
2026年7月20日の午前4時 (日本時間) から決勝戦が行われる「FIFAワールドカップ2026」。日本は決勝トーナメントに進むも、残念ながらブラジルに敗れる結果となりました。カナダ、メキシコ、アメリカ3か国で開催されている史上最大規模の「FIFAワールドカップ2026」を、スポーツフォトグラファーの岸本勉さんが現地取材。試合の決定的瞬間から取材の裏側、現地の盛り上がりまで、2回に分けて紹介します。前編では、日本チームの激闘をレポート!
FIFAワールドカップ取材を振り返って
終わってみれば、日本代表は1勝1敗2分。森保一監督や選手たちが掲げた「優勝」という目標には届かなかったものの、日本中を大いに沸かせたワールドカップだった。
前回、2022年カタール大会では「死の組」と呼ばれたグループリーグでドイツ、スペインを破る快挙を成し遂げた。当時はまさに歴史的な勝利だったが、その後の日本代表はドイツやブラジル、イングランドといった世界の強豪国とも対戦し、親善試合とはいえ勝利を重ねてきた。その積み重ねがあったからこそ、今大会への期待はこれまで以上に大きかった。
1994年アメリカ大会までは24か国だった出場国は、1998年フランス大会から32か国となり、今大会は48か国へと拡大。開催国もアメリカ、カナダ、メキシコの3か国共催となり、ワールドカップはさらに巨大な大会へと進化した。私自身、今回でFIFAワールドカップの取材は9大会目となる。
【初戦】オランダ戦 (6月14日 ダラス)

6月14日、アメリカ・テキサス州ダラスで日本代表の初戦が行われた。相手は強豪オランダ。前日にメキシコからダラスへ移動し、試合は比較的早い時間のキックオフだったため、こちらも早めにスタジアムへ向かった。
スタジアム周辺には数多くのサポーターが集まり、その中でも日本人サポーターの多さがひときわ目を引いた。初戦ということもあり、国歌斉唱時に森保監督が見せる表情を撮りたいと考え、選手入場シーンの撮影をあえて見送り、ベンチ前にポジションを取った。

森保監督就任以来、目に涙を浮かべる姿は何度も撮影してきた。しかし、涙が頬を伝う姿を捉えたのは、この日が初めてだった。巨大なスタジアムとは対照的にベンチ前は非常に狭い。突然テレビカメラが目の前に入り、周囲では同業者のカメラがぶつかり合う。そんな混雑の中で残した一枚だった。
【第2戦】チュニジア戦 (6月21日 モンテレイ)

第2戦はメキシコ・モンテレイに舞台を移し、チュニジアと対戦した。暑さ対策のため、キックオフは22時。試合終了は日付が変わった午前0時過ぎとなり、ホテルへ戻ってデータ整理を終えると翌朝一番で移動という慌ただしいスケジュールだった。それでも日本代表は4−0で快勝した。
普段は400mm、135mm、そして26mmを使い分けているが、この日は試合の空気感をもう少し表現したいと考え、いつもの135mmではなく85mm F1.2を選択した。そのレンズで撮影した写真は、『Sports Graphic Number』誌で見開き掲載となった。
【第3戦】スウェーデン戦 (6月25日 ダラス)

グループリーグ最終戦の相手はスウェーデン。再びダラスへ戻っての一戦となった。勝てば決勝トーナメントで、初戦は同じテキサス州ヒューストン。3位通過となればニューヨークへの移動となるため、多くのフォトグラファーがヒューストン開催を願っていた。
この試合では、日本のゴールを何度も救ってきた守護神・鈴木彩艶を撮りたいという思いから、後半はタッチライン側へポジションを変更した。また、伊東純也を背後から狙うなど、これまでとは違うアングルで撮影することもできた。

同じ被写体を撮る以上、ほかのフォトグラファーとは違う切り取り方ができなければ、自分がそこにいる意味はない。だからこそ、たとえゴールシーンや歓喜の瞬間を正面や至近距離で撮れなかったとしても、立ち位置やレンズを変えながら、自分らしい一枚を残すことを常に意識している。
【ラウンド16】ブラジル戦 (6月29日 ヒューストン)

グループリーグを2位で突破した日本は、ヒューストンでブラジルとのラウンド16に挑んだ。この試合では、あえてトリビューン席 (スタンド上段) から撮影することを選んだ。勝っても負けても、この試合を象徴する一枚、見る人の記憶に残る一枚を撮りたいと思ったからだ。
2010年南アフリカ大会でも、日本代表の初戦をあえてトリビューン席から撮影したことがある。その時に撮影した一枚は『Sports Graphic Number』誌の表紙に採用された。多くのフォトグラファーとは違う写真を残したい ── そんな思いで選んだポジションが、結果的に最高の一枚につながった経験だった。

しかし、今回のブラジル戦では歓喜の瞬間ではなく、2−1という敗戦を物語るカットだけが残った。ワールドカップは4年に一度しかない。だからこそ、目の前で起きる一瞬一瞬をどう切り取り、どう記録として残すか。その積み重ねこそが、スポーツフォトグラファーとしての自分の仕事なのだと、改めて感じた大会だった。

使用機材
■レンズ
ニコン NIKKOR Z 600mm f/4 TC VR S
ニコン NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR S
ニコン NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
ニコン NIKKOR Z 85mm f/1.2 S
ニコン NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
ニコン NIKKOR Z 26mm f/2.8
■三脚
3 Legged Thing Alan 2.0
■メモリーカード / ストレージ
Nextorage NX-B2PROシリーズ (CFexpress 4.0 Type B)
Nextorage NX-P2SEシリーズ (ポータブルSSD)
- 岸本 勉 (Tsutomu Kishimoto)
- 1969年生まれ、東京都出身。10年余り、スタッフフォトグラファーとしてさまざまな国内外のスポーツイベントを撮影。2003年に独立し「PICSPORT (ピクスポルト)」を設立。良くも悪くも人の記憶に残る写真を撮ることを心がけている。オリンピックは夏季・冬季合わせて17大会、FIFAワールドカップは9大会、ほか国内外問わずさまざまなスポーツイベントを取材。国際スポーツプレス協会 (AIPS)、日本スポーツプレス協会 (AJPS) 所属。
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