中古マンション選びで、費用を節約したいと思ったら、視野に入ってくるのが30年〜40年など、ある程度築年数の経ったマンションです。特にリノベーションが行われた物件は人気です。しかし、そこに”落とし穴”があると語るのは、不動産のプロ・渕ノ上弘和さん。今回は、その落とし穴の正体を、渕ノ上さんに聞いてきました。
教えてくれた人
渕ノ上弘和さん
「資産価値」を重視した中古マンション選びをサポートする不動産エージェント、コンドミニアム・アセットマネジメント株式会社の代表。中学生の頃から不動産に興味を持ったという不動産オタクで、宅地建物取引主任者資格の講師や、大手マンション管理会社2社への勤務などを経て現職へ至る。
リノベーション済み物件に潜む落とし穴
まずメリットの話から。渕ノ上さんによれば、リノベーション済み物件はおすすめできるポイントも多々あるそうです。
「リノベーション済みマンションは築年数を問わず、設備はもちろん間取りなども最新のものに更新されており、新築と見間違えるほどに綺麗です。ローンもマンション購入費用と一緒に組める(別にリフォームローンを組む必要がない)うえ、不動産業者が売主となっている物件であれば住宅ローン控除も手厚く受けられる場合があります。
そのため、私も物件によってはおすすめするケースも多いです。しかし、築年数が経っていると”物件の賞味期限”が切れてしまっている恐れがあるので、しっかりチェックすることを忘れてはいけません。」(渕ノ上さん)
物件の賞味期限切れ、チェックリスト
1.耐震性能
まず注意したいのが、築38年以上の物件。というのも、耐震基準が新しくなったのが38年前だからです。
「1981年6月1日以降に建築確認を取得している新耐震基準に比較して、すべての物件が必ずしも著しく壊れやすい訳ではないものの、『購入時に使えるローン商品が大手メガバンクをはじめとして限られてしまう』、『風評被害が発生しうる(旧耐震物件は壊れやすい)』等の理由からリスクが大きくなります。なお、旧耐震物件でも、耐震工事を行っていたり、またはそもそもしっかりとした設計がされていることから基準をクリアしていたりして、耐震適合性証明書を取得できているものもあるので、個別に確認する必要があります」(渕ノ上さん)
2.電気設備・配管等のプランニング
より築年数が経っている物件で特に発生する問題です。共用部分の改修時に様々な制約が生じてしまいます。
「パイプスペースなどがきちんと取られておらず、更新時に露出させて配管を設置する必要があるケースや、共用排気ダクトの関係上、設置できる給湯設備が限られてしまっているケース、電気についてマンション全体の上限容量が決まってしまっているため、電気容量の制約が発生してしまうケースなどがあります。また、既存配線の関係上、オートロック化などが難しい場合もあるので、設備更新・新設へのハードルが全体的に高くなってしまいます」(渕ノ上さん)
3.デザイン関連
材質・デザイン的に「当時は流行ったけど……」というような造りで「時代遅れ感」が否めないものはやはりリスクです。
「建設当初より100年を超えても廃れないような『アンティークマンション』たりうるデザイン性を備えていれば、おしゃれな骨董品にも似た価値を重ねることが可能ですが、そうでないケースも多く見受けられます。
チェックするポイントは、エントランスが最大のカギでしょう。エントランスの扉がいかにも時代を感じさせるものや、壁面の材質や造り、オブジェなど、今の流行にマッチしないようなものは、マイナスポイントになりえます。これらは管理組合で更新すれば良いのですが、皆様それぞれの趣味趣向が絡むケースもあり、合意形成が難しいケースもあります」(渕ノ上さん)
4.共用部分(専用使用権含む)関連
共用部分の制約は、リフォームでフォローできない箇所があるのでしっかりチェックしておく必要があります。
「共用部分のなかでも部屋内に限って説明すると、天井の高さや、梁が邪魔にならないか、窓の大きさが問題ないか、また、二重サッシでも回避しきれないような窓サッシまわりの不具合が無いかといった問題は特に注意が必要です。リフォームでフォローできない場合もあるので、買ってから後悔しないように十分に確認しておきましょう。具体的には下のような問題が発生します」(渕ノ上さん)
・梁が邪魔になってしまうケース
梁が邪魔で部屋を思うように配置ができない、配管・配線が、理想のルートで施工できず、設備設置の自由度が制限される。
・窓の大きさ
窓や扉等の開口部が小さく、部屋に圧迫感がある。
・窓サッシ周りの不具合
サッシが歪んでしまっていることによる隙間風の発生や雨水の流入。二重サッシにしたとしても、根本的な解決にならないケースがある。大規模修繕工事として対応する資金がない管理組合もあるので、個人が費用を捻出して修繕することになりかねない。
もし、買った物件がひっそり”賞味期限切れ”を起こしていたら……あとから後悔してもしきれません。今回紹介したチェックリストをもとに、本当にいい物件かしっかり確認してくださいね。