みなさんご存じ、カメムシ。あの、触ると異常に臭い匂いを放つ昆虫です。たまに洗濯物などに付いていて、うっかり触ってしまったこと、あるのではないでしょうか。
一般的には害虫と呼ばれているカメムシ。見つけたら速攻で駆除する人が大半だろうが、飼ってみたい、できれば繁殖させたいという奇特な方もいることでしょう。そんな方のために、繁殖の秘訣をお教えします。
カメムシの卵の殻は除去したらダメ!
『きらいになれない害虫図鑑』(有吉 立・著/幻冬舎・刊)は、殺虫剤で有名なアース製薬で害虫を飼育している女性の著書。殺虫剤(アース製薬では虫ケア用品と呼んでいる)の開発のために必要となる、さまざまな害虫の飼育担当をしているそうです。
ゴキブリをはじめ、カメムシはもちろん、なめくじ、クモ、ハエ、ノミ、ダニなどなど、100種類あまりの害虫を飼育。その生態を軽やかな文章で記している書籍です。
そこに、カメムシの繁殖のポイントが書かれています。害虫なんて適当に飼っていれば増えそうですが、飼育や繁殖は難しかったとのこと。特にマニュアルなどは存在しないため、手探りで最適な飼育・繁殖方法を探っていたそうです。
なんでやろ? おかしいなぁ、と苦労していた先輩、ある学会でカメムシを飼っている研究者から『卵の殻を取り除いてはダメですよ』と教えてもらったそうです。何か必須の矯正細菌がいるのか、羽化した幼虫は自分の出てきた卵の殻の表面にある物質を体内に取り込んでいる、とのこと。
(『きらいになれない害虫図鑑』より引用)
これを実践したところ、幼虫はすくすく育ち産卵までに至ったとのこと。虫それぞれに適した飼育法というのがあり、それを見つけるのはたいへんそうです。
セアカゴケグモの名前の由来
本書を読んでいて、ほほうと思ったのが、セアカゴケグモ。一時期話題になった毒を持つクモです。僕は、このセアカゴケグモは「背中に赤い苔が生えたようなクモ」だと思っていました。
しかし、実は違ったようです。
セアカゴケグモの名前の由来って、ご存じですか?
『背中の赤い後家さんのクモ』、自ら後家さんになっているんですけども……。(『きらいになれない害虫図鑑』より引用)
なんと、苔ではなく後家だったんですね。セアカゴケグモは、交尾が終わるとメスがオスを殺してしまうんです。食べてしまうことがほとんどですが、なかには殺すだけで食べないこともあるよう。単に交尾後の栄養補給というのではなさそうなのが、なかなかミステリアスですし猟奇的です。
虫ケア用品開発に欠かせないお仕事
本書によれば、害虫を飼育する仕事というのは根気と責任感が必要とのこと。なかなか珍しい職業の内容も知ることができ、おもしろく読めました。虫ケア用品開発のためには欠かせないお仕事です。これから虫ケア用品を使うときは、「これを開発するために犠牲になった害虫と、それを飼育する人がいるんだ」ということを心に思い浮かべ、感謝しようと思います。
【書籍紹介】
きらいになれない害虫図鑑
著者:有吉 立
発行:幻冬舎
約100種類の害虫の“飼育員”による、害虫たちのことがよくわかって、好きになる!? 笑えて深い、いい話。兵庫県赤穂市にあるアース製薬の研究所では約100種の害虫を飼っている。その虫たちの世話をし、繁殖させている“飼育員”有吉立さん。実はゴキブリに限らず虫が苦手だったという彼女だが、飼育するために観察して生態を知るうちに恐怖心や偏見はなくなった。ゴキブリは人間を襲ってこないし、ハエも蚊も病原菌を持たなければ、恐れなくても大丈夫。飼って分かった害虫たちの意外な素顔を面白カワイイイラストとともに紹介。