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歴史
2018/3/21 13:30

「NINJA」こそが、インバウンド需要拡大のためのキラーコンテンツだ!

世界各国から多くの観光客が集まり、2か月間連続で毎日満席というお店が赤坂にある。席数が極端に少ない、隠れ家的なお寿司屋さん? それとも、カリスマシェフが経営するリストランテ? 違う。忍者屋敷をコンセプトにしたテーマレストラン「NINJA AKASAKA」だ。新宿にある同じ系列のお店も、かなりの時間的余裕を持って予約しなければならないらしい。

 

日本の特撮ヒーローものが大好きなアメリカ人の話

“ニンジャ”という日本語は、“シアツ”とか“アニメ”と同じく、日本語のまま通じる英語になっている。こうした傾向は、アメリカに限って言えば、1984年に出版されて後にアニメや映画にもなった『ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ』(TMNT)というアメリカン・コミックスがきっかけだったんじゃないかと思っていた。

 

なんていう話を日本の特撮ヒーローものが大好きなアメリカ人の友人――筆者と同じ1962年生まれ――としていたら、こう言われた。「TMNTのそもそものコンセプトは、アカカゲにあると思う」

 

彼は、『ウルトラ』シリーズから始まって、ちょっと渋めの『ミラーマン』とか『シルバー仮面』、さらには『スーパーロボット・マッハバロン』など実写ロボットもの、そして昭和『仮面ライダー』シリーズを全エピソード揃えているほどのマニアだ。

 

 

燃えよNINJA

日系人社会がしっかり根ざしているホノルルで生まれ育ったせいか、本当に詳しい。大学に入った頃に一番ハマったのは『変身忍者嵐』だったという。そしてこの頃、シンクロニシティーめいたことが起きた。

 

ショー・コスギ(不動産会社のCMでおなじみのケインのお父さん)が主演した『Enter the Ninja』(日本語タイトル『燃えよNINJA』)という1981年製作のアクション映画を見た彼は、嵐の件もあって、一気に持って行かれたようだ。この映画、筆者も見たことがある。ごく簡単に言えば、カオスなカルトムービーだ。

 

『Enter the Ninja』を見た彼は忍者に関する資料を徹底的に調べ、やがて行き当たったのが日系の貸しビデオ屋で見つけた『仮面の忍者赤影』だったということらしい。

 

ニンジャという言葉はとても響きがいいようで、アメリカではミキサーとかコーヒーメーカーのブランド名にもなっている。そう言えば、『サスケ』のアメリカ版タイトルも『American Ninja Warrior』だ。世代に関係なく、多くの人々がこのワードに惹きつけられる理由は何だろうか。

“忍びの者”を立体的にとらえる

そういう疑問に対する答えのヒントとなるかもしれない『忍者・忍術ビジュアル大百科』(山田雄司・監修/学研プラス・刊)という本を紹介したい。構成を見てみよう。

 

第1部:忍者の姿・道具

第2部:心・技・体

第3部:闇の激闘

第4部:忍者列伝

 

ビジュアルとうたっているだけにイラストや図表が豊富だ。第1部では装束とか武器が豊富に紹介されていて、図鑑のような楽しみ方ができる。手裏剣と言えば十文字のシンプルなタイプしか見たことがなかったので、こんなに種類があるとは驚いた。

 

第2部では、さまざまな忍びの術について触れられている。このパートは一見派手に感じられる忍術に対し、科学的なファクトに基づく冷静な解説が加えられていて、納得させられる。そうかと思うと“不動心”とか“非情の心”、また“人の心を理解する”など、忍者の心得についての文章がコラム的にちりばめられていて、精神面からの考察も面白い。

 

第3部では伊賀忍者VS甲賀忍者といった対決基軸、それに風魔党や三ツ者など初心者にはわかりにくいグループの特色と任務について触れられている。ここで示されている忍者屋敷の詳細なイラストに心惹かれる人は多いはずだ。

 

第4部は歴史に名を残す忍者たちの紳士録だ。源義経、伊勢三郎義盛、加藤段蔵、果心居士……。 石川五右衛門が大泥棒になる前は伊賀忍者だったこと、知ってましたか? 全部で17人紹介されているのだが、恥ずかしながらまったく知らない名前がいくつもあった。

 

 

待たれる英訳

全編にルビがふってあるので、分類は児童書ということになるだろう。でも、50半ばの筆者でも読み進むスピードは全然落ちなかった。そして、読み進めていて気づいたことがある。

 

欧米にニンジャファンが多い理由は『スターウォーズ』シリーズとか、HBOの『ゲーム・オブ・スローンズ』のような大河ドラマ的な話のキャラクターを忍者に重ね合わせるからじゃないだろうか。共通しているのは、大義とか忠義といった概念だ。

 

そして今、忍者という言葉はただキャッチーなだけではなくなった。実際、日本各地の忍術道場を訪れる外国人の数は年々増加している。響きのよさだけに飛びつくだけではなく、“不動心”とか“人の心を理解する”ことを自ら体験し、学び取ろうとする人たちの数は、筆者の想像よりもはるかに多いに違いない。だからこの本、英訳したらかなり売れるだろう。

 

忍者が引っ張っていく日本のポップカルチャーシーン。そんな妄想も楽しいと思いませんか?

 

【著書紹介】

忍者・忍術ビジュアル大百科

著者:山田雄司、入澤宣幸
発行:学研プラス

驚異的な身体能力と技、豊富な知識と経験、卓越したコミュニケーション能力を持つ超人的な存在、それが忍者だ! 様々な忍術や忍具を駆使して、彼らは歴史の影で活躍していた。迫力満点なイラストと豊富な写真資料で、いまだ謎に満ちた忍者の真の姿に迫る!

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