富士フイルムは、そもそもフィルムや銀塩カメラを数多く発売していたメーカーであり、デジタル時代のいまでも画質や操作性へのこだわりを強く感じさせます。ここでは、同社のミラーレスカメラ中級機「X−E3」の実力を、画質・休日力・旅行力の3分野で判定。あわせて、おすすめの交換レンズや入門機についても解説します。
高機動な小型ボディと直感的ダイヤル操作を両立
富士フイルムのミラーレス一眼は、絞りリングやシャッター速度ダイヤルを備え、フィルムカメラのようなアナログ操作ができることが特徴。最初は戸惑うこともありますが、慣れればスムーズにカメラをコントロールできます。
なかでも昨秋発売の「X−E3」は、メカダイヤルによるアナログ操作と小型軽量ボディを両立。機能面では、位相差AFや高速連写モードに新対応したほか、タッチパネルやジョイスティックによる直感操作が可能になりました。趣味として写真撮影を楽しみたい人に最適なモデルに仕上がっています。
また今年2月には、ビギナー向けに一般的な操作性を採用したエントリー機「X−A5」を発売。こちらは180度回転するチルト背面モニターや美肌モードを備え、自分撮りなどが気軽に行えます。
【今回テストしたモデルはコレ!】
325点のAFで14コマ/秒の高速連写に対応
富士フイルム
X-E3
実売価格12万4790円(レンズキット)
【2430万画素】【秒約14コマ連写】【常用最高ISO12800】【約337g】
上位機「X-T2」などと同等のセンサー&エンジンを搭載しつつ、レンジファインダーカメラ風の薄型軽量デザインを採用。前モデル「X-E2」と比べた場合、連写やAFが大きく進化し、電子シャッターによる14コマ/秒の連写と、325点の位相差AFに対応しました。内蔵ストロボや液晶の可動機構は非搭載となります。
SPEC●撮像素子:有効2430万画素APS-C型CMOSセンサー ●レンズマウント:Xマウント ●液晶:3.0型、236万ドット ●メモリ:SDXCほか ●サイズ:W121.3×H73.9×D42.7mm
【特徴01】
スティックやスワイプで直感操作ができる
AF測距点の選択は、背面スティックまたはタッチパネルで直感的に行えます。さらに液晶上のスワイプ操作に、様々な機能を割り当て可能です。
【特徴02】
フルオートに設定できる専用レバーを搭載
電源レバーの後ろに「オートモード切換レバー」を装備。細かく機能を設定したあとでも、即座にフルオート撮影に移行できるのが便利です。
画質・休日力・旅行力の3分野で実力を判定!
<評価内容>
●画質
色味:オート撮影時の色味を判定。偏りや、実際と記憶のどちらに近い色味かをチェックしました。
高感度:各機種の最高感度まで、同一条件でテスト。ノイズと解像度のバランスを確認しました。
※テスト条件:色味は、屋外にて感度を最低感度に設定し、そのほかの機能を揃えて撮影。高感度は、屋内にて条件を揃えて撮影。掲載カット以外にも、全感度で撮影して評価しました
●休日力
AF:AFの範囲や速度、精度。子どもやペットなど動き回る被写体を追えるか注目しました。
フィルター機能:画像をデジタル加工して個性的な描写にするフィルター機能。数と効果をチェック。
スマホ連携:撮影中のリモコン機能や、撮影後の転送機能などの使い勝手を判定。対応機能もまとめました。
●旅行力
軽さ:撮影時、携帯時ともに重要なフルセットでの質量を実測。軽いほど持ち歩きはラクです。
バッテリー性能:ミラーレス一眼の泣き所のバッテリー持ちを比較。USB充電への対応も確認しました。
モニターの見やすさ:屋外で撮ることの多い旅先。晴天下での背面モニターの見やすさをチェックしました。
【画質】10/10
色味:☆×5
晴天らしさが伝わる鮮やかな色
クリアな青空と鮮やかな緑が表現され、晴天らしさが伝わる気持ちの良い発色となりました。忠実とはいえないが記憶色に近い仕上がりです。
高感度:☆×5
クラストップの高感度性能
独自のセンサーとエンジンによって、高感度ノイズを目立たないように低減。APS-Cセンサーではトップ級の高感度性能といってよいでしょう。ISO12800でも汚い印象はなく、実用的な画質です。
休日力:11/15
AF(測距点の数&範囲):☆×5
豊富な測距点と便利なジョイスティック
像面位相差AFに対応。測距点は325点と豊富で、ジョイスティック操作で素早く選べるのが便利。快適に合焦する性能を実感しました。
フィルター機能:☆×3
フィルターの種類はやや少なめ
ミニチュアやポップカラー、パートカラー、ハイキーなど8種類のフィルターを用意。連写や動画撮影との併用ができないのは残念です。
スマホ連携:☆×3
【Bluetooth:○、NFC:×、QRコード:○、自動転送:○】
多機能だが使い勝手には課題も
Bluetooth接続に対応し、画像の自動転送ができます。リモート撮影の際、カメラ側にライブビューが表示されない点はやや使いにくいと感じました。
旅行力:10/15
軽さ:☆×3
キットレンズはやや重い大口径タイプ
撮影時の質量は669g。ボディはミラーレス一眼として比較的軽量ですが、キットレンズが大口径タイプであるため、総質量はやや重め。
バッテリー性能:☆×4
持久力は普通だが、USB充電が便利
CIPA準拠の撮影可能枚数は約350枚で、ミラーレス一眼としては標準的なバッテリー性能。USB充電に対応している点は何かと心強いです。
モニターの見やすさ:☆×3
晴天の屋外では見えにくくなる
初期設定の状態ではやや暗く、晴天屋外では見えにくいです。明るさは±5段階に調整できるので、見えにくい場合は+側に設定したいですね。
X-E3の総合評価は?
