テレビが生む名言から人間の生き様を学ぶ、くすぶり系男子ライター福田フクスケの「魁(さきがけ)!! テレビ塾」。今回は、去る3月31日に、12年間メインキャスターを務めた報道番組を降板した古舘伊知郎の、番組最後の言葉から学んだ生き様を紹介します。
【今週の課題番組】
「報道ステーション」
2016年3月31日(木)21:54〜23:10
テレビ朝日系
自身のライフワークとして88年から03年まで続いた古舘伊知郎のトークライブ「トーキングブルース」が、14年10月に一夜だけ復活したことがある。
そこで古舘は、かねてから噂されていた「報道ステーション」の降板を否定し、「だってトークライブでガス抜きしたらと提案してくれたのはテレ朝の会長なんだから。……ということはやっぱり引導を渡されてるのか?」とネタにして会場を沸かせた。
のちの15年12月に開かれた記者会見によると、実際は自ら「番組を降りたい」と、このときすでに申し出ていたらしい。会見では「不自由な12年間でした」と不満を漏らしてみせた。
そして迎えた2016年3月31日。
降板は「自分なりのしゃべり」を追求したいというわがままが理由だとして、テレビ局や政権からの圧力ではないと強調。しかし、最後の最後に引用したの
は「人の情けにつかまりながら折れた情けの枝で死ぬ」という“浪花節だよ人生は”のフレーズだった。一見、キャスターとしての理想をまっとうできなか
った自戒に聞こえるが、権力に対する最大級の皮肉や恨み節にも受け取れるから面白い。
そう、古舘伊知郎は「話芸」の人だ。12年間、言葉と戯れるエンターテイナーとしての才能を封じられてきたのはあまりにもったいない。今後は“黒い池上 彰”として、「おしゃれカンケイ政治家版」のようなトーク番組のMCを務め、持ち前のウィットさでシニカルに権力者の本質をあぶり出してもらいたい。
【今週の名言】
「つるんつるんの無難な言葉で固めた番組など、ちっとも面白くありません」
by古舘伊知郎