本・書籍
2018/3/16 13:30

「ゆるキャン△」から考える最近の女子高生「おひとりさま」事情

おひとりさま海外旅行、おひとりさまビュッフェレストラン……、これは私の娘から聞いた女子高生おひとりさま事情だ。昔は女子高生といえば数人で連れ立って歩き、楽しげな笑い声が聞こえてきたものだけれど、最近は単独行動を取る女の子も増えているようだ。

 

女子高生がソロキャンプ

ゆるキャン△』(あfろ・著/芳文社・刊)というマンガが人気で、アニメも放映されている。そこにはソロキャンプをする女子高生・リンちゃんが出てくる。言葉数が少なく人付き合いが苦手な彼女は、シーズンオフ、秋から冬の寒い時期の空いているキャンプ場が好きで、たったひとりでテントを張り、薪をくべて暖を取る。親目線で言えば「危ないんじゃないの!?」と心配になってしまうけれど、彼女はまったりくつろぎ、冬キャンプを満喫している。

 

女性のソロキャンパーはまだそれほど数は多くはないが、確実に存在はしているらしい。リンちゃんが泊まるのはキャンプ場。料金を取って宿泊者を受け入れ、夜になると敷地には鍵もかかるというところで大抵テントを設営する。そこにはトイレもあれば、薪も売っている。原っぱや路上で無防備に眠るよりは、ずっと安心だ。

 

 

女ひとりの遍路旅

思い起こせば私も女子大生だった頃、女ひとりで四国八十八ヶ所遍路を決行したことがある。大学の卒論のためという大義名分を振りかざしてはいたが、実際のところは失恋をきっかけにして何もかも嫌になり旅に出たのだった。女のひとり遍路は珍しいらしく、行く先々で「水子供養かい」などと話しかけられたりして(違います)、どこに行っても話しかけられた。

 

女がひとりで旅に出るときは、静寂を求めているケースも多いのではないだろうか。景色をじっと眺めるときも、歩いているときも、そして布団の中でも、話す相手が横にいないのだから、ただ、黙っているしかない。私もひとり山寺への道を登りながら、ただただ黙って、あたりの草木がそよぐ音や、遠くで犬が吠える声、それから陽の光が木々の間から差し込む暖かさを感じ、それが何よりの癒しになったのを、よく覚えている。でもそんなおひとりさま状態は、旅のいっときだけのものだったはずだ。

群れない女子高生たち

私の女子高生の娘も、あまり群れない。時々ひとりで吉祥寺や池袋にふらっと行って何やら雑貨を買って帰ってくる。友達への誕生日プレゼントだというから友達はいる。というかバレンタインには友チョコを50個も持って行ったので大勢いるようだ。けれど、あまり群れない。映画もひとりで観に行ってしまう。

 

彼女が言うには、みんな塾や部活やバイトなどが忙しく、なかなか一緒に出かけるタイミングが合わないのでひとりで行くしかないのだそうだ。つまり、現代女子高生が多忙だという物理的な理由だ。そしてプレゼントはじっくり選びたいからむしろひとりで買いに行きたいというこだわりの一面がある。けれど私は一番大きな理由は多様性なのではないかと考えている。

 

 

多様性と行動範囲

昔は同じタレントを一緒に応援する仲間が身近にいたものだ。けれど、今は友達がさまざまなタレントを応援していて、ほとんどかぶらないのだという。ジャニーズ好きもいれば、エグザイル派もいるし、舞台俳優好きもいれば、地下アイドルにハマる人もいるし、海外ポップスを好む人がいれば韓流マニアもいる。皆の趣味が広がりすぎて、同じ系統に夢中になるということにはなりにくいらしい。

 

現代人の趣味は多様化している。旅の行き先も様々だし、洋服にもたくさんのバリエーションがある。本も音楽も映画もオンライン上に一生かかっても消化できないほどの膨大な量がある。同じものを友人が好むとは限らないという時代を女子高生たちは生きているのだ。ひとりでキャンプに行くリンちゃんも、ひとりでマイナーな映画を観に行くうちの娘も、根っこは同じなのかもしれない。それぞれがそれぞれの好きなことをして楽しむ、群れない女子高生は今後さらに増えていくのかもしれない。

 

【著書紹介】

 

ゆるキャン△ 1巻

著者:あfろ
発行:芳文社

富士山が見える湖畔でキャンプをする女の子、リン。自転車に乗り富士山を見にきた女の子、なでしこ。二人でカップラーメンを食べて見た景色は…。読めばキャンプに行きたくなる。行かなくても行った気分になる。そんな新感覚キャンプマンガの登場です!
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