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2016/7/8 10:49

アナログレコードを多彩に楽しむならコレ! ハイレゾ出力やUSB録音もできるレコードプレーヤー ティアック「TN-570」

いま、アナログレコードの人気が再燃しています。もともとCDに置き換わった後も、熱心なファンに支えられてきたアナログレコードですが、最近になって現代の人気アーティストたちもCDだけでなくアナログレコードで新譜を発売することが増えています。しかもこれは日本だけでなく、アメリカやヨーロッパなどでも同様の盛り上がりを見せています。例えば、映画「スターウォーズ」の最新作であるエピソード8も、そのサウンドトラックがCDやデジタル配信のほか、アナログ盤でリリースされました。

 

そのため、国内のオーディオメーカーも、続々とアナログターンテーブルの新モデルを発売し、市場は活況を呈しています。国内オーディオメーカーの老舗であるティアックでは、これまでも比較的手ごろなアナログターンテーブルや、アナログターンテーブル、CD、スピーカーなどを一体化したステレオシステムを発売していましたが、今春、そこに本格的なモデルを投入しました。それが「TN-570」です。

↑TN-570
↑TN-570

 

まずはTN-570の概要から紹介しましょう。実売価格は13万円前後。売れ筋である10万円未満のモデルと比べると、1クラス上のモデルです。オーソドックスなベルトドライブ方式を採用し、一般的なオーディオ機器と手軽に組み合わせやすいフォノイコライザーアンプを内蔵。しかも、最大192kHz/24bit出力が可能なハイレゾ対応の光デジタル音声出力端子や、PCと手軽に接続できるUSB出力(最大48kHz/16bit)も備えます。ハイレゾ対応のデジタル出力やUSB出力を備えるなど、多彩なスタイルでアナログレコードの再生が楽しめるモデルです。

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↑背面に備える端子の一部。ハイレゾ出力可能な光デジタル端子や、USB端子を装備する

 

TN-570の特徴はそれだけではありません。人造大理石と高密度MDFを組み合わせた2層構造のシャーシ、厚さ16mmの極厚のアクリル製ターンテーブルプラッターの採用など、アナログレコード再生にとって有害な共振の発生や振動の影響を排除するための最適なマテリアルを吟味して使用しています。しかも、ベルトドライブ方式の駆動系には、ティアック初の回転数自動調整機構「PRS3(Platter Rotation Sensing Servo System)」を採用。プラッターの回転数を光学センサーが検出し、モーターの回転を補正することで、ハイエンド級モデルに匹敵する回転精度を実現しています。

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↑人造大理石と高密度MDFの2層構造のシャーシや、極厚のアクリル製ターンテーブルプラッターを採用

 

ベルトドライブ方式にこのような回転数自動調整を加えたモデルは、一部の超ハイエンドなモデルくらいしかほかに例がなく、一般的なベルトドライブ方式のターンテーブルに比べて、フラッター0.1%以下、回転検出精度+/-0.05% という高い性能を獲得しています。手の届く価格のモデルでありながら、その実力はそれ以上の高額なモデルに匹敵する本格的なアナログターンテーブルなのです。

 

アナログレコードらしいリアルな音

TN-570をお借りして自宅の視聴室で聴いてみました。まずはオーソドックスに内蔵のフォノイコライザーアンプの出力をアンプにつなぎ、自前のスピーカー(B&W マトリックス801 S3)で鳴らしてみます。

ちなみに、TN-570はアナログ音声信号を、本体内蔵のフォノイコライザーを経由して出力させたり、経由せずに出力させたりと、切り替えが可能。本体内蔵のフォノイコライザーを経由させずに手持ちのフォノイコライザーアンプを使った再生も楽しめます。

 

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設置の調整やトーンアームのゼロバランス調整、針圧調整などをきちんと済ませて、レコードを再生します。マイルス・デイヴィスの「カインド・オブ・ブルー」(再プレス盤を新品で入手)を聴くと、エネルギーたっぷりの勢いのよい音に驚かされます。トランペットやサックスの表情豊かな音は存在感たっぷりで、デジタル音源での再生とはひと味違う実体感のある音が楽しめます。TN-570の音は中低音域の力強さがしっかりと出てくること。ウッドベースのきざむリズムもしっかりとしていて、等身大のベースがそこにあるような生き生きとした鮮明な音で再現されます。

