールドカップとなった。そのためか、グループリーグではひとつの試合にフォトグラファーが集中し、フォトポジションがぎゅうぎゅうになるという場面は、これまでの大会ほど多くなかったように感じる。

現地へのアプローチも人それぞれだ。私はメキシコシティから入り、メキシコを拠点にダラスやヒューストン、そして再びメキシコ国内へと移動しながら取材を続けた。
移動は当然、飛行機となる。だからこそ荷物はできるだけコンパクトにまとめたい。小さめのリュックにカメラを4台とPC、予備バッテリーなどを入れ、ペリカンのケースにはレンズを収納して機内へ持ち込む。

いつものスタイルではあるが、テキサス州やメキシコ・モンテレイでは天候の影響でフライトが遅延することも多く、ロストバゲージのリスクも考えると、撮影機材だけは常に手元から離せなかった。
とにかくデカい! ダラスAT&Tスタジアムでの撮影

6月13日、ダラスへと移動した。しかしフライトが大幅に遅れ、到着は深夜。アクレディテーション (取材パス) を受け取れず、翌日の試合当日に手続きをすることになった。朝早く会場入りし、アクレディテーションセンターへ向かう。試合当日にパスを受け取るメディアはほとんどおらず、ものの数分で手続きを終えることができた。


ダラスのAT&Tスタジアムは、とにかくデカい。デカすぎる。メディア用セキュリティゲートを抜けてからフォトグラファールームまで、歩いて7〜8分。スタジアムのスケールを実感する距離だった。


フォトグラファールームは、スタジアムの大きさを考えると意外とコンパクト。それでも別室にはキヤノン、ニコン、ソニーのサービスデポがあり、機材のレンタルや点検、クリーニングなどを受けることができた。

北中米の全会場にサービスデポが設置されていたため、オリンピックのように一か所へ大量の機材を集約するスタイルではなく、各会場へ分散配置されていたのも特徴だった。スタジアムによってはレンタル希望者が多いため予約システムが導入され、自分の番号が表示されたら受け取りに行くという効率的な運用も行われていた。


フォトグラファールームには、もちろんWi-Fiや電源が用意されていたが、ピッチサイドもこれまでの大会と同様、各ポジションにLANケーブルが引かれていた。多くの通信社カメラマンはカメラを直接接続し、撮影と同時に画像を送信していた。一方、日本のフォトグラファーはPCやタブレットに写真を取り込み、選別して送信するスタイルも多かったように思う。



開催国メキシコの街で切り取ったワールドカップの風景

今回の取材では、試合の日以外の多くの時間をメキシコで過ごした。ペレが世界を魅了した1970年、マラドーナが伝説を築いた1986年、そしてアメリカ、カナダとの共催となった2026年。メキシコは史上初、3度目のワールドカップ開催国だ。


そんなサッカー大国だけあって、街は大会一色だった。街を歩けば、あちこちでグリーンのユニフォーム姿を見かける。アメリカへ渡ってからも、メキシコ系住民の多い地域ではグリーンがひときわ目立っていた。


正規品のユニフォームを着ている人もいれば、非正規品を着ている人もいる。それでも、みんな誇らしげに代表カラーを身にまとい、サッカーを楽しんでいる姿が印象的だった。


メキシコ人の友人がブーツ工場を経営しており、ある日その工場を訪ねる機会があった。制服を着る仕事が少ないこの国で、従業員たちはメキシコ代表のユニフォーム姿で働いていた。その光景は、この国のサッカー熱を象徴しているようで、思わずシャッターを切った。

前編でも触れたように、競技写真は主にニコンのカメラとレンズで撮影した。一方、街中のスナップでは富士フイルムの「GFX100RF」が常に首から下がっていた。

「GFX100RF」はサイズ感、AF、画質のバランスがとてもよく、どこへ行くにも持ち歩きたくなる一台だった。デザインもすっきりとしていて、被写体に余計な威圧感を与えない。だからこそ、その土地の日常や人々の自然な表情を切り取ることができたように思う。私にとって、とても相性の良いカメラだった。

4年後のワールドカップは、スペイン、ポルトガル、モロッコの3か国共催となる。日本代表がどんなチームで挑むのか、新たなスター選手は生まれるのか。それはもちろん楽しみだ。そして写真家としては、文化も街並みも異なる3つの国で、どんな光景に出会い、どんな一枚を残せるのか。今から楽しみでならない。


- 岸本 勉 (Tsutomu Kishimoto)
- 1969年生まれ、東京都出身。10年余り、スタッフフォトグラファーとしてさまざまな国内外のスポーツイベントを撮影。2003年に独立し「PICSPORT (ピクスポルト)」を設立。良くも悪くも人の記憶に残る写真を撮ることを心がけている。オリンピックは夏季・冬季合わせて17大会、FIFAワールドカップは9大会、ほか国内外問わずさまざまなスポーツイベントを取材。国際スポーツプレス協会 (AIPS)、日本スポーツプレス協会 (AJPS) 所属。
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