本・書籍
2016/12/8 0:00

ひとりぼっちの徹夜メシ

わたしは徹夜が好きです。
変でしょうか?

 

 

好きなのは、たまにする徹夜です。1ヶ月に1度くらいなら「楽しい」と感じるほどです。「わくわく」と心が浮き立ちます。

 

徹夜の楽しみは「夜食」にあります。夕食を済ませてから数時間後におこなう深夜の飲食、略して夜食。

 

特に「正念場を乗りきるための夜食」のことを、わたしは「徹夜メシ」と呼んでいます。

 

 

なぜ、深夜に食べるのか?

 

いつもなら寝る時間なのに、本日中に済ませるべきことがまだ終わっていない。仮眠して思いどおりの時間に目覚める自信がない。それならば徹夜するしかありません。

 

疲労、後悔、眠気、迷い、不安など、さまざまな思惑やストレスを打ち払って作業を完遂するためには、多くのエネルギーを必要とします。

 

そんなとき、心と体を奮い立たせるために食べるのが「徹夜メシ」です。

 

 

夜食をどこで調達するか?

 

徹夜すると決めたら、腹ごしらえするための「買い出し」に出かけます。買い置きのスナック菓子やインスタントラーメンでは気が済まないからです。もっとおいしいものを食べたい。

 

『夜食の文化誌』(西村大志・著/青弓社・刊)によれば、江戸時代から明治大正期にかけての深夜飲食(夜食)は、仮設店舗(屋台)によるものが盛んだったようです。

 

現代人のわたしが利用するのは、24時間営業のコンビニです。このときのわたしは臨戦態勢であり、全身からあふれ出そうになる殺気を抑えながら歩いています。このときの気分は「悪・即・斬」です。

 

徹夜メシ選びに間違いがあってはなりません。夜食の買い出しは、いわば「徹夜の前哨戦」であり、まさに真剣勝負なのです。

 

 

深夜のコンビニは「品数」が物足りない

 

真夜中のコンビニに行くと、厳しい現実を突きつけられます。

 

夜11時をすぎたコンビニでは、チキン類やフランクフルトなどのホットスナック、中華まんが姿を消しつつあるからです。たとえ残っていたとしても、数十分後の廃棄時間を待っている「くたびれた」見た目のものばかり。

 

たいていのコンビニは、深夜のうちに保温用ショーケースの洗浄をおこないます。フライヤーの電源もOFFにします。24時間営業が売りのコンビニですが、ホットスナックのコーナーだけは「店じまい」する時間帯があるのです。

 

おにぎりやチルド弁当の品ぞろえにも期待できません。コンビニの深夜帯は、人気がある商品は売り切れているからです。

 

深夜のコンビニという不利な条件下で、自分好みの夜食をいかに探り当てるか。これも「徹夜メシ」の醍醐味といえるでしょう。

 

 

徹夜メシの心得

 

理想を言えば、お肉を食べて精をつけたい。「カツカレー」や「焼肉カルビ弁当」のようなものが残っていればありがたいのですが……うちの近所のコンビニでは売り切れていることが多いです。

 

唐揚げやハンバーグならば、コンビニ各社のプライベートブランド(冷蔵パウチ・冷凍食品)が充実しています。

 

しかしながら、湯せんや解凍に手間を掛けたくありません。「これから徹夜するぞ!」という勢いが減じてしまうからです。

 

 

わたしが愛する徹夜メシ

 

結論を述べます。「マイ・フェイバリット・徹夜メシ」は、サンドイッチとエナジードリンク缶です。運良くホットスナックが残っていたら、ジャンボなフランクフルトを追加します。

 

わたしが好きな「ハムサンド」や「ツナサンド」は、深夜1時くらいに出向いても、どちらか必ず在庫があります。売り切れていたら「たまごサンド」で我慢します。わたしはサンドイッチが好きなのです。運良く「カツ系のサンドイッチ」があれば、それを買います。

 

エナジードリンクは、アサヒ飲料の『モンスターエナジー』が好きです。徹夜メシのお供として2本買います。

 

1本目は『モンスターカオス』(オレンジ缶)を飲みます。2本目はカロリーゼロの『モンスターアブソリュートリーゼロ』(ブルー缶)です。レッドブルのロング缶よりも多いカフェイン成分(約140mg)を含有しているので、眠ってはいけない徹夜作業にうってつけです。

 

以上、わたしの「徹夜メシ」を紹介させていただきました。

 

 

(文:忌川タツヤ)

 

 

【文献紹介】

夜食の文化誌
著者:西村大志
出版社:青弓社

ラーメン、おにぎり、焼きそば、うどん、スナック菓子…。受験勉強や夜型生活になくてはならない夜食は、いまや巨大な市場を形成するほど人々に受け入れられている。人の心を和ますとされたり太る原因にされたりとさまざまに語られる夜食は、どのようにして日本に普及してきて、一つの文化として成熟したのか。文化的・歴史的な過程を丹念にたどりながら、落語の演目から都市の下層階層の問題を読み解き、屋台やラーメンの普及、若者文化や地方と夜食とのかかわりに戦前期の都市化のありようや食文化イメージの転換を見定めて、夜食と日本人との関係に鋭く斬り込む。食欲と知識欲をそそる文化史/文化誌。