便利だが万能ではない――PLフィルター使用時の注意点
このように風景などを撮る際に非常に効力を発揮するPLフィルターですが、デメリットもあります。それは、一定方向の光以外をカットするため、光の総量が少なくなり、撮像素子に届く光が一般に2~3段程度暗くなってしまう点です。そのため、保護フィルターのように常用するには向かないフィルターといえます。
また、一定方向の光のみを透過させるため、角度の異なる光が複数存在する場合には、必ずしも効果が得られません。特に広角レンズで広い範囲を写すような場合には、PLの効果にムラが出てしまうことがあります。そのため撮影時には、効果を試してみて思いどおりの効果が得られない場合には、使用しないほうが良い結果が得られるといったケースもあります。
同じようで全然違う!! 失敗しないPLフィルターの選び方
一見、どれも同じように見えるPLフィルターですが、購入する際はいくつかの注意点があります。
①使用するレンズのフィルター径に合ったものを選ぶ
まず1つは、当然ながら使用するレンズのフィルター径に合ったものを選ぶこと。特にレンズの径よりも小さなものは、物理的に取り付けることができません。
ただ、フィルターとしては高価な部類に入るものなので、複数のレンズで共用したいというケースもあると思います。そうした場合は、いちばん径の大きなレンズに合ったものを選んでおけば、「ステップアップリング」というフィルター径を変換するリングを併用することで使用することが可能です。この場合も、広角レンズにステップアップリングを使用すると、画面の四隅がけられて暗く写る場合があるので、注意が必要です。
②「サーキュラーPL」を選ぶべし
次の注意点としては、必ず「サーキュラーPL」と呼ばれるタイプのものを用意すること。PLフィルターには、通常のPLフィルターとサーキュラーPL(円偏光)フィルターの2種類があり、通常のPLフィルターを使用すると構造上AFなどが正確に機能しない場合があります。そのため、購入の際はサーキュラーPLと記されているか確認するようにしましょう。
③広角レンズで使うなら「薄枠タイプ」がベター
こちらは必須ではありませんが、特に広角レンズで使用するフィルターは、できるだけ「薄枠タイプ」と呼ばれるものを使用すること。これは、前に記したステップアップリング使用時と同様の理由で、フィルター枠の太いものを使用すると画面の四隅がけられてしまう(暗く写る)場合があるためです。ちなみに、この薄枠タイプのフィルターは、多少強度の面で弱い製品もありますが、標準や望遠レンズに使用しても問題はありません。
④防汚コート・撥水コート仕様ならお手入れ簡単!
最後も必須とはいえないものの、フィルター表面が防汚コートや撥水コートされたものを選ぶことです。特にPLフィルターはフィルターの枠を手で回転させて使用するため、フィルター表面をうっかり指で触ってしまうことも少なくありません。また風景撮影では、土ぼこりが舞っていたり、雨に降られたりするケースもあります。
そうしたとき、防汚コートや撥水コートがされていると、レンズクリーニングクロスなどでフィルター表面を軽く拭うだけで撮影を続行することができ、フィルターも傷みにくいため長い間使用することができます。
以上のような注意点を高いレベルで実現している製品は多くはなく、マルミ光機の「EXUS サーキュラーP.L」など、フィルターメーカー各社の看板商品になっています。決して安価ではありませんが、寿命も長い製品なので購入して損することはないでしょう。何より、撮影中の安心感が抜群に高いのが魅力です。
PLフィルターを使ってワンランク上の写真を撮ろう!
フィルターの構造などを考えてしまうと、少しとっつきにくい印象もあるPLフィルターですが、その使い方は簡単で、フィルター枠を回転させるだけで景色が劇的に変化していく様子はちょっと感動的ですらあります。
特に春から秋にかけては、風景が刻一刻と変化して写真を撮るのが楽しい季節。そうした風景をより鮮やかに印象的な写真に残すには、PLフィルターは必須アイテムです。ぜひ、今年はPLフィルターを使用して、ワンランク上の写真を狙ってみましょう。