僕が小学生の頃、我が家の定番メニューに「どんど焼き」というものがあった。僕も弟も大好きなメニューだったのだが、簡単に言えば、すごくシンプルなお好み焼きだ。
小麦粉、水、キャベツ、ソース。それがどんど焼き
どんど焼きはどんなものかというと、小麦粉を水で溶いたものに、キャベツを入れて、フライパンで焼いたものだ。それにソースをかけて食べる。弟に至っては、これをナイフとフォークで食べていた。
なんでそんな洋風な装いで食べていたのかは謎だが、僕と弟はどんど焼きが出るとテンションが上がっていたのは覚えている。
日本の粉ものの起源は奈良時代
『お好み焼きのひみつ』(たまだまさお・イラスト/望月恭子・構成/学研プラス・刊)は、おたふくソースの協力の下、お好み焼きのルーツやバリエーションなどについて書かれたマンガだ。このマンガによれば、日本の粉ものの起源は、奈良時代に遣唐使の吉備真備(きびのまきび)によって中国から伝わったようだ。
お好み焼きのもとになったのは煎餅(せんびん)といって、小麦粉を水でといて平らに焼いただけのシンプルなものだったのよ。
『お好み焼きのひみつ』より引用
その後、千利休がうどん粉を水と酒で練った生地を薄くのばして焼き、そこに味噌を塗って丸めた「ふの焼き」というものを考案。茶菓子としてふるまっていたという。これらを起源として、さまざまなバリエーションが生まれ、関西や広島をはじめ、全国各地にご当地お好み焼きが生まれた。第二次世界大戦後、食料が乏しい時代によく食べられて、そこから発展していったそうだ。
我が家のどんど焼きは粉もの歴史上まれに見るシンプルさ
ちなみに、明治時代に「どんどん焼き」というものがあったようだ。
どんどん焼き:生地を丸くのばし、牛肉、キャベツなどをのせて焼いたもの。
『お好み焼きのひみつ』より引用
うむ、我が家のどんど焼きよりちょっと豪華だ。なんとなく悔しい。我が家のどんど焼きに似ているのは、「一銭洋食」というもの。昭和の初め頃に1銭(現在の貨幣価値では約35円)で食べられる、子どものおやつのようなもの。
一銭洋食:生地の上に、粉かつおやとろろ昆布、ねぎなどをのせ、ウスターソースを塗ったもの。
『お好み焼きのひみつ』より引用
シンプルさで言えば、我が家のどんど焼きは一銭洋食並みだ。
なんで「どんど焼き」なんだろう?
さすがにいい大人になって、今どんど焼きを自分で作って食べることはない。近くのお好み焼き屋へ行き、たらふく具だくさんのお好み焼きを食べる。ただ、無性にどんど焼きが食べたくなるときがある。一度自分で作ってみたことがあるのだが、どうも母親が作ったものとは違う。
うちの母親は、料理をするときに分量などを量ったりするような人ではなかったし、味見などもしない。しかし、僕が作るとなんだか違うのだ。もう母親はこの世にいないので、どんど焼きの秘密を聞こうにも聞くことはできない。聞いたところで「さあ?」と真顔で答えられるだけだとは思うが。
あと、なんで「どんど焼き」という名前だったのだろうか。その謎は明かされることはない……。
【著書紹介】
お好み焼きのひみつ
著者:たまだまさお(イラスト)、望月恭子(構成・文)
出版社:学研プラス
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