同社独自のセンサー&映像エンジンが生み出す豊かな発色と、フィルムを換える感覚で絵作りを楽しめるフィルムシミュレーションを小型軽量ボディで味わえる点が魅力。やや重くなるものの、明るく切れ味の鋭い標準ズームが付属することも描写にこだわるユーザーには◎。
チルト液晶を求めるならコッチがおすすめ! 雑貨的なデザインと一般的な操作系を併せ持つ入門機
富士フイルム
X-A5
実売価格6万8460円(レンズキット)
【2424万画素】【秒約6コマ連写】【常用最高ISO12800】【約361g】
2016年に発売されたエントリー向けモデル「X-A3」の後継機。自分撮り対応のチルト背面モニターを受け継ぎながら、新たに像面位相差AFや4K動画、かすみ除去フィルター、Bluetooth機能などに対応。キットレンズが沈胴式の薄型タイプに変更されたことも見逃せません。
SPEC●撮像素子:有効2424万画素APS-C型CMOSセンサー ●レンズマウント:Xマウント ●液晶:3.0型、104万ドット ●メモリ:SDXCほか ●サイズ:W116.9×H67.7×D40.4mm
【特徴01】
人肌を滑らかに補正できる美肌モード
自分撮りの際は、瞳AFで目にピントを合わせられるほか、自動美肌モードによって人肌を明るく滑らかに再現できます。その効果は3段階から選択可能です。
【特徴02】
超高速シャッターや無音撮影ができる電子シャッター搭載
エントリー機ながら電子シャッター機能を搭載し、最高で1/32000秒の高速シャッターが使えます。また、電子シャッターによる無音での撮影にも対応。
【X-E3とココが違う!】
チルト式液晶やストロボ搭載でビギナーにうれしい
両機とも薄型ボディですが、チルト可動式の背面モニターや内蔵ストロボを備えることはX-A5の大きなメリット。ただし、外装の高級感や画質ではX-E3に及びません。
描写に優れた単焦点や防塵防滴レンズなど多彩
富士フイルムのAPS-Cミラーレス一眼は、Xマウントレンズに対応。超広角から超望遠まで20本以上のレンズラインナップが用意されている。特に、描写性能に優れた単焦点レンズが充実しています。製品名に「WR」があるものは防塵防滴に、「OIS」があるものは手ブレ補正に対応。
ワイドもテレも1本で撮りたいならコレ!
富士フイルム
XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR
実売価格8万5870円
【焦点距離:27〜206mm相当】【フィルター径:67mm】【全長97.8mm】【約490g】
27〜206mm相当の焦点距離を持つ高倍率ズーム。世界最高をうたう効果5段分の手ブレ補正を内蔵し、薄暗いシーンでも手持ちでの撮影ができます。防塵防滴ながら軽量なことも魅力。
大きなボケが欲しいならコレ!
富士フイルム
XF50mmF2 R WR
実売価格4万7590円
【焦点距離76mm相当】【フィルター径46mm】【全長59.4mm】【約200g】
200gの軽量を誇る中望遠の単焦点レンズ。ポートレートのほか、部分を切り取る感覚のスナップ用にも最適です。ほぼ無音で高速作動するAFや、適度なトルク感のあるMF操作も使いやすいです。
文・作例撮影/永山昌克