本・書籍
2018/3/12 13:30

警察官に対するイメージが変わる!? 大分合同新聞発・ほのぼの事件簿4選

子どもの頃、「密着警察24時」といった警察官のドキュメンタリー番組をよく見ていた。怖いと思いつつ、なぜか目が離せなかった。逆に今は、犯人の傍若無人さに腹が立って、見ていられないのだが。

 

また、ドラマに登場する警察組織は何かしら黒い闇を持っていて、不祥事を隠蔽しようとするストーリーが多い。今クールの「BG~身辺警護人~」もいよいよ今週が最終回。警察組織と戦う民間ボディガードの結末が気になるところだが、やはり「警察=黒い組織」という描かれ方をしている。

 

そんなメディアの影響もあって、警察関係者の方には大変申し訳ないが、警察官は怖い、必ずしも正義ではない、できればお近づきになりたくない、そんなネガティブな印象が大人になった今もなお拭い去れないでいる。

 

 

大分合同新聞社の「ミニ事件簿」が面白い!

そんなお硬いイメージの警察官だが、意外な一面を垣間見ることができるコラムがある。大分合同新聞の夕刊に連載されている人気コーナー「ミニ事件簿」がそれだ。

 

「ミニ事件簿」は、1978年11月1日にスタートして今年で40周年を迎える名物コラム。小さな事件や事故をまとめて掲載するコーナーとして始まった。記者が書いた原稿に、クリエイト室と呼ばれる部署で描かれたイラストを添えて、1日1本を夕刊に掲載しているという。

 

関西在住の私はもちろん紙面を見ることはできないが、「大分合同新聞のコラムがあまりにもほのぼのすぎる!」とネットで話題になっていたことを知った直後、こんな本を発見したのだ。『警察官ベスト』(大分合同新聞・著/刊)、これまでに掲載された「ミニ事件簿」の中から厳選した50本がまとめられている。

 

 

「ミニ事件簿」は新人記者の登竜門

なんでも、「ミニ事件簿」を担当しているのは、主に警察・消防などを取材する報道部の記者2~3名なのだそう。彼らのほとんどが若手で、俗に「サツまわり」と呼ばれており、コーナー担当が新人記者の登竜門でもあるという。記事化されない小さな事件や事故を掲載することで、記事作成の訓練にもなるという考えもあるのだそうだ。

 

内容はというと、実にほのぼのとした、ゆるーい出来事が多い。また歴代の掲載記事を見てみると、UFOの目撃談から公衆電話にまつわるネタ、酔っぱらいネタなど、時代背景を映し出している点も、非常に興味深い。

 

実際に『警察官ベスト』を読んでいると、なんだか昔懐かしさを感じるな…と思う記事もあり、発行年月日を確認すると20年以上前の記事だったりする。古き良き昭和の空気感が味わえて、思わず笑みがこぼれる。

 

それでは、『警察官ベスト』に集録されているおもしろエピソードをいくつか抜粋してご紹介しよう。

免許証は「なかです」

ひとつめは、九州ならではのこんなエピソード。方言って面白い。

 

佐賀市内の国道で事故が起こったときのこと。道路に飛び出した犬を避けようとして、男性が運転していた車がガードパイプにぶつかった。駆けつけた署員が男性に免許の提示を求めたところ、「なかです」との返答。「車のなかですね」と確認すると「いや、なかです」。署員「なかにあるのなら、見せてください」、男性「だから、なかですたい」の押し問答。よくよく話を聞くと、男性は「無かです」と言っていたことが判明。結局、この男性は無免許だったとのこと…「日本語って、なかなか難しい」と署員。

(1994年4月6日掲載記事より抜粋)

 

 

「事件呼ぶカレー」最後までタタる

続いては、世にも奇妙なジンクスネタ。この巡査部長の退職後の様子が気になる。

 

定年退職する大分東署の巡査部長(60)の大好物はカレー。だが、当直でカレーを注文すると、決まって事件や事故が起こることで有名だったため、周囲からは「カレーを注文しないで」と言われており、ここ1年ほどはカレーを控えていた。先日、最後の当直勤務で「今日だけは好きなカレーを食べてもいいかな」とリクエストし、当直全員でカレーを注文することになった。すると、注文とほぼ同時に交通事故が2件立て続けに発生し、署員は対応に追われることに…。ようやく食事をする頃には、カレーはすっかり冷たくなっていた。「ジンクスは生きていた」と署員。

(2009年2月26日掲載記事より抜粋)

 

 

なが~~~~~い落とし物

できれば見て見ぬふりをして帰りたかった!? こんな珍事件も。

 

別府署員が勤務を終えて、署から帰宅しようとしていたときのこと。署の前の国道10号の横断歩道で、荷造り用のビニールひもが道路に沿って延びているのを見つけた。どうやら、国道を走っていた車から落ちたらしい。そのままでは事故の恐れがあるため、回収しようと引っ張ってみたが、なかなか反対側の端が見えてこない。連絡を受けた別の署員がパトカーでひもの先を確認に向かうと、なんと別府タワー近くの北浜まで約1.5kmも延びていた。30分以上かけてひもをすべて手繰り寄せた署員は「こんな長い落とし物は初めてだよ」とぐったり。

(2012年12月25日掲載記事より抜粋)

 

 

犯人は強風、荷室に閉じ込められる

最後は、今年掲載されたばかりの記事を大分合同新聞の「ミニ事件簿ワンダーランド」より。

 

先日、大分自動車道上り線のあるサービスエリアにいた男性から「自分のトラックの荷室に閉じ込められた」とネクスコ西日本に連絡があった。監禁事件化か!と県警高速道路警察隊員が現場に急行。無人の大型トラックの荷室をノックすると、中から「ドンドン」と反応があった。急いで扉を開けて、男性を救出。男性にケガはなかった。なんでも、一人で荷室の掃除をしていたところ、強風にあおられて扉が閉まってしまい、閉じ込められてしまったのだとか。ベテラン男性隊員は「事件ではなくてよかった」と胸をなで下ろした。

(2018年3月5日掲載記事より抜粋)

 

 

一服の清涼剤的存在に

毎日殺伐とした事件が起こる中で、このようなほのぼのしたエピソードは、読者にとって一服の清涼剤的存在になっているのだろう。そして、それは記者にとっても同じではないだろうか。

 

これまでの警察官のイメージが一変すること請け合い、慌ただしい毎日の中のスキマ時間にでも、『警察官ベスト』を読んでホッと一息入れてみてはいかがだろうか。

 

 

【著書紹介】

警察官ベスト

著者:大分合同新聞社
発行:大分合同新聞社

警察のイメージを変える問題作!? 街の平和を日夜守るお巡りさんも人の子。奇妙な通報に振り回されたり、トホホな事件に遭遇したり。笑える苦労もいっぱいなんです。 ドキュメンタリーでは見られない彼らの珍事件を、ほんわかしたイラスト付きでお届けします。
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