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↑マイルス・デイヴィス「カインド・オブ・ブルー」

キレ味鋭く、ダイレクトな存在感のある音なのに、デジタルにありがちな音のキツさやトゲトゲしさがなく、さらに音量を上げて聴きたくなります。アナログレコードらしいリアルな感触の音がしっかりと出ていました。また、TN-570はカートリッジの交換も可能なので、カートリッジをグレードアップしてより好みの音に仕上げていく楽しさもあります。

 

ハイレゾサウンドも多彩に楽しめる

今度は、同じくティアックのDSD11.2MHz、PCM 384kHz/32bit対応のUSB DAC内蔵ヘッドホンアンプ「UD-503」と光デジタル出力(192kHz/24bit)で接続、ヘッドホンにはベイヤーダイナミックのハイエンドヘッドホン「T 1(2nd generation)」を組み合わせて、「カインド・オブ・ブルー」を聴いてみました。

↑TN-570(左)とUD-503(右)。ヘッドホンはT-1(2nd generation)
↑TN-570(左)とUD-503(右)。ヘッドホンはT-1(2nd generation)

ヘッドホンでの再生ということもあり、先ほどのスピーカー再生に比べて細かな音の情報量がいちだんと増え、楽器の音のディテールやニュアンスの変化まできめ細かく再現されます。例えばマイルスのトランペットの音が出る前の「ため」の聴いた感じ。遮音性の高いヘッドフォンでは周囲のノイズの影響も減るので無音部分の緊張感が増します。しかも「ため」の後の出音の勢いが鮮烈でトランペットの音色にほれぼれとさせられます。スピーカーから大音量で音を浴びるように聴くのも楽しいですが、ヘッドホンできめ細かなニュアンスをじっくりと聴くのもまた違った楽しさがあります。

 

ハイレゾ音源に比べると解像感や情報量では差を感じるアナログレコードですが、ヘッドホンでは情報量の不足を感じることもないので、デジタル音源を聴き慣れた人にはこちらの方が耳に馴染みやすいとも感じました。周囲を気にせず大音量で楽しめるのもヘッドホンの魅力です。

 

解像感の高い音と感じた理由には、光デジタル出力の影響もありそうです。アナログ的な厚みのある音は、より細かな筆で細密に描いた印象になります。とはいえ、表情の豊かさや勢いの良さなどのアナログの良さもしっかりと出ています。アナログとデジタルの良い所を併せ持ったような再現もなかなか魅力的。こうした音の違いを試せるのも大きな特徴でしょう。

 

また、UD-503には、最大8fsのアップサンプリングと2種類のデジタルフィルターの切り替え、DSD変換まで行えます。いろいろと試したところ、個人的にはDSD変換した音がアナログの感触がしっかりと残りながら音場の広がりが豊かに出て、もっとも好ましい音だと感じました。さらに、ヘッドホンのケーブル交換でバランス接続にすると、音の鮮度が際立ち、より生々しい音になります。TN-570の基本性能が優れているため、UD-503と高性能なヘッドホンの組み合わせで、こんなにも多彩な音の変化が楽しめます。

 

ポータブルヘッドホンアンプと組み合わせてコンパクトなシステムも

今度は、ティアックのDSD 5.6MHz、PCM 192kHz/24bit対応のポータブルヘッドホンアンプ「HA-P5」を組み合わせて聴いてみました。置き場所を問わないコンパクトなサイズなので、ポータブルだけでなくデスクトップオーディオにも最適です。

↑TN-570とHA-P5の組み合わせはデスクトップに最適
↑TN-570とHA-P5の組み合わせはデスクトップに最適

 

ユニークなのはオプションとして専用ボード(TA-KM50)が用意されていること。無垢のウォルナットを削りだした質の高い出来で、HA-P5と一緒にヘッドホンやスマホなども置けるようになっています。乱雑になりがちなデスクトップも、きちんと定位置を作ってあげることでスッキリと見せることが可能。HA-P5と一緒に導入するといいでしょう。

