ファッション
2015/7/21 7:23

国内腕時計3大メーカーのグローバル戦略は「世界最高のガラパゴス」だ!

 

CASIO・CITIZEN・SEIKOの腕時計大手3社は、スケールメリットを生かして世界中での店舗展開やプロモーションを推進中。世界でも類を見ないほどのグローバル展開を行っています。今回はこれらの取り組みについて、老舗時計誌「クロノス」主筆である広田雅将氏に解説をお願いしてみました。

 

CASIO
世界で展開する専売店が900店を超える!

海外進出の優等生がカシオ。ローカライズのうまい同社は、現地のニーズに適したモデルを数多くリリースし、結果、世界中で強固な基盤を持つようになりました。加えて近年では、G-SHOCKの人気も東南アジアを中心に上昇中。日本での地位はすでに盤石なものですが、海外での注目も年々増しています。

 

この成功のひとつが大規模なプロモーション。「ショック・ザ・ワールド」というファン作りイベントを各国で開催し、いまやG-SHOCKはアメリカだけでなく、中国やロシア、東南アジアといった新興国でも認知されるようになっています。そして、その動きに合わせるべく、カシオは世界中に「G-factory」という専売店を展開。その数は900店を超えており、積極的な姿勢がうかがえます。

↑シンガポールで開催された「ショック・ザ・ワールド」の様子

 

そんな同社が現在目指しているのは、メタルアナログウオッチの拡大。G-SHOCKだけでなく、「エディフィス」や「オシアナス」といったフルメタルアナログコレクションにも目を向けてもらうべく、様々な施策を打っています。

 

 

SEIKO
海外でも高価格商品が拡大

セイコーのラインナップは高価格帯にシフトしつつあります。そのなかで海外進出のカギを握るのは、ハイエンドモデルの「グランドセイコー」と「アストロン」。日本で絶好調のグランドセイコーは、アジア圏でも高級時計としての評価が高まっており、同社はグランドセイコーの品揃えを充実させたブティックを世界中に拡大させています。また、アストロンやプロスペックスといった高額品も併せて置くことで、これまでの“品質の良いセイコー”とは異なるパブリックイメージの形成に挑戦中です。

↑2014年、ニューヨーク・マディソン街にオープンしたブティック

 

一方で、そもそもセイコーの高級品はインバウンド消費がかなり大きく、来日した外国人観光客が買っていくことが頻繁にあります。そのため、一部のモデルは、以前よりも“メイドインジャパン”を強調。普及品だけでなく、高額品のジャンルにおいても、その品質を背景に販売数は増加中です。

 

まだモデル数は少ないですが、“セイコーは高級品も作っている”という認識は、海外でも徐々に広まりつつあり、高級ブランドとしての道を歩みはじめています。

 

CITIZEN
傘下ブランドとのシナジーが強力!

セイコー同様、シチズンも積極的に海外進出を図っているブランド。ですが、方向性はセイコーと少し違っています。というのも、シチズンは自社ブランドだけでなく、傘下のブランドもうまく使って、海外市場の開拓を行っているからです。

 

その中心となるのが、アメリカのブローバ、スイスのラ・ジュー・ペレと、そのハウスブランドであるアーノルド&サンやアンジェラス。アメリカでの知名度が高いブローバや、時計ファンに知られるラ・ジュー・ペレを持つのは、海外に出るうえでは大きなメリットになります。

 

加えてシチズンは、傘下ブランドと技術面でのシナジーも生みつつあります。一部のブローバ製時計が載せているのはシチズンの高精度なクオーツムーブメント。そしてシチズンの高級機械式時計「カンパノラ」には、ラ・ジュー・ペレ製の機械式ムーブメントが載るようになりました。

↑カンパノラのムーブ。同社のデザイン力とうまく融合しています

 

傘下のブランドとの技術交流を重ね、より高品質な製品を生み出し続けているのです。ここにもういくつかのブランドが加われば、この動きはいっそう加速していくに違いありません。