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インドが「ソバの生産」に注力! 不透明感が増す日本のそば事情を変えるか?

2022/9/27

2022年9月、インド東部のメーガーラヤ州にソバの実を生産する農家が集い、そば粉から作ったパンやスイーツなどが披露されるなど、そばをテーマにした一大イベント「メーガーラヤ・ソバ・グローバルショーケース2022(Meghalaya Buckwheat Global Showcase 2022)」が開かれ、日本の関係者も招かれました。一体なぜメーガーラヤ州は、ソバの実の生産に注力しているのでしょうか?

日本とインドの間で”細くて長い”貿易になる?

 

そば粉の原料になるソバの実の生産にメーガーラヤ州の農家が注力している理由の1つは、そばの高い健康効果。食後の血糖値の上昇度を示すグリセミック指数(GI)というものがあり、糖質が多くて食物繊維の少ない食品はGI値が高く、血糖値を一気に上昇させて、糖尿病や肥満を起こす原因になると考えられています。GI値が70以上は高GI食品に、56〜69の値だと中GI食品になりますが、そばのGI値は55前後。糖分を穏やかに吸収しながら、糖尿病や肥満などを防ぐ低GI食品なのです。また、そばは繊維質が豊富で、良質なタンパク質を含んでいるため、栄養価が高く、栄養バランスに優れた「スーパーフード」の1つとされています。

 

インドは、都市部の約28%の人が糖尿病または糖尿病予備軍と言われるほどの糖尿病大国。そこで、小麦や米をソバに切り替えて、健康的な生活を送ろうという動きが出てきているのです。

 

もう1つの理由として、ソバの実の需要が世界的に増加していることが挙げられるでしょう。インドのMarket Data Forecastによると、2022年における世界のソバの実市場規模は14億ドル(約2040億円※)。2027年までの今後5年間で、年平均成長率2.9%で伸びていくと見られています。2020年の国連食糧農業機関(FAO)の統計によると、世界のソバの実の生産量は約181万t。生産量の多い上位国はロシア(89.2万t)、 中国(50.4万t)、ウクライナ(9.7万t)です。生産量で世界第6位の日本も7~8割程度を輸入に頼っており、ロシアや中国、アメリカから多くを輸入している状況。最近では、米中摩擦の影響で中国が減産するなどしたため、ソバの実の価格は高騰していますが、上述した健康的な側面から、そばの需要は世界的に伸びていくと予測されているのです。

※1ドル=約145.7円で換算(2022年9月22日現在)

 

インドのソバ輸出に日本も期待

比較的栽培しやすいと言われるソバ。メーガーラヤ州ではここ3年間で、理想的な植え付け時期を把握するために、何度もソバ栽培を試みるなどして、地域での最適な農法を探ってきました。同州はようやくその農法を確立しつつあるようで、少しずつ栽培面積を拡大していく段階に至っていると見られています。

 

それに加えて、メーガーラヤ州では日本が道路建設プロジェクトを支援するなどしてきた歴史があり、昔から日本とつながりのある地域。そのため、そばの輸出先の1つとして日本に熱い視線を送っているようです。今回のイベントに出席した在インド日本国大使館の北郷恭子公使は「そばは日本文化の1つであり、日本のソバ栽培の専門家たちは技術移転という形で、ソバ栽培技術の普及に取り組んでいます」とコメント。日本もインドに期待を寄せているようです。

 

最近の日本では、2021年に中国産のそば粉が値上げしたうえ、2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻によって、ロシア産のソバの実の供給が止まる可能性も取り沙汰されており、そばを巡る状況は不透明感を増しています。今後インドは、日本にとって重要なソバの実の生産国になるかもしれません。

 

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