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2015/12/22 0:00

ついつい使ってない?子どもに言ってはいけないNGワード

「ちょっと待っててね」

母親になってから、一体何回この言葉を口にしただろうか。

 

 

 

育児に加えて家事や仕事、いくつものタスクをこなしていく中、どうしても四六時中子どもと向き合っているわけにはいかず、ついつい「ちょっと待ってね」と子どもを待たせていることが少なくない。しかも、子どもはこちらが忙しいときに限って「ママー!こっち来てー!」「ママ、見てー!」と連呼する。なによ、もう! ちょっと待ってって言ってるじゃない! などとイライラしてしまうこともある。特に、自分に余裕がないときほど。

 

 

「ちょっと」って、どのくらい?

 

この「ちょっと待って」というワード、大人でも捉え方が様々な、非常に曖昧な言葉だ。そもそも「ちょっと」って、どのくらい? 何分? 何秒?

国語辞典には【ちょっと(一寸):物事の数量・程度や時間がわずかであるさま。すこし。】とある。意味としてはその通りなのだけれど、その「ちょっと」の感覚って人ぞれぞれ。たとえば、「ごめん、ちょっと遅れる」と待ち合わせしている友人から連絡があったとき、あなたは何分くらい遅れてくると想像するだろうか。あるサイトのアンケート結果では、「10~15分」と回答した人が最も多かった。ただ、あくまでも「待ち合わせにちょっと遅れる」ケースであり、「ちょっと帰りが遅くなる」場合なら、1時間程度までは許容範囲だという声も。つまり、「ちょっと」という言葉は、前後の流れによって、しかもその人の感覚によって、意味する時間が違ってくる。なんとも曖昧なワードなのだ。

 

 

子どもは「今」を生きている

 

子どもたちは、「今」を生きている。「今」しか見ていない。だから、何か悪いことをしたときは、すぐさま注意しなくてはいけない。「さっきどうして◯◯したの!」と言ったところで、「え、なんのこと?」なのだ。

 

良い行いをしたときも、すぐに誉めてあげなくてはいけない。なおかつ「具体的に」。これがとても重要。「偉いね!すごいね!」だけでは、子どもには的確に伝わらない。描写的に、具体的に何をしたから良かったのかを、しっかり伝えてあげなくては。加えて、子どもの想いを代弁してあげられると、さらに良い。「お友達に玩具を貸してあげられたね。◯◯ちゃんも使いたかったのに、我慢できたね。偉いね。」そこに、母親である自分の気持ちも付け加えられると、さらにさらに良い。「◯◯ちゃんが優しくて、ママ嬉しいわ」

 

行為ひとつを誉めるのに、そこまで言わなくてはいけないの? まどろっこしいな……などと思う人もいるだろうが、この点を抑えておくことが、非常に大切なのだ。ただ単に「偉いね」と誉めるのとは違い、子どもは、自分の行為をしっかり母親が見ていてくれた、自分の気持ちをわかってくれた、しかも大好きな母親が喜んでくれた、だから自分も嬉しい! またやろう! と思える。悪い行いをしたときは、何故いけなかったのかを理解し、これをすることで母親が悲しい気持ちになる、もうやめよう。そう思えるのだ。

 

 

子どもだって人間です

 

そんな「今」を生きている子どもだからこそ、「ちょっと」などという曖昧な言葉を使うことはよくない。「ちょっと待って」ではなく、「このお皿を洗い終わったらね」、「長い時計の針が12になったら行くね」というように、具体的な言葉で伝えなくては。いや、本当は、なるべく待たせないようにしてあげた方がいいのだ。「ママ、見て!」は、今、見てほしいのだから。1分待たせたら3分、3分待たせたら5分、5分待たせたら10分、子どもが機嫌を直すのに時間がかかる、要求にすぐ応じることで、結果自分の時間も増えるのだ、とは、我が子育ての師である方の言葉。小さな子どもだって、一人の人間。生まれて間もない赤ちゃんだって意思はある。まだ小さな子どもだからとないがしろにすることなく、一人の人間として真摯に向き合って接していくことが、子育てにおける大前提なのだなぁ。

 

宮野聡子さんの絵本『あとでって、いつ?』(PHP研究所・刊)は、普段「ちょっとまってね」「あとでね」を使ってばかりの自分にとって、グサリと胸に突き刺さるお話。読んだ後、我が子をぎゅっと抱きしめたくなる一冊だ。

 

 

(文・水谷 花楓)

 

【文献紹介】

あとでって、いつ?
著者:宮野聡子
出版社:PHP研究所

夕方、保育園から帰るとき、とっちゃんはママに言いました。「もっとあそんでいたいな」「あとで、あとで。さ、かえろう」とっちゃんの家は、おそうざいやさんで、これからお店が忙しい時間になります。家についても、とっちゃんは一人ぼっちでおもしろくありません。「ママ、あそぼ!」とっちゃんがいうと、「あとで あそぼ。えをかいて まっていて」と、ママからの返事……。とっちゃんは絵を描いて待ちました。けれど、画用紙を全部使い終わってもママはやってきませんでした。とっちゃんはママに聞きました。「ママ……“あとで”って、いつ?」「“あとで”は“あとで”。ちょっとまって、ってこと!」ママが大きな声で言ったので、とっちゃんは、それっきり、黙ってしまいました……。我慢するとっちゃんのけなげな姿や、親子の心が通じ合う姿を丁寧に描いています。読み終わった後、優しい気持ちになれる一冊です。