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↑HA-P5と別売の専用ボードTA-KM50。右側のくぼみにHA-P5がぴったり置けるデザインになっている

 

音の点で感心したのは、ハイインピーダンスで馬力のあるアンプでないと鳴りにくいと言われるベイヤーダイナミックのT1をしっかりと鳴らし切ったこと。ビル・エヴァンスの詩情たっぷりのピアノが実にメロディアスで、名盤として愛されてきた理由がよくわかります。コンパクトなサイズなのになかなかの実力です。接続は光デジタル入力(アナログ音声入力と兼用のステッレオミニタイプ)も備えるので、TN-570のハイレゾのデジタル音声出力を接続できます。その状態で聴いた音は、ニュートラルな音色でTN-570の音をストレートに再現したUD-503とはひと味違って、中域の厚みがたっぷりなパワフルな音。ウッドベースの躍動感のある鳴りっぷりがしっかりと出て、テンションの高い演奏をさらに盛り上げます。アナログレコードの密度の高い音との相性も良く、出音の鮮烈さ、ニュアンスの豊かさをしっかりと味わえます。

 

HA-P5は手軽に使えるポータブルタイプなので、屋外で高音質が楽しめる点も魅力。TN-570からUSB出力した音源をPCで録音し、ポータブルオーディオやスマートフォンに保存。HA-P5と接続すれば、どこでもレコードの音を高音質で楽しむことができます。

 

組み合わせて音の楽しみ方が広がる

こうしていろいろなスタイルでアナログレコードを聴いてみましたが、それぞれに違った魅力があり、実に楽しい試聴ができました。ここ最近のアナログレコード人気の再燃で、アナログプレーヤーのニューモデルを聴く機会が増えているのですが、ほかのモデルと比べてTN-570の良さは低音の芯の通った力強さだと思います。弛んでふくらんだ音ではなく、鍛え抜かれた筋肉のような引き締まった力強さ。アナログレコードの音は、柔らかいとか、耳に馴染むという表現をされることが多いですが、私はそうは思いません。力強く、鋭い音が鮮やかに出る。TN-570はそんな音までしっかりと出すので、ジャズのテンションの高さまでしっかりと表現できるのです。

 

こういったアナログレコード本来の音の再現は価格が何倍もする高額なモデルで求められるレベルのもので、10万円ほどの価格のモデルでこういう音が出るものはほかにありません。さらに、TN-570の多彩な音声出力は手持ちのオーディオ機器が幅広く使えるメリットもありますし、光デジタル出力をPCMレコーダーなどで録音すればハイレゾ品質でのデジタル録音が可能です。組み合わせによってさまざまな機器での音の違いを楽しめるなど、オーディオ好きにはたまらない魅力が詰まっています。

 

そして、人造大理石の美しい模様や、アクリル製プラッターの周囲に巻かれたベルトが露出している大胆なデザインなど、美しい仕上がりは見ているだけでも楽しくなります。音質の点でもなかなかの実力ですが、見た目の美しさは大きなポイントです。レコードが回っているのを見ているだけでも楽しいアナログレコード再生ですから、アナログターンテーブルもデザインの優れたものだと、その楽しみはさらに豊かになります。

 

付属しているターンテーブルシートには帯電しにくく、デザイン性も良い和紙を使用。しかも「雲流紙」を使用するなど細部へのこだわり、細やかな工夫も随所に見られます。

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1クラス上のモデルではありますが、アナログレコードの魅力を存分に味わえるその実力と出来の良さは、価格以上の価値があると感じます。アナログをアナログとして聴くだけでなく、ハイレゾ出力して音の違いを楽しんだり、デジタル録音をしてポータブル環境で楽しんだりと、デジタルが活況ないまの時代だからこそのアナログをデジタルで楽しむ歓びを、ぜひTN-570で満喫してみてください。

 

【URL】
ティアック https://www.teac.co.jp/jp/

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